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人間になった猫…(思いがけない出来事)


居酒屋へ行った翌日の日曜日。

松原良樹は朝から布団に寝転がったまま桜木涼子が良樹に見せた涙の訳を考えていた。

『俺のことパパと勘違いしたって言ってから、彼女泣いたんだよな…。パパに似てるのか?俺が?
あっ!もしかして旦那と別れたとか…。
…でもなー…あんな綺麗な奥さんと別れるか?』

良樹は布団の上でゴロゴロ転がりながら、あーだこーだと考えた。

そして、気付けば一時間半も布団の上でブツブツ言っていた。

そんな自分に気付いた良樹。

『あー!やめたやめた! まったく中学生や高校生じゃあるまいし…。なに考えてんだよ俺は…』

彼女には子供も居るんだし、まだ若い。仮に旦那が居ないとしても、俺みたいな中年なんか…。

そんな事を心の中で呟く良樹だった。

『腹へったな…』

良樹は布団から起き上がり、冷蔵庫を開けた。

見事に空っぽだった。

『ラーメンでも食いに行くか…』

ボソッと呟き良樹は支度を始めた。

支度をしている途中で、良樹はテーブルの上に置かれたカードケースを手に取り、それを開いた。

ブチとミコが出窓に並んで、二匹とも首を同じように傾けている写真を見つめた。

『そういえば、お前に人間の女になってくれって言ったことあったな…。
俺…この歳になって寂しくなってきたのかな…』

そう言って、良樹はミコとブチの写真を指先で撫でた。

カードケースを閉じて小さめのショルダーバッグに財布と一緒にしまい、バッグを肩から襷にかけて部屋の鍵を手に取り、良樹は家を出た。

玄関を出ると、むせかえるような夏の空気に良樹は思わず顔をしかめた。

階段を下りた所のポストの前で、良樹はチラッと足元に目をやった。

彼女の涙の染みが残っているはずがないと分かっていながら、足元を見てしまった自分に少しイラついた。

自転車置き場から自転車を出し、良樹は駅へ向かって走り出した。

もうすぐ8月になる夏の太陽は、アスファルトの照り返しと太陽の陽射しで、良樹の体はたちまち汗が吹き出してきた。

野良猫たちがいる公園に差し掛かったところで、良樹はチラッと木陰のベンチを見た。

その木陰のベンチには、白い猫が横たわっていた。

陽射しが強いせいか人影は無かった。

自転車を停めて、ベンチで寝ている白猫を良樹は見ていた。

『この暑さで参ってるのかな…』

少し心配になった良樹は、公園の入り口に自転車を停めて白猫に近付いていった。

逃げる気配もなく、首をちょっとだけ持ち上げてパタンと首を寝かした。

『ん?』

何となく、白猫に違和感を感じた良樹は駆け寄った。

口を開いたままで舌は垂れ下がってベンチに付いていた。

『大変だ!』

逃げようとも動こうともしない白猫の息は荒く、明らかに調子が悪そうだった。

『待ってろ、今水あげるからな』

家からペットボトルの水を持ってきていた良樹は、水を自分の手のひらに溜めて猫の口元を濡らしてあげた。

白猫は舌と口を動かし水を飲んだように良樹には見えた。

ペットボトルをショルダーバッグに戻し、良樹は白猫を抱き上げた。

白猫の体がとても熱く感じた。

良樹は自分の着ているTシャツのお腹の部分で白猫を包み込み、そのまま自転車に乗り、ミコとブチが世話になった動物病院へ急いで連れていった。

数分で病院に着くと、自転車のスタンドも立てずに横倒しにして病院の中に入っていった。

幸い、院内はペットを連れた人はおらず、良樹は受付で白猫を見せた。

『松原さん、どうしたんですか?その格好!』

猫をお腹のところでTシャツにくるんでいたので、お腹丸出しの良樹を見て、獣医師の奥さんはビックリしていた。

『すみません、この子診てあげてください!公園のベンチでのびていたんです』

そう言って良樹はTシャツにくるんだ白猫を見せた。

『あら!どうしたの?待ってくださいね、先生呼んできます』

『お願いします!』

すぐに獣医師が出てきて、白猫を診察台へと寝かせて診察を始めた。

良樹は、ミコとブチが居なくなってからも、この動物病院へ保護猫や犬達のための寄付をするために、毎月一回欠かさず訪れていた。

そんな優しい良樹だったので、獣医師も快く白猫を診てくれた。

10分ほどして、待合室にいる良樹のもとへ獣医師が来た。

『松原さん、あの白猫ちゃん熱中症だと思います。少し様子を見ていた方がよさそうですけど…』

『そうでしたか…。治りますかね?』

『まだ若い猫みたいですから、一晩こちらで預かりますよ。この白猫、公園の猫ですよね?』

『そうです。ラーメン食べに行こうとして公園をチラッと見たら、ベンチの上でのびてたんです。抱き上げてもぐったりしていたので、先生に頼るしかないと思って…』

『相変わらずお優しい方だ、松原さんは』

獣医師は良樹の顔を見て笑顔になった。

『いま、お金の持ち合わせがないのでラーメン食べてから銀行寄ってまた来ます』

『あっ、診察代も薬代も結構です。松原さんは命を大切にする方だ。私も獣医師として松原さんの毎月の寄付や、こうして野良猫でも助けてくれるのは、とても嬉しいことです。ですから、今回は診察料金は結構です』

