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想起…3

2019.12.06(04:08) 404


大型スーパーで偶然出会った、恵美と仲の良いクラスメイト希美(のぞみ)の母親に、料理に使うための出汁の作り方を教わった恵美。

望美の母親との別れ際には笑顔で手を振っていた恵美だったが、希美の母親との買い物に自分の母親、冴子の想い出を重ねていた恵美の胸には、次第に寂しさが込み上げていた。


それでは、想起…3
本編へお入りください🍳🔪🎽

🍳※※※※※※※※※※※※※※🍳


新藤恵美は、大型スーパーでクラスメイトの希美の母親と別れ、希美の母親に自分の母親の記憶を重ねていたことで、まだ中学3年の恵美の胸に、何とも言えない寂しさが込み上げていた。

『お母さん……』

恵美は泣きながら、長い上り坂を自転車で立ち漕ぎし始め、寂しさを紛らわせるかのように一気に坂道を登りきった。

坂を登りきった所で、赤信号の交差点で立ち止まった恵美は溢れてくる涙を手の甲で拭っていた。

そのすぐ横に赤信号で止まった希美の母親の車が追い付いた。

『あっ、恵美ちゃんだ…えっ?泣いてる?』

信号が青に変わり希美の母親はゆっくりと車を走らせ交差点の少し先で車を左に寄せて停めた。

後ろを振り返ると恵美は自転車にまたがったまま、下を向いて涙を脱ぐっていた。

歩道を歩く人達は、泣いてる恵美を見つつ通り過ぎていった。

希美の母親は急いで車を降りて恵美の所へ駆け寄った。

『恵美ちゃん、どした?』

優しい声が聞こえて顔を上げた恵美は、さっきまで自分の母の想い出を重ねていた、希美の母親の顔を見たとたん恵美は声をあげて泣き出した。

恵美の家庭事情を知っている希美の母は、恵美がお母さんを思い出したのだろうと思い、本能的に自分の子供のように恵美を抱き締めていた。

『おばさん…おばさん…お母さん、会いたいよ』

『そっかそっか…うん、寂しいよね。そういう気持ちの時は気が済むまで泣くのがいいよ』

希美の母も人目を憚ることなく泣いてる恵美を抱き締めていた。

そして気持ちが落ち着いてきた恵美を、希美の母は車の助手席に乗せた。

『おばさん、ごめんなさい…』

恵美は希美の母に足止めさせたことを謝った。

『おばさんが勝手に止まったんだから、そんなこと気にしないの。それより少し落ち着いたかな?』

『はい』

『うん、そっか。今夜はひじきを作るんでしょ?』

『はい』

『出汁の作り方は大丈夫かな?』

『はい』

『出汁の出た鰹節の最後にしちゃいけないことは?』

『絞らないこと』

『よろしい』

テンポの良さに、恵美の顔に少し笑顔が戻った。

『恵美ちゃんなら、きっと美味しいお料理できるよ。ただ、これだけは言っておくね』

『はい』

『娘は母親の料理の味を継ぐものだけど、完璧は追求しないこと。
母親の味に近付けるだけで良いんだからね?あとは応用で自分の味を作ればオッケー。
はい、分かりましたか?』

