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妹…2 (短編ハードボイルド)


佐久間亮介は、神栄商事の吉田和也に拐われた自分の妹、由美を取り戻すために神栄商事でヤミ金を担当している男を呼び出し、その男から妹の居る場所を聞き出した。

更に、麻薬、違法ドラッグ、振り込め詐欺を資金源としている神栄商事は事務所を転々と変えていて、今夜にも事務所を変える、という情報を亮介が呼び出したヤミ金の男から聞き出したのだった。

神栄商事で、ヤミ金を担当している男を使われていない倉庫に監禁して、亮介は神栄商事が入っているビルの出入り口が見える場所に、ヤミ金の男が乗っていた車を停めてビルの出入り口の様子を見ていた。

亮介は車に備え付けてある時計をチラッと見た。

午後の6時半になったところだった。

ちょうどその時、助手席に置いてあるヤミ金男の鞄の中で、携帯が鳴り響いた。

鞄の中の携帯を取り出した亮介は、携帯の着信相手をディスプレイで確認すると「社長」と表示されていた。

『間違いなく吉田だな…』

亮介が呟くと10回ほどのコールで着信が切れた。

少し経ってから、ディスプレイに留守番電話のメッセージが表示された。

留守番電話を確認する亮介。

「神崎~。お前、何処ほっつき歩いてんだよ。7時にはここ出て、先に⭕⭕市の移転先、西城ビルに行ってるからな。後で必ず連絡しろよ。お前、薬持ち歩いてるんだからな?警察や他の組の奴等には気を付けろよ。
お前が仕入れる薬は大事な資金源なんだから慎重に動けよ」

