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人間になった猫…(自分の中の二人の自分)


前回のあらすじ。

桜木涼子は2年前に事故で最愛のパートナーを亡くしていた。
美奈子が生まれて半年後の事だった。
それまでは動物愛護センターで働いていたが、1年前に姉と義兄が営む動物病院の近くへと引っ越してきた。
引っ越しと同時に動物愛護センターの仕事を辞め、姉のいる動物病院のすぐ傍にあるショッピングモール内のペットショップへ勤めることになった。
ペットショップの仕事の時は保育園に娘の美奈子を預かってもらい、金曜日と土曜日の夜は酒屋でアルバイトなので昼間は保育園に頼み、母子家庭ということで夜は姉と義兄が美奈子の面倒を見てくれていた。
日曜日だけは、ペットショップの仕事の間だけ姉夫婦に美奈子の面倒を見てもらっていた。
そして日曜日のペットショップでの仕事を終えて、涼子は姉夫婦の営む動物病院に寄り、娘の美奈子を迎えに行った。

そして、涼子は美奈子を連れて自宅へ帰る途中、野良猫がたくさんいる公園の前で娘の美奈子が猫に会いたいと愚図りはじめ泣き出した。

涼子は仕事の疲れから早く帰りたい気持ちがあったが、娘を抱き上げ娘をあやす涼子の目に、昼間、姉夫婦の動物病院で会った松原良樹の自転車が目に留まった。

公園内を見ると、遠くで両手を振る良樹が見えていた。


それでは続きをどうぞ♪

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

【仕事で疲れていた涼子は早く家に帰りたいと思っていたが、美奈子が泣き止まないのでベビーカーから美奈子を抱き上げてあやしていた時、公園の中の街灯の灯りの中で大きく両手を振る人が目に止まった。

涼子のすぐ側には特徴のあるマウンテンバイクが止まっていて、その自転車は、昼間に姉の動物病院の入り口横に倒れていた自転車と同じだった。

「あれ?この自転車昼間の…じゃああそこで手を振っているのは…もしかして松原さん?」

二人は、またも思いがけない出会いをするのだった。】





良樹の自転車を見つけた涼子。

泣いている美奈子を抱きながら、涼子が公園の中に目を向けると、園内の街灯の下で両手を振る良樹の姿が見えた。

涼子は自分の心臓が「トクン」と大きく跳ねたような気がした。

良樹が駆け寄ってきた。

良樹の姿が近付いてくると、美奈子は泣きながら良樹に両手を伸ばした。

『こんばんは。昼間もお会いしましたね。お仕事終わったんですか?』

良樹は自分に泣きながら手を伸ばす美奈子の指に人差し指を差し出した。

美奈子は良樹の指を掴み泣き止んだ。

『あら、松原さんに会ったら泣き止んじゃった。わたし仕事の帰りです。公園に差し掛かったら急に娘が泣き出しちゃって…。なんか…白猫に会いたいみたいです。松原さんは何されてたんですか?』

涼子はそう言って、少し離れて美奈子に手を伸ばしている良樹に屈託無い笑顔で一歩近付いた。

『昼間に貴女とお会いしたあと、家に帰って白猫を迎え入れる準備をして、そのあとシャワー浴びたら寝ちゃって…起きたら6時回ってたので、駅前のラーメン屋で昼飯と晩飯一回で済ませたところです』

