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妹…4 (短編ハードボイルド)


佐久間亮介は、薬(覚醒剤)が切れて苦しむ妹の由美を助手席に乗せて、須藤に言われた医者へと車を走らせていた。

『ねぇ、吉田さんは?吉田さんどこにいるの?薬が欲しいの!ねぇ、吉田さんは?』

神栄商事の社長を名乗る吉田和也に拉致され、覚醒剤を毎日のように射たれ、幻覚と快楽に溺れる錠剤を飲まされ吉田のおもちゃにされていた由美。

薬で変わり果てた由美の口から吉田の名前が出てくることに、亮介は苛立っていた。

しかし、由美に対して何ができるわけでもなく、ただ妹の由美を苦しめておもちゃにした吉田への増悪だけが亮介の頭の中を駆け巡っていた。

由美が暴れては車を止め、少し落ち着いたら車を走らせる、という繰り返しで40分ほど走って須藤に言われた○○市に入った所で、亮介はスナック「鈴の音」の琴音に電話をかけた。

ワンコールで電話に出た琴音。

『亮介君、電話待ってたよ~。⭕⭕市内に入ったの?』

『はい』

亮介が電話をしている時も、由美は吉田の名前を連呼して薬を欲しがっていた。

苦しむ由美の声は琴音にも聞こえていた。

『亮介君、由美ちゃんきっと治るから。今から須藤さんが教えてくれた病院の住所言うからメモして』

『わかりました。ちょっと待ってください』

亮介は神崎の携帯を取り出した。

『住所お願いします』

『分かった。⭕⭕市⭕⭕町……』

『分かりました。ありがとうございます』

『それから…須藤さんが、もう無茶なことするなって』

『…もう…無理かもしれません…由美を…妹をこんなにしやがった吉田を許すことはできないです。住所ありがとうございました。病院に向かいます』

亮介はそう言って電話を切った。

神崎の車にはナビが付いていたので、亮介は琴音から聞いた住所をナビに入力した。

『ここから10分くらいか…』

亮介は、そう呟いて車を走らせた。

ナビ通り、10分で須藤が教えてくれた病院に着いた。

そこは小さな町医者の佇まいで遠藤医院と看板が出ていた。

車を入り口の横に止めて、亮介は神崎の札束が入ったバッグを手に取り、由美を車から降ろして小さな町医者の入り口のインターホンのボタンを押そうとした時、入り口の明かりが着いてドアが開いた。