『はい』

『よろしい。では今日の家庭科の授業はこれで終わりにします。それから宿題として、今度希美と家で遊ぶときは、ひじきを作ってくること。いいですね?』

『はい、分かりました』

『うん、良い返事。もう大丈夫ね。気を付けて帰るのよ』

『はい、おばさん、ありがとうございました』

希美の母は自転車に乗り遠ざかる恵美を、切ない思いで見送っていた。


希美の母は車を走らせ、10分ほどで自宅へ着いた。

部屋に入った希美の母、坂井美枝子(さかいみえこ)は、中学3年の希美のクラスの連絡表を取り出し、新藤恵美の父親の連絡先を見つけた。

そこには恵美の父親、武の携帯番号も記載してあった。

美枝子は自分の携帯から恵美の父親の携帯へ電話をかけた。

3回コールで武が電話に出た。

『はい、もしもし』

携帯に登録されていない番号に少々戸惑いを見せた武。

『おそれいります、新藤さんの携帯でよろしいでしょうか?』

『あっ、はい…新藤ですが』

『突然お電話して申し訳ありません。私、⭕⭕中学の恵美ちゃんと同じクラスの坂井希美の母ですが…いまお時間大丈夫でしょうか…』

恵美の名前が出たことで慌てる武。

まだ仕事中で同僚に自分の仕事を任せるような武の声が美枝子の携帯から聞こえていた。

『もしもし、すみません。時間大丈夫にしました。それで娘の恵美の事で…何か…』

『お仕事中すみません。実は…』

美枝子は、スーパーでのこと、そして今しがた恵美が母恋しさに泣いていたことを恵美の父親、武に話した。

『そんなわけで、差し出がましい事とは存じますが、お父様にもお伝えしておいた方が良いと思いまして…』

『そんなことがあったのですか…いや、教えていただいてありがとうございます。恵美も、まだまだ寂しさが拭いきれないのは分かっているつもりですが…。娘のこと、お気遣いありがとうございました』

『私も、恵美ちゃんと同級生の娘が居ますので、恵美ちゃんの気持ち、何となく分かるんです。
新藤さんは、お仕事もあるので大変だと十分承知しております。
幸い、うちの娘と恵美ちゃんは仲が良くて、よくうちにも遊びに来てるので、私もできる範囲で恵美ちゃんの心のサポートができたらと思っています』

『お心遣い、本当にありがとうございます。
男親の私一人では娘に対しても学校のことにしても何かと気が付かないことも多くて…。
今日は早めに仕事終わらせて娘の好きなケンタッキーでも買って帰ろうと思います。
今日は、娘のこと…ありがとうございました』

『どうぞ気になさらないでください。私もお節介なところがあるので。ではこれで失礼します』

『はい、ありがとうございました』

そう言って、武はいつものように、相手が電話を切るのを確認してから携帯をポケットにしまった。


その頃、恵美は家に戻り母が使っていたエプロンを着けて出汁を作る準備をしていた。

『よし、これでおばさんの教えてくれた通りに作れば、美味しい出汁ができるはず』

恵美は教わった通りの順番で、ひとつひとつ丁寧にこなしていった。

『昆布のアクを取りながら最後に鰹節をゴソッと一掴み、昆布の出汁のお鍋にバサッと入れて、弱火で鰹節がお鍋の底に沈むまでこまめにアクを取りながら2分くらい待つ。キッチンタイマー2分セット♪』

そして2分セットのキッチンタイマーが鳴った。

『この二つのザルの間に、キッチンペーパーは挟んであるから、ザルをボウルに引っ掻けて…ここに昆布と鰹節の出汁を流し込めば完成。
よいしょっ、お鍋が重くて手が震える…こぼすなこぼすな~』

お鍋の出汁をゆっくりとザルに流し込む恵美。

『おー、出来た♪透明感のある色と香り…味はどうかな…』

スプーンでほんの少し掬い出来立ての出汁を口に入れた。

『ん~…美味しいけど薄味?最初はこれで良しとしよう。それからもう一つのボウルにお水をたっぷり入れてひじきを水で戻す…30分か。その間に油揚げとニンジンを切って…』