『そうでしたか…あの…今猫と一緒にいませんでした?』

『えぇ、いましたよ。ラーメン屋行く時に公園から涼しい風が吹いてきたので、帰りに夕涼みがてら猫と遊んで帰ろうかと思いまして…』

良樹は照れくさそうに頭を掻いた。

良樹のその仕草が、涼子の胸の中をつんとつついた。

そして良樹が手に持っている猫のスティックサイズのカリカリおやつに涼子の目が止まった。

『猫おやつですね。松原さんは、本当に猫がお好きなんですね』

街灯の下で見る涼子の屈託無い笑顔が良樹にはやたらと艶やかに見えた。

良樹は涼子の笑顔から慌てて猫のおやつに目を反らした。

『あはは、普通に猫好きなおっさんです。あそこのベンチ、以前飼ってた黒猫と出会った場所なんです。あの場所、夏は公園の沼地から涼しい風が吹いてくるんです』

『そうなんですか。沼地といっても綺麗な水ですからね。湧き水だから冷たいと姉から聞きました』

『えぇ、蛍がいるくらいですからね』

『わたし、ここに引っ越してきて一年なんですけど…まだ見てないんですよ~。たくさんいるんですか?蛍』

『蛍のシーズンは沼地の周りの街灯消してますからね。それほど沢山はいないけど沼地の近くは真っ暗で蛍がよく見えますよ。辺りは10メートル先も見えないくらいですからご主人とお子さんで来年の6月頃行ってみては如何ですか?』

その時、美奈子が良樹に手を伸ばし「パパ抱っこー、抱っこー」と良樹にせがみ始めた。

『おじちゃんはパパじゃないぞー。おうちにかえってパパに抱っこしてもらうんだよ』

良樹が笑顔を見せて言うと、美奈子は再び泣き出した。

『あららー、ごめんごめん』

良樹はどうしていいか分からずあたふたするのだった。

涼子も表情が曇り、何かを考えるように唇を噛みしめた。

『あの…なんかすいません…また泣かせちゃったみたいで…』

『いえ…気にしないでください…。あの…よければ美奈子を抱っこしていただけますか?この子のパパ…今は居ないんです。
美奈子が生まれて半年後に…その…事故で…。
だから…この子、父親に抱かれたことが少なくて…』

涼子は俯き加減で言った。

良樹は驚いて今しがた自分が言った無神経な言葉に自分を責めるのだった。

『…そうでしたか…、先程は何も考えず無神経なことを言ってしまいました…すみません。
美奈子ちゃん、抱かせてください。
泣き止むかもしれないから…』

『いいんですよ、気になさらないでください。じゃあ美奈子、おじちゃんに抱っこしてもらおうか』

『パパじゃないけど…おいで、美奈子ちゃん』

良樹は涼子から美奈子を抱き上げるとき、涼子の瞳が街灯の灯りで潤んでいることに気が付いた。

涼子が笑うと今にも零れそうに良樹には見えた。

良樹はすぐに目を反らし美奈子を抱き締めた。

パパがいないという事を涼子から聞いて、抱っこではなく、良樹は無意識に美奈子を優しく抱き締めたのだった。

『あら、やっぱり泣き止んだ』

涼子は美奈子の頬を指で軽くつついた。

良樹に抱かれて美奈子は泣き止んで、公園内を横切る野良猫を指差して、「あーあー、みー」とご機嫌になった。

『猫ちゃんいるねー、どこいくんだろうねー』

良樹は、美奈子に猫がよく見えるように公園内に向いて美奈子をあやしていた。

その良樹と美奈子の姿を見ていた涼子は、亡き夫を良樹に重ねていた。

その時、良樹はチラッと振り向き涼子を見て口を開いた。

『あの…、もし…蛍が見たくなったときは…その…蛍が見られる時期になれば…よければご案内します。真っ暗な所なので始めていくと分かりにくいと思いますから…。
俺は…時々さっき座ってたベンチの側で、仕事帰りによく猫と遊んでますので、見かけて気が向いたら声かけてください』

特に下心もなく、ごく自然な好意で言った良樹。

抱いていた美奈子を涼子に預けようとしたとき、美奈子は嫌がって良樹にしがみついた。

『あらら…ママお仕事で疲れてるんだよ?そろそろお家に帰らないとね』

良樹は美奈子に優しく言って、涼子に抱っこを変わってもらおうとするのだが、美奈子はイヤイヤをしていた。

『ちょっと待っててくださいね。残りのカリカリおやつを猫にあげてきちゃいますんで。そしたら途中まで帰りましょう。もう遅い時間ですからねボディーガードとしてお供致します』