中から年輩の男が出てきた。

『佐久間亮介さんかな?』

年輩の男は眼鏡を下にずらし、上目使いで亮介を見た。

『はい、須藤さんからこちらに行くように言われた佐久間です』

『私は遠藤、ここの医師だ。さっ、早く入りなさい』

『はい』

いわゆる闇医者だと思っていた亮介は、人の良さそうな遠藤医師に正直ホッとしていた。

『さぁ、こっちの診察室へ入って少し待ってて』

遠藤は亮介と由美を診察室で待つように言って、携帯を取り出した。

診察室に入り、亮介は苦しむ由美を抱き寄せていた。

遠藤は須藤に電話をかけた。

『もしもし、須藤さん?』

「遠藤さん、佐久間亮介はそっちに着きました?」

『えぇ、今来たところです。これから診察を始めるから、また後で電話しますよ』

「遠藤さん、いつも無理言って申し訳ない」

『なぁに、気にすることないよ。じゃ、後で…』

「すんません、お願いします」

須藤の言葉の後に遠藤は電話を切った。

遠藤は診察室に入り由美の診察を始めた。

『彼女は妹さんだよね?』

遠藤が唐突に亮介に聞いた。

『歳は幾つかな?』

『23です』

『何故警察に行かなかったのかな?』

『妹が拉致されて無理矢理薬を射たれておもちゃにされたようで、警察には行きたくない、あんな悪夢のようなこと二度と口にしたくないって言っていたので…』

『うーん、それだけの理由かな?』

『…いえ、警察に捜索願いを出していたのに一向に動かないので、自分が妹に薬を射った奴等の一人を監禁して妹のいる場所を聞き出して奴等から妹を助け出したんです』

『そうか…うん、警察に行きたくない事情は分かった。派手にやらかしたみたいだね。ニュースになってたよ…。須藤さんと同じことしたんだな』

『えっ?須藤さんと同じこと?』

遠藤の言葉が亮介には引っ掛かった。

『いや、古い話だ。ところで健康保険は使えない状況だから薬代や治療費が嵩むけど大丈夫かな?見ての通り小さな町医者だ。中々こっちで負担するのも厳しいからね…』

『金なら大丈夫です』

亮介は、そう言って神崎のバッグから札束一つ、百万円を遠藤の前に差し出した。

『これで足りるでしょうか…』

『君は見たところ若い感じだが、歳は幾つかな?』

『27です』

『27でこんな大金をポンと出せるのか…。この金は君の貯金かな?それとも…危険なお金なのかな?』

遠藤は亮介を見つめた。

『…自分の金です…』

『…そうか…ニュースでも大量の薬を押収したことしか言ってなかったし…まぁ、遠慮なく受け取らせてもらうよ?これだけあれば治療費に困ることはないから。後は私に任せてほしい。彼女の望みだから警察に行くこともないから心配することないよ』

『すみません、どうか妹をよろしくお願いします』

『ちょっと治療には時間かかるかもしれない。症状を改善することはできるけど、また彼女は薬を欲しがるかもしれない。そこは理解してほしい…』

『…完治はできないんですか?』

『うん、麻薬常習犯が警察に捕まってもまた薬が欲しくなるのは君もテレビのニュースで知ってるよね?』

『はい…時々いますね…』

『覚醒剤は常習性が強いんだ。治療後は君がしっかり妹さんを見ていないと何処かから薬を仕入れることになるかもしれない。それは何としても君や家族がしっかりサポートしてあげてほしい』

『…分かりました。妹の家族は俺だけなので何とかします』

『うん、そうしてほしい。じゃあ治療始めるから2~3日したら電話するから、連絡先ここに書いておいてくれるかな』

『分かりました』

亮介は名前と電話番号だけを書いて遠藤に渡し、病院を後にした。

車を走らせ、亮介はこれからのことを考えた。

須藤と琴音の所へ行こうと思ったが、自分が警察と神栄商事に追われていることで、これ以上迷惑をかけたくない思いもあり店に行くことは辞めて琴音に電話をかけた。

『もしもし亮介です』

『亮介君、由美ちゃん病院に預けたんだね。さっき先生から須藤さんに電話があったよ』

『ママ、ありがとうございました。須藤さんはまだ店に居ますか?』

『いるわよ、代わる?』

『お願いします』

琴音は自分の携帯を須藤に渡した。

『もしもし』

亮介のスマホに須藤の声が聞こえてきた。

『須藤さん、本当にありがとうございました。由美は無事に遠藤医院に預けられました』

『そうか…完全に治る訳じゃないからな。この先お前が由美ちゃんを守らなきゃならないんだが…警察に追われてるんだろ?神栄商事の吉田にも…』

『はい…でも、由美が治るまで警察からは何としても逃げ通して見せます。吉田には俺のやり方で償ってもらいます』

『おい亮介…無茶するんじゃねぇぞ。
吉田が警察に捕まるのは時間の問題だ。
それまで奴等にちょっかい出すなよ?
奴等相当ねちっこいからな。
さっきもこの店に来て暴れてったんだ。
俺もママから目が放せねぇよ。
お前も大切な妹を守ってやらなきゃなんねえんだぞ?
お前にもしもの事があったら由美ちゃんどうするんだ?
また薬に手を出すことになりかねないんだぞ?』

須藤は亮介と電話で話ながら、琴音から離れて店の外に出た。

琴音は不安な面持ちで須藤の後ろ姿を見ていた。

『…わかってます。由美が治ったら外国に行こうと思っています。その前に吉田には償ってもらうつもりです』

『亮介!俺の言うこと聞けねぇのか?』

須藤の口調が強くなった。

『すみません…こればかりは…すみません…』

『全く強情っ張りだな…。まぁ、お前の気持ちも分からんでもないがな…俺だって、もしママに奴等が手出ししたら黙ってられないからな…
まぁいいや…ただ一人で無茶はするなよ。
どうしても収まりつかなかったらママか俺に電話しろ。いいな?』