留守番電話はそこで終わった。

「あのヤミ金、神崎っていうのか…。それにしても、吉田のしゃべり方からすると神崎って野郎は重要人物ってとこか?重要人物を一人で動かすなんて吉田も甘いな…」

亮介は呟きながらヤミ金、神崎の携帯に表示されている吉田の携帯番号の頭に184を付け加え、自分のスマホに入力して保存した。

『7時に奴等は動き出すのか…』

時計を見ると6時45分になっていた。

亮介は神崎の携帯をジャンパーの内ポケットに入れて、リヤトランクに置いてあったバットをジャンパーの中に隠して車を降りた。

そして神栄商事が入っているビルの近くに身を潜めて出入り口の様子を見ていた。

程なくして、1台のワゴン車がビルの出入り口の前に止まって運転手がリヤゲートを開けてビルの中へ入っていった。

ビル内に何人居るのか亮介には分からなかったが、できるだけ一人ずつ倒していくつもりでいた。

亮介は出入り口の様子を見るため、歩行者に紛れてビルの前を通り過ぎ中をチラッと見た。

縦に細長い古いビルにはエレベーターが無いようで、車から降りてビルに入っていった男は、出入り口に見当たらなかった。

亮介は再び立ち止まり、ビルの出入り口に目を向けて少し待った。

ワゴン車をビルの出入り口に横付けした運転手が段ボール箱を抱えて出てきて、ワゴン車の後ろに段ボール箱を積み込み再びビルに入っていった。

少し間をおいて、今度は三人の男が段ボール箱を持って出てきて、ワゴン車に積み込むと二人がワゴン車の側に残ってワゴン車を運転していた一人がビルに入っていった。

『残ったのは見張りか…。あの段ボール箱には薬が入ってるのか?』

亮介はタイミングを待った。

「吉田は7時に出るって言ってたからな…今のところ三人は確認してるけど…中には何人居るんだろう…」

一人づつ片付けるつもりでいた良介だったが、数人纏めて相手をする覚悟を決めて再びタイミングを待った。

ビルから四人の男が段ボール箱を持って出てきてワゴン車に積み込んで四人の男はビルに入っていった。

四人の内、一人はワゴン車を乗り付けた男だった。

「今のところ六人か…。吉田を入れても七人…。由美が出てくるまで待つべきか…」

亮介が考えていると、ビルから男二人に抱えられた由美が出てきてワゴン車に男二人と一緒に乗り込んだ。

亮介は反射的に飛び出しそうになったが、車の後ろで荷物を見張っていた二人がビルに入っていった。

「由美を抱えて車に乗った二人が残って見張り二人がビルに入ったか…。吉田を入れても七人前後か…今がチャンスだな…」

亮介はジャンパーで隠していたバットを握りしめビルの入り口に止まっている車に向かって走り出した。

開いたままのリヤゲートから荷物を道路に放り出した亮介。

落ちた段ボール箱から書類に混じって、錠剤が入ったビニール袋や注射器が散らばった。

『なんだてめぇは!』

リヤシートの横のスライドドアが開き男が出てきた。

『由美!逃げろ!』

亮介は由美に向かって叫んだ。

『お兄ちゃん!?』

『逃げるぞ、由美!』

亮介はそう言って車を降りてきた男の足をめがけてバットを振った。

「バシッ」という鈍い音と共に男が地面に転がった。

『おらっ、てめぇも降りてこい!』

亮介は叫びながら車に残っている段ボール箱を道路にぶちまけた。

車の中の男が亮介に気を取られている隙に、由美は開いたままのスライドドアから飛び出して、兄の亮介の所へ走り寄った。

『お兄ちゃん!』

『由美、逃げるぞ!走れるか?』

『大丈夫…』

亮介は由美の手を取り走り出した。

ワゴン車の中で、由美の側にいたもう一人の男が亮介と由美に追い付いて由美の服を掴んだ。

亮介は振り返り由美の服を掴んだ男目掛けてバットを上から振り下ろした。

辛うじて避けた男は、由美の服を掴んでいた手を離した。

亮介は、間髪入れず男の足目掛けてバットを力一杯振った。

「バチっ」と音がして男の太股に当たった。

男が歩道に転がった時、『あそこだ!』という声が遠くで聞こえて数人の男が亮介と由美に向かって走ってきた。

周りにいた歩行者はビックリしたように歩道の両端に飛び退いた。

『由美!こっちだ!』

亮介は妹の由美の手を取り細い路地に逃げ込んで、建物の間のゴミ置き場の陰に隠れた。

亮介がそっと細い路地に顔を出して様子を見ると、遠くに巡回のパトカーの赤色灯が見えていた。

そして、そのパトカーの赤色灯に怯んだ男達は大通りの歩道に立ち竦んでいるのが見えた。

『お前らは車に戻って道路に散らばった荷物を出来るだけかき集めて車で逃げろ!』

『はい!』

二人の男が返事をしてワゴン車の所へ戻っていった。

『まだ警察には通報が入ったか入らないかの頃だろう。お前らは向こうの路地から回れ!俺はこの路地を探してみる』

『分かりました』

二人の男は一本違う道へと走っていった。

警察に通報が入ったのか、遠くに見えていたパトカーがサイレンを鳴らしながら近付いてきて、亮介と由美が身を潜めている横を通り過ぎて大通りを左へ曲がっていった。

亮介達を追いかけていた男二人がワゴン車に辿り着くと、荷物は綺麗に片付けられていた。

『お前は車に乗って逃げろ!連絡とれるようにしとけよ!俺は奴等を探す!』

『はい!』

ワゴン車を運転してきた男が車に乗り込みワゴン車を急発進させた。

歩道で座り込んでいる、亮介にバットで足を殴られた男にパトカーに乗っていた警官が駆け寄ったとき、ワゴン車は後方の車にぶつかりそうになりクラクションを鳴らされたが、男はお構いなしに逃げていった。

パトカーで巡回中だった警官の一人がそのワゴン車に気が付き、亮介にバットで足を殴られて歩道に座りこんでいる男の横で、急発進したワゴン車の特徴を無線で知らせ応援を呼んだ。