良樹は、少しふざけて気取った感じで涼子に丁寧なお辞儀を大袈裟に見せた。

そして、良樹は美奈子を抱いたまま小走りにベンチまで行き残りのカリカリおやつをベンチの下に置いて涼子のところへ戻ってきた。

その間、良樹の小走りに体を揺すられたのが面白かったのか、美奈子はキャッキャッと騒いでいた。

普段あまり見ない楽しそうな美奈子を見て、思わず笑顔になる涼子。

男親が居るとこんなにもちがうのか…。

そんな思いが、ふと涼子の頭を過るのだった。

『じゃ、もう遅いですから帰りましょう。美奈子ちゃんは俺の家まで抱っこしていきますから』

そう言って、良樹はワイヤーの自転車の鍵を片手で開けて、美奈子を抱いたまま自転車を片手で押しながら涼子と共に歩きだした。

『すみません、松原さん。美奈子重たくないですか?』

『大丈夫ですよ。気にしないでください』

そして二人は歩きながら猫の話や蛍の話をしたあと、良樹はペットキャリーが使い物にならなかったことを涼子に話した。

『わかりました。明日用意しておきますね。プラスチックのキャリーでいいんですよね』

『はい、プラスチックならこの自転車の荷台にくくりつけられますからね』

涼子は良樹の自転車の小さな荷台を見つめた。

これじゃペットキャリーの他には何も積めないな…

ペットキャリーに猫のご飯入れて、猫トイレと猫砂はどうしようか…

涼子は歩きながらそんなことを考えていた。

『あの…松原さん?』

『はい?』

『明日はお仕事何時頃終わるのですか?』

『明日ですか…残業がなければ6時前には終わると思います。残業があれば9時は回るでしょうね…』

『じゃあ残業だったらペットショップに寄れませんね…』

『そうなっちゃいますね…。もし遅くなるようだったら病院の方に電話入れておきます』

涼子は少し考えた。

『松原さんはスマホでラインやってます?もしラインやってたらライン交換しませんか?』

『あ~、残念です。ラインはやってないんですよ』

『そうでしたか…。もしラインで連絡とれたら松原さんが残業だったら連絡もらって、姉の病院に置いておこうかと思って…』

少し照れながら涼子が言った。

良樹は街灯に照らされた涼子の横顔に吸い込まれそうになった。

微笑を浮かべた涼子の頬には笑窪が小さな影を作っていたが、その影は微笑の中に寂しさのようなものを良樹は感じていた。

涼子の横顔に見とれた良樹は、うつむき加減で歩いていた涼子が、不意に顔を上げると慌てて視線を美奈子に向けるのだった。

美奈子はいつの間にか良樹に抱かれたままスヤスヤと眠っていた。

『美奈子ちゃん寝ちゃいましたね…』

良樹は声を抑えながら涼子を見て話を続けた。

『そしたらこうしましょう。俺がペットショップの閉店までに来なかったらペットキャリーをお姉さんの動物病院に預けておいていただけますか?』

『あっ、それもいいですね。ではそうしましょう』

涼子も良樹の提案に従った。

そんな会話をしながらのんびり歩いた、ほんの15分。

良樹の家である集合住宅の建物が見えてきた。

時間は夜の10時になろうとしていた。

良樹の家に着く前に二人に沈黙が訪れた。

『あの…』
『あの…』

数十秒の沈黙のあと、二人はほぼ同時にお互いを見て声ををかけた。

二人は照れくさそうにしたが、凉子が「どうぞ」と言って良樹の言葉を待った。

『あの…自宅はここからまだ歩くのですか?もし遠いようでしたら、自宅の近くまでご一緒させていただければ俺も安心できるのですが…もう遅い時間ですからね。女性の一人歩きは俺も心配なので…』