『分かりました…』

亮介の返事を聞いて須藤は電話を切った。


須藤は15年前の事を思い出していた。

須藤は、若い頃に暴力団とは一線を画す古いしきたりを守り任侠を重んじる小さな組織の竜神会という組にいた。

竜神会に入って数年経った、須藤が33歳の時のことだった。

同棲していた恋人が、別の大きな組織の組が竜神会を潰そうと須藤の恋人が拉致されてしまった。
そして薬を射たれて廃人にされた恋人は、自ら命を絶ってしまった。

当時、竜神会の若頭だった須藤は怒りに任せ、木刀一本で大きな組の分家である事務所に舎弟と共に殴り込みをかけた。

20人いた組の事務所へ、たった5人で殴り込みをかけた須藤の竜神会は見事に勝利した。

大きな勢力の組だったが、警察沙汰にしたくなかった事もあり竜神会は一目置かれる組に成り上がった。

それから5年後に須藤は組長が替わって任侠を軽んじるようになり、竜神会から足を洗った。

その頃から新しく開店したスナック「鈴の音」に通うようになった。

強面の須藤だったので、当所琴音は敬遠していたが見た目は強面だったが、暴力団とは一線を画す任侠を重んじる須藤の人柄に琴音は少しずつ引かれていった。

しかし、琴音はお店のママであり、ホステスの女の子達の手前、その気持ちを表に出すことはなかった。

ある日、柄の悪い暴力団風の客が数人来て、店の女の子に手を出したり、他の客に喧嘩を吹っ掛けることが度々あった。

そんな客を舌打ちしながら、でしゃばるような事はしたくなかった須藤だったが、その客が琴音にに手を挙げたことで堪忍袋の緒が切れた須藤は4人の暴力団風の客を店から追い出した。

琴音は始めてみた須藤の気迫に驚いたが、自分を守ってくれた須藤に、その時完全に恋に堕ちたのだった

須藤と琴音は、お互いの気持ちを分かっていながら、今でも客とママの関係を保っていた。

今回の吉田の件で、琴音は須藤に対しての想いが一層強くなっていた。

ここ数日は、ホステスの女の子の安全を考え、終電前には店を閉めるようになっていた。

そして由美が病院に入ったその日、ホステスの女の子達は一足先に帰り、琴音と須藤だけが最後まで残って店を閉めて、須藤は琴音を駅まで送る、という事が続いていた。


そして翌日の夜…

琴音は鈴の音に向かって駅から歩いていた。

そして、神栄商事の連中が「鈴の音」を潰せという吉田の命令で琴音の店へと向かっていた。


つづく。。。


どもです(*´∇`)ノ♪

須藤の過去…
琴音との出会い…
そして二人の想いが明らかとなりました♪

そして琴音の店へと向かっている神栄商事の吉田の部下達…。

うーん…危険な香り…

須藤さん…早く来て…

と、思わず呟く作者の私(笑)

次回もお楽しみに♪

今回も最後までお付き合い
ありがとうございました♪

また来てね♪(@^^)/~~~

今回の選曲♪
須藤さんと琴音さんをイメージしました♪

【ねじれたハートで】
来生たかお、桃井かおり


来生えつこさんの歌詞が凄くいい♪
桃井かおりさんの歌いかたも曲調に
ぴったんこですね♪
下の名前が皆平仮名なところもいい♪えっ?
(*´ー`*)

いつも応援ありがとうございます♪
お帰りの際はポッちりと一押し
お願いしますぅ~😃💦
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テーマ : ハードボイルド
ジャンル : 小説・文学

