FC2ブログ

タイトル画像

二つの欠片…

2020.01.15(15:02) 423


俺、持田悟史(もちださとし)32才。

仕事も順調、結婚もしていて2才になる子供もいる。

まぁ、普通に幸せな家庭を持っている。

ところが最近、妙なことが起きるんだ。

なんというか…、夢と現実が混同しているような感じと言えばいいのか…。

例えば眠りから覚めたとき、俺は独り暮らしで散らかった部屋で目覚める。

独り暮らしで単身赴任かと思えば、実は嫁さんも子供もいない設定。

仕事はしていて、どうやら職場では未婚の独身。

そんな夢を見るんだ…。

しかも…その夢は続きが見れて、時々その夢は長く続くことがある…。

午前4時…。今は隣に愛しい妻と子供が寝ている。

俺の夢見てた幸せがここにある。

『よし、もう一眠りすっか。今日は三人で動物園行くからな。このチビッ子も喜んでくれるだろう』



悟史は、二人の寝顔を見ながら口許だけで笑った。そして午前4時という時間を、もう一度確認すると再び眠りについた。

暫くして、悟史は窓から差し込む朝日で目を覚ました。

布団に寝たまま横を向くと愛しい妻と子供は居なくて、散らかったままの部屋だった。

『またこの夢かよ…』

悟史は、ため息をついて時計を見た。

時計は7時丁度を示していた。

『どうせ夢の中ならまだ寝てられるな』

悟史は呟きながら、また眠りにつこうとした。

暫くしてスマホの呼び出し音に目を覚ました悟史。

スマホのディスプレイには、会社の後輩の名前が表示されていた。

『おう、山川…。こんな早い時間にどした?』

あくびをしながら悟史は電話に出た。

『あっ、出た!持田さんっ!こんな早い時間、じゃないですよ!今日は一緒に得意先へ行く予定じゃないですか!
もう9時ですよっ?
持田さん出勤してこないから無断欠勤だと言って課長カンカンですよ!
連絡もないから俺が電話してみたんですけど。具合でも悪いんですか?』

『わかったわかった…。今から行くよ』

『もぉ~呑気だなぁ、持田さん…。俺、駅まで迎えに行きますから、そこで合流しましょう。
俺、ここから逃げたいから。
課長の顰めっ面見ていたくないですから』

『おぉ、駅まで来てくれるなら俺も課長の顔見ずに済むな。頼むぜ、山川』

悟史は後輩の山川に、そう言って電話を切った。

時計を見ると確かに9時を少し回っていた。

『はぁ…まったく夢の中まで仕事に追われるのかよ…。そして俺は律儀にくそ真面目に仕事へ行く…。
そして会社に戻れば、ご丁寧に課長に怒られるってか…。行くの辞めようかな…』

しかし後輩の山川が駅まで迎えに来るということで、渋々出掛ける仕度をする悟史。

散らかったままの部屋をチラッと横目で見ながら、悟史はため息を一つついて家を出た。


悟史の後輩である山川は、会社から最寄りの駅で車に乗り待っていた。

『よぉ、山川お待たせ。迎えに来てくれてありがとな』

悟史は、運転席に座る山川に声をかけて助手席に乗り込んだ。

『よぉ、じゃないですよ…。持田さんが、また無断欠勤したって課長の怒りが俺に向いてたんですからね。
八つ当たりもいいとこでしたよ』

『ちょっと待て…。また無断欠勤てどういうことだ?俺、無断欠勤なんてしてないぞ?』

『やだなぁ、持田さん。ついこの間も連絡無しに休んだじゃないですか』

『いやいや…それ、いつのことだ?』

『えっ?覚えてないんですか?先週の木曜日ですよ。その前にもあったし…。どうしちゃったんですか持田さん。今日も木曜日で、こうして遅れてくるし…』

『あのさ、山川…。今日は土曜日じゃないのか?』

悟史は夢の中と現実の曜日の違いに気付いた。

『誰が何と言おうと今日は木曜日です!持田さん、ほんとにどうしちゃったんですか?』

『あっ…いや、わりぃわりぃ…何か勘違いしてるみたいだな、俺…』

『持田さん、大丈夫ですか?今までこんなこと無かったのに…。なんか良くない病気の前兆とかかもしれませんよ?一度病院行った方が…』

『気にすんな…。それより山川、今日は誰に会う事になってるんだっけ?』

悟史は山川の言葉を遮るように言った。

悟史の苛つくような言葉に、山川は呆気にとられた顔で悟史を見つめた。

『な、何だよ山川…』

山川が自分を見て呆れたような顔をしたので、悟史は自分の言った言葉に一瞬戸惑いを見せた。

『…いえ、何でもないです…。これから⭕⭕会社の営業の須藤さんと得意先の⭕⭕印刷工場で、来月のうちの商品の引き継ぎの件です』

山川は悟史に何か言いたげだったが、平静を装い悟史の問いに答えた。

『そうか…』

悟史は、それだけ言って黙りこんだ。

そして、これは本当に夢の中の事なんだろうか…。

あまりにリアルすぎる…。

悟史は半信半疑で、昨日のこと、先週のことを思い浮かべていた。

しかし、その記憶の中に仕事の事は皆無だった。

先週は…、たしか嫁さんと子供連れて遊園地行ったんだよな…。

悟史は、そんなことを思い出していた。

『なぁ、山川…』

『はい…?』

『俺、先週の木曜日無断欠勤て言ってたよな?丸一日休んでたっけ?それとも今日みたいに遅刻してきたのかな…。なんか記憶が無いんだよな…』

『えっと…、先週の木曜日は丸一日休んでましたよ。あの日も課長怒ってましたから…』

『そうか…次の日の金曜日、俺…どんな感じだった?』

『次の日は大騒動だったじゃないですか?持田さん独身なのに、奥さんと子供連れて遊園地に行ってたって。みんなビックリしてたの覚えてないんですか?
いつ結婚したんだー、子供いたのかーって』

やっぱりこれは夢だ…。

悟史はそう思った。

夢の中の事だから仕事の記憶が無いのかもしれない。

それとも…逆?

いやいやいや…ナイナイナイ。

『も、持田さん?着きましたよ?まだ打ち合わせまで時間ありますから…。少し休んでてください』

さっきから一人でぶつぶつ言ってる悟史を、運転しながらチラチラ見ていた山川は悟史に休むよう促した。

『あぁ、もう着いたのか…。じゃあ、時間になったら教えてくれ。ちょっと調べたいことがあるんだ…』

そう言って、悟史は車を降りて少し離れたところでスマホを取り出した。

悟史は、夢というキーワードで検索を始めた。



続く…

にほんブログ村 小説ブログ 短編小説へ
にほんブログ村 ポエムブログ ことばへ

関連記事
スポンサーサイト





移り行く日々の徒然に…


ショートストーリー トラックバック(-) | コメント(0) | [EDIT]
<<心に咲く花よ… | ホームへ | うたかた…>>
コメント
コメントの投稿













管理者にだけ表示を許可する