料理本を見ながらの始めての料理に挑戦する恵美。


悪戦苦闘の次回へ続きます(*^^*)b


今日も最後まで読んでいただき
ありがとうございました😆💕✨

【あいたい】林部智史

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移り行く日々の徒然に…


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想起…2

2019.12.03(22:07) 403

亡き母親、冴子の料理の味を懐かしみ、時々無性に食べたくなることがある中学3年の新藤恵美。

母、冴子の料理の味の記憶を頼りに母の味を自分のためにも…

そして毎日夜遅くまで頑張って仕事をしている父親、武にも…

妻の料理の味であり、娘としての母親譲りの味を外食ばかりしている父、武にも食べてほしいと奮闘努力していくお話です。

それでは…前回の続き、本編へお入りください♪


🍳※※※※※※※※※※※※※※※※※🍳


翌朝、武はいつにも増して気持ちの良い
朝を迎えた。

昨夜の娘の健気な言葉に、不覚にも涙を見せてしまったが、素直に育ち少しずつ大人になっていく娘の恵美は、親として守っていくべき宝である事を、改めて心に刻む武だった。

水を飲みにキッチンへ行った武は、綺麗に片付いている食器と綺麗なシンクに目が止まった。

今までは、あまり気に留めていなかったキッチン周りが明らかに昨日とは違っていた。

まるで冴子が居るかのように、キッチンにあるべきものは、収まる場所にそれぞれが収まっていた。

そこへ、恵美が2階から降りてきてキッチンに入ってきた。

『あれっ?お父さんおはよー。どしたの、いつもより早起きだね』

『おっ。おはよー恵美。なんだか目覚めが良くてな。水飲みに来たら昨日と違って、母さんが居たときみたいにキッチンがやけに綺麗だから見とれちゃったよ』

『うん、今日からお母さんの料理を真似て作るから、お母さんがいつも綺麗にしていたキッチンにすれば、少しでもお母さんの料理の味に近づけるかなって思って…。
でも、本当のこと言うと…一昨日、夢の中でお母さんに言われたの。
キッチンは綺麗にしておかないと美味しい料理も作れないよって…』

『そうか…。そういえば、お前が生まれる前に、お母さんは料理も片付けるのも手を抜きたくないって自分で言ってたことあったな…』

『そうなんだ…あたしも、そんな風にできるかな…』

『うーん、恵美はそこまで気にすることないと思うぞ。母さんは、それが母さんのやり方であって、恵美は恵美のやり方でいいんじゃないか?料理は母さんを真似ていいと思うけどな。
要は仕事と一緒で手を抜かなきゃ良いんだと、父さんは思うぞ』

『どういうこと?』

『仕事で言えば、本来やらなければいけないことを省いちゃうのが手抜きって言われるんだよ。
本来やらなければいけないことを省けば、良い品物は作れないし品質も落ちるからな。
食器も綺麗に洗わないと料理もできないだろ?
まぁ、中には手を抜いても平気なこともあるけどな。
要は、手を抜いていいところと手を抜いてはいけないところの見極めだと思う…』

『じゃぁ、料理で言うなら塩コショウ少々を塩だけしか入れないって言うこと?』

『それは手抜きと言っていいだろうな。味も微妙に変わりそうだし。
料理で手を抜いても、あまり問題じゃないのは出汁だろうな。
母さんは出汁を昆布と鰹節で作ってたけど、ほんだしとか昆布つゆは立派な出汁になるみたいだからな。
それは母さんも言ってたぞ。
料理ではこういうところが手を抜いても良いところじゃないかな』

『そっかー…。なんかよくわかったよ』

『うん、あまりお母さんのやり方に拘らないで、恵美は恵美のやり方でお母さんの料理の味を見つければいいよ。
仕事も料理もプロセスは大切だけど、応用も利くところだからな恵美は恵美のやり方を見つければいいよ。
料理で使うものや欲しいものがあれば遠慮なく父さんに言えよ。
母さんの料理の味は、恵美よりは知っているつもりだから惜しみ無く協力するぞ。楽しみにしてるよ』

武は恵美の頭に手を乗せて、指先だけでポンポンと恵美の頭を軽く叩いた。

恵美は、父親の大きな手の優しさに何とも言えない心地好さを感じたのだった。


その日の夕方、恵美は何時も買い物をしてる近くのスーパーではなく、少し離れた駅前の大きなスーパーへ自転車で向かっていた。

長い上り坂を上り長い下り坂を下ったところに大きなスーパーがあり、近くにはドラッグストアやスーパーの2階には100円ショップがあり、恵美は母の冴子と時々買い物に来ていた場所だった。