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Re:godmina様へ♪


minaさま、こちらこそいつもありがとうございます♪

>物語が段々緊迫してきましたねぇ。
>目の前で話が進んでいるような臨場感があります

読んでくださる方に、映像として捉えて頂けることは物書きとして嬉しいことであります♪
ありがとうございます♪

「鈴の音」に迫る神栄商事の連中。
このあと、亮介と須藤の二人が神栄商事の連中、そして吉田との大乱闘になります。

ラストは…読んでくださる方の想像に任せる終わり方に…なるかも😃💦

コメントありがとうございました♪

Re:ももPAPA様へ♪


ももPAPAさま、いつもありがとうございます♪

登場人物の輪郭を小出しにするのは、私の癖でもあり、読んでくださる方に想像を膨らませてもらいたい、という意図もあります。

これから須藤と亮介、神栄商事との大乱闘があります。

ハードボイルドらしい終わりにしたいと思います。

予想外のラストになるかもしれません😃💦

どうぞ最後までお付き合いくださいませ♪

「ねじれたハートで」は歌詞がとても気に入り、須藤さんと琴音ママのイメージにぴったりだなーとおもい選曲しました♪

今回も読んでいただきありがとうございました♪

Re:まっ黒くろすけ様へ♪


まっ黒くろすけさま、いつもブログ訪問ありがとうございます♪

大切な人を守りたい須藤さん。

この後、亮介と共に怒り大爆発します。

更にその後も大乱闘…

そして…これ以上は言えません(笑)

今回も曲を探していたところ、ねじれたハートは来生えつこさんの歌詞が私の中で須藤さんと琴音ママのイメージにぴったりだったので選んでみました♪歌詞自体も私好みだったので♪

私は「マニキュア落とし疲れた爪 艶を無くした哀しみに」というところに女性ならではの気持ちの表現が素敵だなーと思いました♪

コメントありがとうございました♪

Re:がちょー様へ♪

がちょーさま、いつもありがとうございます♪

>昭和のドラマな感じで面白いでありましたよ

昭和の香りがするのは、任侠とか殴り込みが出てきたからでしょうか♪

確かに私の中ではセーラー服と機関銃に出てくる目高組を意識してましたからね(笑)

面白い、と言っていただけて嬉しいです♪

ありがとうございました♪

緊迫してきましたね!

美香さん、いつもブログにお付き合い下さり
ありがとうございます。
またこの度はコメントを頂戴し、ありがとうございました。

物語が段々緊迫してきましたねぇ。
目の前で話が進んでいるような臨場感があります。
話がトントンと進んで面白いです。
兄妹がどうなっていくのか、また須藤とママの恋が
果たして発展してハッピーエンドとなるのか、
私は興味津々で見守っておりまする。
美香さん、無理しないで頑張って下さいよ。
応援しています。

No title

美香さん こんばんわ♪

須藤さんの過去  そして人物の輪郭が次第に見えてきましたね。

心配なのは亮介と妹の由美ですが、須藤さんと遠藤医師、そして琴音ママの3人のサポートが心強いところです。

これからの展開も楽しみです。

"ねじれたハートで"
来生たかお、桃井かおり  ご両人のデュオ Vocalが何ともいい感じで滲みました🎶

ぐっと沁みるよ!

須藤さんの過去が段々わかってきました。
ここぞと言う時に本領発揮する須藤さん、カッコイイ!
くろすけも、心身共に強い男が好きです。憧れま~す。(^-^;

由美がお世話になる遠藤医師も良さげな人なのでひとまずホッです。が、今度は鈴の音のお店とママが心配ですね。

ハラハラドキドキがINg・・・目が離せ~~~い。

ねじれたハートの歌詞、確かにいいですね。
今夜はひとり さっぱりひとり せつなくひとり ふたりはひとり
何だかぐっと沁みました。







心身共に強い男にくろすけも憧れますね。

更新もお疲れさまです

まさにハードボイルド!!

美香さまワールド全開であります
昭和のドラマな感じで面白いでありましたよv-290
プロフィール

美香

Author:美香
いらっしゃいませ♪
LGBT(トランスジェンダー)美香のブログへようこそ~♪

このブログは、私のリアルな日常や思うこと、感じたこと、など書いてます。
エッチな記事も含まれてますので苦手な方は飛ばして読んでくださいね♪

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