ビルの出入り口にいた神栄商事の連中は散り散りに別れ、警察の目を掻い潜りながら亮介と由美を探し始めた。


『由美、大丈夫か?』

『うん…』

由美は泣きながら返事をした。

よく見ると、由美は裸足だということに気がついた亮介。

由美は足の指を所々擦りむいていた。

亮介は自分のジャンパーを薄着の由美に羽織らせながら、自分が乗ってきた神崎の車が近くにあるはずだ…。そう思った亮介は細い路地に顔を出した。

人通りは少ないが、奴等の姿は見られなかった。

バットを由美に預け、亮介は大通りの歩道手前まで行き、顔を出し左右を見渡した。

神栄商事の社員らしき男が、少し離れた所で警官に職務質問を受けているのが見えた。

亮介が乗ってきたワンボックスは大通りの、亮介がいる細い路地に入る手前に停めてあった。

『今しかないな…。これ以上此処に居たら警察も増えてくるからな…』

そう思った亮介は躊躇することなく由美のところへ戻り、由美の手を取って小走りに車へ向かった。

大通りの歩道の手前で左右を確認すると、左方向では警官に職務質問を受けている神栄商事の男二人。

右の方には神栄商事の社員らしい男二人が遠目に見えていた。

警官の姿を見てこっちに来られないと読んだ亮介は右方向の遠くにいる男二人が警察を避けて振り返る時を待った。

数秒後、新たな応援のパトカーがサイレンを鳴らしながら右方向から走ってきた。

その時、亮介と由美の後ろの方から男三人が歩いてきた。

一人は足を引き摺っていたのを確認した亮介は神栄商事の男達だと確信して由美を見た。

『由美、あそこのワンボックスまで歩くぞ。後ろからも三人怪しいのが来てる…。走ると怪しまれるからな。振り向かないでゆっくり歩くんだぞ』

『わかった…』

由美は寒さのせいなのか恐怖のせいなのか、体が小刻みに震えていた。

『行くぞ…』

亮介と由美は、車に向かってゆっくり歩き出した。

右方向を見ると男二人は背を向けて歩いていた。

後ろから走ってくる足音が聞こえてきた。

亮介と由美はワンボックスに辿り着いて、亮介がカギを開けると由美を運転席から乗せ、その後に亮介が乗り込んでエンジンをかけ、ゆっくり走り出した。

後ろから走って来た男三人は歩道に出たところで左方向にいる警官を見て細い路地に戻ったところだった。

その様子を見ていた助手席の由美は、安心したと同時に体をガタガタ震わせていた。

亮介は大通りに停まっている数台のパトカーを横目に、その場から離れていった。

『由美、大丈夫か?』

『怖かった…凄い怖かった…』

由美は、兄が側にいる安心感から再び泣き出した。

『もう大丈夫だ。由美が無事で良かった。足、痛くないか?』

『何か刺さってるみたいで痛い…』

『ちょっと我慢してろな。離れた場所で薬局見つけて薬買おうな』

『うん…』



その頃、亮介と由美を後ろから追いかけていた男達三人の中に、吉田和也がいた。

『今のワンボックス、神崎の車じゃなかったか?』

石田が他の二人に確認するかのように呟いた。

『そういえば車種が同じでしたね』

『ナンバー見たか?』

『いえ…』

『焦っている雰囲気も無かったし人違いか?』

吉田は今走り去ったワンボックスに乗ったのが、自分達を襲った男なのか半信半疑だった。

そして他の二人が警察の目を掻い潜り、吉田に合流した。


『おいっ!居たか?』

『いえ!見つかりません!』

『何やってんだお前ら!仲間呼んでしらみ潰しに探せ!絶対に奴等を逃がすな!』

『はい!』

数人の若い連中は吉田の一喝で夜の繁華街へ散らばっていった。

亮介は、神崎の携帯を取り出し吉田に電話をかけた。

『神崎ー、お前何処にいるんだよ!今までの事務所には来るんじゃないぞ!内の奴等が誰かに襲われて警察がうじゃうじゃいるからな!…おい、神崎?聞いてるのか?』

吉田はイラついた感じで、押し殺した声が凄みを増していた。

『あんた吉田さんか?』

『て、てめぇ誰だ!』

『たまたま携帯拾ったもんだよ』

『たまたま拾って、何で俺の名前が分かるんだよ!舐めてんじゃねぇぞ!神崎はどうした?』

『あのヤミ金男なら、あんたの大好きな薬と一緒にこっちで預かってる。これから警察に電話して薬と一緒に保護してもらう予定なんだよね。あんたが警察に捕まるのも時間の問題だから覚悟しとくんだな』