良樹が言い終わったとき、二人は良樹の家の前に着いたところだった。

『ありがとうございます。ここから5分もかかりませんので大丈夫です。
松原さん、今夜は娘の喜ぶ顔を久しぶりに見た気がします。
ありがとうございました。
蛍のこと…嬉しかったです。来年ご一緒したいです』

涼子ははにかんだ笑顔を良樹に向けた。

『良かった~。ちょっと余計なことだったかな~、なんて思ってました』

『余計なことだなんてとんでもないです。子連れになりますが…来年おねがいします』

『美奈子ちゃん、何故か俺を気に入ってくれてるみたいだから、俺も来年の蛍見物は今から楽しみです。しかも美人のママが一緒なんて…、あっ、俺、松原良樹といいます。では、明日宜しくお願いします』

そう言って、良樹は眠ってる美奈子をそっと涼子に預けた。

この時、涼子の髪の良い香りが良樹の鼻を擽った。

涼子は良樹から美奈子を抱き上げ、ベビーカーに乗せて良樹に向き直った。

『ありがとうございました。私は桜木涼子といいます。
明日残業でしたら姉のところにペットキャリー置いておきますね。では、今夜はこれで。
ボディガードありがとうございました』

涼子はにっこり笑ってお辞儀をした。

『いえいえ、おやすいごようです』

『じゃあ、おやすみなさい』

『はい、おやすみなさい…』

涼子の髪の良い香りにクラっとした良樹は、別れ際の涼子の笑顔に止めを刺された。

良樹は涼子の姿が見えなくなるまで涼子の後ろ姿を見送っていた。

そして曲がり角に差し掛かり、振り返る涼子は街灯の下で良樹に大きく手を振っていた。

そして良樹は魂を抜かれたように、凉子が見えなくなってもその場から動かなかった。

『……なんか…久々にときめいちゃったよ…俺…。長い間独身でいると女性の髪の匂いは刺激的だな…。危険だ…。こういうとこで男は勘違いするんだろうな…きっと…』

涼子を見送った場所に立ち尽くしたまま、ぶつぶつ独り言を言う良樹。

しかし、我にかえった良樹は小さくガッツポーズをきめた。

その中でもう一人の自分が「浮かれるな」と釘を指す。

問題点はジェネレーションギャップだ!

しかし、明らかに浮かれている良樹は自分の部屋に向かう時、階段を一段飛ばして駆け上がろうとして、階段を踏み外した。

やっぱり、問題点はジェネレーションギャップだ、と思う良樹だった。



アパートに帰った涼子は涼子で、良樹にときめいてしまったことを亡き夫に謝っていた。

しかし、知り合ったばかりの良樹に亡き夫を重ねる自分と、良樹に対する美奈子の振る舞いを見て笑顔になる自分がいる。

そして亡き夫を愛するもう一人の自分がいる。

遅い晩御飯を作りながら、そんなことを考えて塩と砂糖を間違えて料理を失敗する涼子だった。




つづく。。。



どもです(*゚▽゚)ノ♪

更新遅くなりました😃💦

お待たせしました、の人間になった猫更新♪


良樹と凉子が徐々に近付いてきました♪

しかし、二人の中のもう一人の自分が、事を荒立てようとしています😃💦

涼子の気持ちは分からなくもないワタクシ。

ジェネレーションギャップがなんだ!そんなもん気にしないの!と良樹に言いたいワタクシではありますが…。

強引な良樹にはしたくない私と、あと一年は夫を愛してあげてほしい、と涼子に願う私がいたりします(笑)

さてさて、今後どういう展開になっていくのでしょうか♪

お楽しみに~♪

今日も最後までお付き合い
ありがとうございました♪

また来てね♪(@^^)/~~~


今日の選曲♪
【even if】平井堅


いつも応援ありがとうございます♪
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テーマ : ショート・ストーリー
ジャンル : 小説・文学

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