恵美はスーパーの入り口で、かごをカートに乗せて店内に入っていった。

このスーパーに恵美一人で入るのは2回目だった。

一度目は、母の冴子が風邪で寝込んだときドラッグストアで薬を買い、その足でスーパーに寄り母に頼まれたものを買うために一人で入った事があった。

その時はベテラン主婦に圧倒され、母に頼まれていたタイムセールの商品を買うことができなかった。

大型スーパーでの静かな戦いに敗れたのである。

家に帰って、恵美はその事を母に話したら母はクスクス笑いながら洗礼を受けたのね、と言った。

その後でタイムセールの商品ゲットの秘訣を教わった恵美。

次こそは、と虎視眈々とその機会を狙っていたが叶わなかった。

恵美が家で宿題や勉強をしている間に、母の冴子は大型スーパーへ行き狙いの商品を手に入れていた。

そして母の買い物に着いていったときにはタイムセールの無い日だったり…。

今となっては、母との買い物も出来なくなってしまった。

そんなことを思い出していた恵美は、今朝の新聞広告のチラシを見て大型スーパーのタイムセールがあるのを確認していた。

狙いの商品はお刺身の盛り合わせである。

他にも揚げ物やお総菜、焼き肉一パック等あり、何れも値段が200円と激安。

タイムセールは午後五時半から…

完売と共に終了ということだった。

それぞれが一つのワゴンに乗せてありバラバラの場所で目隠しをされて配置されるのである。

どのワゴンに何があるのか買い物客には分からないので、それぞれのワゴンが配置される場所には、遠巻きに人だかりができていた。

午後五時二十五分…

調理場から続々とワゴンが店員によって運ばれて、タイムセールのスペースに配置されていった。

それが、買い物客にとってお目当ての商品なのか遠巻きに匂いを嗅ぎわけようとする人もいた。

恵美は母に教わったように、お目当てのものがお肉ならお肉売り場にあるとは限らない、お肉には野菜が付き物、だから野菜売り場に置かれることもあるんだよ、と言っていた。

『あたしのお目当てはお刺身の盛り合わせ…お刺身にはお醤油が付き物…。恵美は調味料売り場の横のタイムセール配置場所に陣取っていた』

店内アナウンスでタイムセール販売開始と共に店員がワゴンに被せてある目隠しを外すと同時に溜め息と喜ぶ声が入り交じっていた。

一人一つずつ店員が手渡しでお客さんに渡していくので混乱は無い。

お目当ての商品ではなかったお客さんも諦めてタイムセールの商品を受けとるのである。

そんな中、恵美も溜め息をついた一人だった。

ワゴンの中には天ぷらの詰め合わせが並んでいた。

『外した…。でも二百円でこの量の詰め合わせはお買い得に間違いない』

そんなことを思いながら恵美は一番最初に天ぷらの詰め合わせを店員から受け取った。

どうやらお刺身の盛り合わせは魚の売り場のタイムセール場所だったと後で分かった。

と言うのも、仲の良いクラスメイトの母親と店内で鉢合わせになったからだ。

『あら、恵美ちゃん』

『あっ、希美ちゃんのお母さん』

『恵美ちゃん、ここまで買い物にくるんだ』

『はい、タイムセールでお父さんにお刺身買うつもりだったけど外れちゃいました』

恵美のかごの中をチラッと見た希美の母親はガッカリしている恵美を見て、恵美の健気な気持ちに心を打たれた。

『恵美ちゃん、よかったらおばさんのお刺身と交換しようか?』

『えっ、そんな…悪いです』

『ここのタイムセールは何が当たるか分からないからね。おばさんはお惣菜狙ってたけど外れてお刺身だったの。値段は変わらないから恵美ちゃんが良ければ交換しよう』

恵美の顔が笑顔になった。

『本当に良いんですか?』

『うん、遠慮しないで良いんだよ。じゃ、これお刺身』

『ありがとう、おばさん』

そう言って恵美は希美の母からお刺身の盛り合わせを受け取り天ぷらの詰め合わせをクラスメイトの希美の母親に渡した。

『おばさん、ありがとう』

そう言いながら、恵美は一つ疑問に思っていることを希美の母親に聞くのだった。

『そうだ、おばさんに教えてもらいたいことがあるんだけど…』