『そうですか…ではお言葉に甘えて、そうさせていただきます。
明日の仕事終わってから白猫迎えに来ますね。また猫のいる暮らしがしたくて…。
ミコとブチが居なくなってからも12年経ちますが、やっぱり寂しいものです』

『そうですか。では、あの白猫ちゃんの体も悪いところないか診ておきます』

『宜しくお願いします』

良樹が獣医師に頭を下げたとき、病院の入り口から女性が入ってきた。

『おっ、涼子ちゃん。休憩時間か?』

『義兄さん、お疲れ様。外めちゃめちゃ暑いー』

そう言って桜木涼子は、良樹を見て頭を下げたとき、ハッとした。

良樹も、桜木涼子にここで会えたことに驚きを隠せなかった。

『あっ、昨日はカードケースを届けてくれてありがとうございました。ろくにお礼も言えなかったので…』

『いえいえ、たまたま家が近くだったので、免許証も見えたので無いと困るかなって思ったので…』

『あれ?松原さん涼子ちゃん知ってるのですか?』

二人の様子を見て獣医師が良樹の顔を見た。

その時院内の奥の部屋から、涼子の子供である美奈子が凉子に駆け寄ってきた。

『ママー』

美奈子は涼子に抱き付いて、徐に良樹の顔を見た。

『パパだー!パパ抱っこー』

美奈子は涼子から離れ、良樹の足にしがみついた。

その様子を見ていた獣医師と奥さんは目を丸くしていた。

『えっ?えっ?パパ?』

獣医師と獣医師の奥さんは良樹と涼子と美奈子を順番に見て狐につままれたような顔でポカーンと口を開いていた。


続く。。。



どもです(*゚▽゚)ノ

良樹にとって、思いがけない場所で涼子と出会いました♪

涼子の娘、美奈子が良樹をパパと呼んだ。
涼子の義理の兄である獣医師と涼子の姉である獣医師の奥さんは、意表を突かれてポカーンと口を開けたまま、次回へと続くのであります♪

このあと、二人は急接近するのですが、良樹が歳の差を気にするので焦れったい関係に…なるかな?(*´▽`)


【Everything】MISIA

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テーマ : ショート・ストーリー
ジャンル : 小説・文学

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Re:がちょー様へ♪


がちょーさま、いつもブログ訪問ありがとうございます♪

人間の世界も、猫の世界も生きることは大変ですよね。
生きているのではなく、生かされているわたし…
私も近頃お疲れ気味です(^^;

猫の世界と人間の世界も大変でありました

人間になった猫

人間関係が猫の世界でも大変でありました。
猫の世界、人間の世界共々いろいろと大変でありましたよ

いつの世も大変でありましたね。


Re:花おばさん様へ♪


花おばさんさま、いつもブログ訪問ありがとうございます♪

良樹は若い涼子に心引かれるのですが…
自分の47歳という歳に引け目を感じています。
そして、独身という寂しさのような人恋しさのような気持ちがあります。
白猫に出会い、ミコとブチがいた頃の幸せ感が急速に甦ったのかもしれません♪
子供がいる若く綺麗な涼子。
旦那も別れたとしても、彼女の心には存在するのだろう…、と彼女が見せた涙を、勝手に自分で解釈していたりするのかも♪叶わぬ想いと自分で決めつけている良樹なのであります(^^;

次回は、良樹のそんな心の中と、涼子の心の中を書いてみようと思います♪

コメントありがとうございました♪

白猫保護、パパと呼ばれて。^^

美香さん、こんにちは。

良ちゃんは、いつもながら、ほんと、優しい人ですね~。

白猫ちゃんを、またまた、保護するするなんて。

お話の中では、もう梅雨があけ、すっかり夏になったのですね。

夏の日差しがまぶしそう。

優しい彼には、幸せになってほしいと、心から思います。

パパー!と呼ばれたのも、うなずけるこれまでの展開。

縁結びの天使ちゃんですね。

どうぞ、幸せな物語でありますように。

本日も、楽しく拝見させていただき、ありがとうございます。
プロフィール

美香

Author:美香
いらっしゃいませ♪
LGBT(トランスジェンダー)美香のブログへようこそ~♪

このブログは、私のリアルな日常や思うこと、感じたこと、など書いてます。
エッチな記事も含まれてますので苦手な方は飛ばして読んでくださいね♪

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また、ご連絡いただければ、よろしければ私の方でもリンクさせていただきます♪

よろしくお願いいたします♪

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