亮介はそう言って電話を切った。

『あの野郎…、俺の女を連れ去った上に大量の薬を警察に売りやがって!見つけたら必ず海に沈めてやるからな!』

吉田和也は薬を取り戻せない恨みを、亮介と連れ去られた由美に抱くのだった。

亮介は吉田への電話を切った後、神崎の携帯で警察に電話をかけて、使われていない倉庫に神栄商事の神崎が居ることと覚醒剤、注射器、覚醒剤と同じ作用のある錠剤が大量に置いてあること、そして神栄商事の新たな拠点となるであろう⭕⭕市の場所を告げた。

警察は、半信半疑ながらも亮介が教えた倉庫へ行くと、倉庫の中でガタガタ震えている神崎と、側に置いてあった段ボール箱と紙袋から覚醒剤と注射器、大量の錠剤を確認したのだった。

神崎自身は低体温症で、手足の指の感覚は無くなっている状態だった。

神崎はブルーシートのお陰で命に別状は無かったが、警察が呼んだ救急車で運ばれていった。

警察は、神栄商事の社員を名乗る男から状況を聞き取り、女が連れ去られたことだけが警察に伝わっていた。

薬の事も神栄商事の事も男は口を開かなかった。

目撃証言からも、女を連れ去る男がいたことが分かっていた。

警察では行方不明者のデータを照会して、数人の中から佐久間由美が捜査線上に浮かんだ。

そして、佐久間由美の行方不明捜索願いを出していた兄の佐久間亮介が重要参考人として捜査対象になった。

こうして警察と神栄商事の吉田から追われる身となった亮介。

亮介は自分はどうなってもいいが、由美だけは守りたかった。

車の中で覚醒剤を毎日のように射たれて、吉田の慰みものとされていた、と由美は兄の亮介に泣きながら言って痣になっている注射痕を見せた。

『警察には行きたくない…。悪夢のような事を警察に言いたくない…』

由美は大泣きした。

『大丈夫だ、兄ちゃんが着いてるから心配すんな…。お前を警察なんかに渡さない…』

金はある…由美と二人で何処か遠くへ逃げよう…。

亮介自身、神崎を監禁したことで罪に問われるのは分かっていた。

神崎の鞄に帯の着いた札束が三束入っていたのを見付けていた亮介は、後部シートに置いた神崎の鞄をチラッと見た。

そして、亮介はドラッグストアに立ち寄り思い付く薬だけを買い、深夜まで開いているディスカウントスーパーに寄り、由美の靴のサイズを聞き、女性もののスニーカーとサンダル、靴下を買い由美の足の傷口と擦り傷に薬を塗って包帯を巻いた。

靴は包帯を巻くため、大きめのサイズを購入していたので、包帯を巻いた由美の足でも楽に履けた。

その後、由美は兄が側に居ることで、久しぶりに安堵の眠りに付いたのだった。


その頃、警察は事件現場から走り去ったワゴン車の捜索と佐久間亮介の自宅、由美の自宅への張り込み捜査を開始していた。

更に、神栄商事の新しい移転先にも警察の捜査の手は伸びているのだった。



つづく。。。



どもです~♪(*´∇`)ノ

亮介が今回の神栄商事襲撃事件として、重要参考人として指名手配されてしまいました。😃💦

神栄商事の吉田と警察に追われる身となった亮介と由美。

そしてこの後、スナック「鈴の音」琴音ママと常連客の須藤がこの事件に大きく関わってきます。

お楽しみに♪


今回も最後までお付き合い
ありがとうございました♪

また来てね♪(@^^)/~~~

今回の選曲♪
【横顔】阪井あゆみ

いつも応援ありがとうございます♪
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ジャンル : 小説・文学

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