『何?恵美ちゃん。おばさんの知ってることなら教えてあげるよ』

笑顔で応える希美の母。

『あの…お料理のことだけど、出汁って昆布と鰹節で作るのと、ほんだしとか昆布つゆ使うのはどっちが美味しいのかって言う事なんですけど…』

『わぁー、恵美ちゃん出汁から作るんだ。そんなに難しくないから教えてあげるね。昆布と鰹節で作る出汁はお世辞なく美味しいから』

そう言って希美の母は恵美を連れて出汁の置いてある場所へ移動した。

『あったあった。この昆布と鰹節で美味しい出汁ができるよ』

商品を手に取り希美の母親は恵美に見せた。

『ありがとうございます。お母さんも出汁を作ってたからお母さんの味を思い出しながらお料理作ろうと思って…』

恵美の言葉に、同じ年の娘を持つ希美の母は、胸が締め付けられた。

『分かった、おばさんが教えてあげるね。大きな器とザルが大小使うけど家にあるかな?あとキッチンペーパーも…』

『えっと…ザルは一つしかなかった気がする。キッチンペーパーも残り少ないです』

『じゃあ、昆布と鰹節買ってお買い物済ませたら2階の100円ショップに行こう。恵美ちゃん時間大丈夫かな?』

『はい、大丈夫です…でも、おばさんもこれから夕飯の支度ですよね?』

『おばさんも大丈夫だよ』

『なんか…突然変なこと聞いちゃってごめんなさい…』

『恵美ちゃん、気にしないで。おばさんも急いで買い物済ませてくるからレジ出たところで待ってて』

『はい』

恵美は、クラスメイトの希美の母に返事をしてレジへ向かった。

10分も経たないで希美の母親が恵美の待っているところに来た。

『恵美ちゃん、お待たせ。2階の100均行こ』

『はい』

二人は階段で2階の100円ショップに入っていった。

希美の母は、大きなザルと少し小さめのザルを手に取り恵美に見せた。

『この大きなザルにキッチンペーパーを満遍なく被せて、小さいザルを大きなザルに嵌め込むの。この重ねたザルを大きな器の上に乗せてザルの中にできた出汁を流すと綺麗な出汁が器に溜まるのよ』

『そっかー、だからザルが二つ必要なんですね』

『うん、そう言うこと。さっき買った昆布は袋から出して、固く絞った布巾で表面の汚れを落とさなきゃダメよ。
そして、お鍋に1リッターくらいの水を入れてその中に濡れた布巾で拭いた昆布を入れてそのまま一時間くらい置いておくの。
一時間くらい経ったら、コンロにお鍋を乗せて火を着けて弱火にするの。
お水が沸騰する少し前に、お鍋から昆布を箸で取り出す。
そして沸騰したら火を止めるのよ。
そしたら次に鰹節を片手にゴソッと一掴みで手に取って昆布を取り出したお鍋の中に入れて、鰹節がお鍋の底に沈むまで2分くらい待つの。
そして、このキッチンペーパーを挟んだ2つのザルを容器の上に引っ掻けて出来上がった出汁を流し込む。これで綺麗で美味しい出汁が完成。
ザルの中に残った鰹節は絞っちゃダメよ。エグミが出ちゃうから美味しくなくなっちゃうの』

恵美は希美の母に教えてもらったことをメモ帳にそのまま書き出していた。

そして書き終わったメモ帳を希美の母親に見せた。

『おばさん、これでいいかな…』

恵美は照れ臭そうに、メモ帳を希美の母親に見てもらった。

『オッケー問題なし。もし分からないことがあったら希美の携帯に電話して。作りたいお料理とかあったら遠慮なく聞いてね』

『はい、おばさん。ありがとうございました。今夜はひじきを作ってみようと思ってます。
それがお母さんの味に作れたら次は肉じゃがを作りたいと思っています。
審査員はお父さんだけど…』

『ふふっ。煮物から入るなんて良いお嫁さんになれるぞ。恵美ちゃん。お父さんが審査員ならお母さんの味に近付けると思うよ。頑張ってね』

『ありがとうございます。また分からないことがあったら教えてください』

『まかせて♪』

希美の母親は優しい笑顔で恵美にブイサインで応えた。

恵美は希美の母親にお辞儀をして手を振り自転車で家に向かった。



強力なアドバイザーができたことと、久しぶりに母親と買い物をしたような気分で家に帰る間に、自然と笑みが溢れる恵美だった。




駄洒落のように終わり続くのであります(*^-^)

情景を細かく描写しようと文字にすると、文字数が自然に多くなってしまいました。

あまり長いお話になるのも、読んでいただく方に負担をかけてしまうので、続きはなるべく簡潔になるよう努力します。


最後まで読んでいただき
ありがとうございました😆💕✨

【ユー・レイズ・ミー・アップ】
ケルティック・ウーマン

優しさに染められた面影…
いつも傍にいるような想いは
記憶の中の優しい貴女の笑顔…

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想起…

2019.12.01(08:08) 401


新藤恵美(しんどう えみ)は中学3年。

母、冴子(さえこ)が病気で亡くなって一年が過ぎた。

父親の武(たけし)と家事を分担しながら日々を送っていた。

武は掃除担当。

恵美は洗濯と料理の役割分担。

料理を始めた頃の恵美の手先は、野菜を切るのも危なげだった。

母を亡くしてから、恵美は半年ほどほか弁やコンビニのお弁当が夜の主食だった。

学校に持っていくお弁当は、なんとか自分で作って持っていっていたが、おかずはコンビニのお総菜がほとんどでレンジで温めるだけのものだった。

時々恵美は、母の作ってくれたお弁当が恋しくなり無性に食べたくなることがある。

武も時々は娘のために、馴れない手つきで恵美のお弁当を作ろうとするのだが、卵焼きは黒焦げになり、野菜を切れば自分の指も切っていた。

そんな父を見かねた恵美。

『お弁当は、あたしが頑張って早起きして作るから…。お父さんは仕事で帰りが遅いんだから朝はゆっくりしててよ。それから夜のご飯もあたしが作れるように頑張るから』

『その方が良さそうだな…』

武は切れた指を見せながら、自分の不甲斐なさに少々落ち込みながらも、恵美に任せることにした。

恵美が晩御飯を作るというのも、母の味を再現したいと思ったからだった。

そうは思いながらも恵美は、あまり母の料理しているところを見ていなかったし、宿題や予習をしている間に晩御飯はできていた。

『お母さんに料理の味付けとか聞いておけばよかったな…』

そんなことを思いながらも、母親の料理を思い出していた。


そんなある日の夜…

宿題を終えた恵美は、母の料理のメニューをノートに書き出していた。

『えーと…、カレーとハンバーグ、それから肉じゃがとひじき、あとは…ロールキャベツにきんぴらごぼう、カジキマグロのネギを乗せた煮付けと…あっ、すいとんすいとん。これは絶対お母さんの味で作りたいなー…あとは…』

あれやこれやと母の料理のメニューを思い出す恵美。

その時、一階の方から武が二階の恵美に声をかけてきた。

『恵美ー、ただいまー』

『お父さん、お帰りー』

部屋の戸を開けて父に応える恵美。

恵美は、母の料理のメニューを書いたノートを持って一階に降りていった。

『お父さん、お帰り』

『ただいま。ご飯ちゃんと食べたか?』

『今日は、そこのスーパーで生ラーメンとチャーシューとメンマとコーンと海苔を買ってきて全部トッピングで食べた。
美味しかったよ。お父さんは食べてきた?食べてないならラーメン作るよ』

『おっ、美味そうだな。
実は父さん、今日は晩飯食べてないんだよ。だから酒のつまみとカップラーメン買ってきたんだけど…
恵美のラーメンの方が美味そうだから作ってくれるか?』

『オッケー、お風呂入ってからにする?
それともすぐ食べる?』

『先に風呂に入るよ』

『わかった、準備しとくね』

『うん、わるいな』

恵美が冴子の使っていたエプロンを首から掛けて後ろ手にエプロンの紐を結んでいるところを何気なく見ていた武。

ほんの一瞬、恵美が冴子のように見えた。

後ろから見ていると、紐を後ろ手に結ぶ仕草が武の目には冴子によく似て映っていた。

『親子は仕草も似るのかもしれんな…』

そんなことを思いながらも風呂場へ向かう武だった。


ほどなくして、お風呂を出た武はキッチンへ行き、冷蔵庫からビールを取り出しながらキッチンに立っている恵美を見て、ハッとした。

キッチンに立っているのが冴子に見えたからだ。

目眩がするような感覚に襲われた武は、一度思いきり目を閉じて、首を振ってからもう一度恵美を見た。

そこにいるのは紛れもない、冴子の面影を持つ恵美だった。

武の視線に気が付いた恵美。

『どしたの?お父さん?』

『あぁ、疲れてるのかな…ちょっと目眩がして…』

『えー!大丈夫?お父さん?』

『大丈夫大丈夫、ほんの一瞬だから。それより美味そうな匂いがしてきたな。あー、腹へったー』

そう言いながら、武は部屋に戻りテレビをつけてテーブルの前に座って缶ビールのプルトップを開け少し多目の一口を飲み込んだ。

そして飾り棚に置いてある冴子の写真を見上げた。

『冴子…お前が居なくなってもう一年が過ぎたんだな…。恵美も何だかんだ俺に協力してくれてるんだ。
俺も助かってるよ。
恵美のやつ、少しずつお前に似てきて親父の俺もビックリするくらいだよ。
今は二人で上手くやってるから心配すんなよ…』

そう言いながら、武の心は無意識のうちに、冴子との想い出を振り返っていた。

そこへ、恵美がラーメンのどんぶりをおぼんに乗せて両手で持ちながら、そろりそろりと部屋に入ってきた。

『お父さん、できたよー。恵美亭特製とんこつ醤油ラーメンだよー。餃子はサービス♪』

テーブルに置かれたおぼんには、餃子五つと具沢山の熱々ラーメンが乗っていた。

具の配置もコーン、海苔、チャーシュー、メンマ、玉子が綺麗に分けられて麺の上に乗っていた。

これも母親譲りの料理法だな、と思った武。

『恵美、見るからに美味そうだなー』

『へへー、美味しいのは見た目だけじゃないんだからね』

『分かってる分かってる、いただきます‼』

フーフーしながら武はレンゲでスープを一口啜った。

『美味い美味い!』

『美味しいでしょー。お母さんが作るのはちょっと一手間愛情入りなら、娘のあたしは感謝の一手間だよ』

『感謝?俺にか?』

『当たり前でしょ。あたしがお父さんの他に誰に感謝するの?お父さんが一生懸命働いてくれるから…あたしは学校にも行けるし、何でも食べられるんだから。
それはそうとお父さんは、お母さんの料理で何が好きだった?』

武は涙が溢れそうになるのをグッと堪えた。

『恵美、そんな風に思っていてくれたのか…ありがとう。お父さん明日から百万馬力で頑張るぞ』

『百万馬力って…あたしには今のままのお父さんででいいんだから。元気でいてくれるのが一番だよ。それよりお母さんの料理で何が好きだったの?』

『肉じゃがとひじき…』

『肉じゃがとひじきね。明日の夜作ってみる。
あたし…お母さんの味を思い出したいんだ。
今日、お料理の本買ってきたの。お母さんの味を思い出しながら作ってみる』

武は堪えていた涙が止められなくなった。

武の目から堰を切ったように涙が溢れ出した。

『あたしが寂しいのと一緒でお父さんも寂しいんだよね…。だから、お母さんの料理の味をお父さんにも食べてほしいと思って…。
最初は無理かもしれないけど…お母さんの味を思い出しながら作ろうと思ってる…』

恵美も泣いていた。

『ありがとう、恵美…』

武はそれだけ言うのが精一杯だった。





続くのです(*^^*)b


このお話は、以前私が書いた
【いつものように…】という、私が書いたショートストーリーへと繋がるお話で、
前記事の【重なる想い…】から思い付いて書きました。

【いつものように…】を先に読んでいただいても、今回のお話が完結してからでも構いませんので、お暇なときにでも読んでいただけたら嬉しいです♪


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