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異世界の忘れ物…

2019.10.01(01:13) 342


『ねぇねぇ美樹』

『なぁに?』

『あたし凄いもの見つけちゃった』


細野雪枝と岡嶋美樹は、幼なじみで同じ高校に通っていた。それぞれ違う部活に入っていて、同じ時間に終わった二人は部活を終えて家に帰る途中だった。

二人とも家は近く、帰る方向は同じで学校からいつも通学に使う最寄りの駅へと歩いていた。

その途中で、雪枝は美樹に凄いもの見つけたと話始めた。


『あのね…まだ誰にも話してないことなんだけどさ…』

『むむっ、雪っ!まさかあたしを差し置いて彼氏できたとかの話じゃないでしょうね』

美樹は雪枝の話を遮り、雪枝の前に立ち塞がってウルトラマンが怪獣と闘う時のように指を伸ばし両手を前に突き出した。

『違うってば。凄いものって言ったんだけど?それに、その構えはあたしとやるってんですかい?』

雪枝も美樹と同じように闘うポーズを見せた。

『いや、あたしは平和主義なので彼氏ができた話じゃなければユキモンとは闘わないのだ。で?凄いものって何?露出狂の変態さんが目の前に現れたとか?』

美樹はケラケラ笑いながら言った。

『ユキモンってなんだ。てかさー、あんた小さい頃からお母さんに言われてたよね。人の話はちゃんと聞きなさいって』

『はいはい、分かりました。ちょっとふざけただけじゃん。で?凄いものって何?ユキモン?』

美樹は笑いを堪えるように雪枝を見ながら口を手で塞いでいた。

『ユキモンはやめぃ!露出狂でも変態でもないわい!』

『じゃぁ、何見つけたの?』

『おぬし、やっとまともに聞いてくれるか…。実はね…』

雪枝の声が少し低くなった。

『うん、なになに?』

美樹も興味を示すように小声で言いながら耳に手を当てて雪枝に体を寄せた。

『あのね…』

『うん…』

『…どこでもドア見つけた』

美樹の耳元で囁く雪枝。

『へ…?どこでも……ドラえもん?』

予想外の雪枝の言葉に目が点になる美樹。

『ど、ドラえもんじゃないけど、不思議なドアがあるんだよ…』

自分で言いながら、幼じみたことを言って恥ずかしさから顔が熱くなるのが分かった雪枝は美樹から目を反らし田んぼを挟んだ先にある山を見つめた。

『ユキモン…聞いて?うちら高校三年生なんだからさ…。現実逃避は大人になって人生に疲れた時にしようではないか…ユキモン』

美樹は雪枝をなだめるように言った。

『美樹之助…。我らはまだ子供…都市伝説さえ信じて疑わないお年頃なのだ。何も言わず神妙に着いて参れ』

昨夜テレビで観た時代劇に、一時的に影響された雪枝は武士のように声を低くして、美樹に着いてくるよう手を引っ張った。

『ちょっと雪枝!どこ連れてくのよ!』

『あの山の上!話すより見た方が早いから!』

田んぼが広がるその横に、緑が生い茂る70メートルほどの山があり、雪枝は美樹の手を引っ張り、田んぼを抜けて山に向かった。

山に向かう途中で、雪枝は美樹に自分が見たことを話した。


『あの山に登ると途中に凄く汚れた鳥居があってさー』

『えー?この山に鳥居なんかあったっけ?』

『うん、あたしもこの山に鳥居があったの知らなかったんだー。
でもね、この前ウサギ見つけて追いかけていったらお侍さんみたいな格好した人がいてさー。
少し離れたとこから見てたんだけど…なんかオロオロしてる感じで何か探してたみたいで…。
そのお侍さんみたいな人が暫く上を見上げてるから、私もそのひとの視線の先を見たら鳥居の上の部分がが見えたんだ。
下の方は葉っぱや雑草で見えなかったんだけど、その人雑草を掻き分けて鳥居を潜っていったの。
その人の姿が見なくなってから、あたしも鳥居のとこまで行ったのよ。そしたらさー…』

ここまで一気に話してから、雪枝はここで勿体振らせの一呼吸をおいた。

しかし、人の話を最後まで聞かない癖のある美樹が雪枝の一呼吸に間髪入れずに話し出した。

『あやかしが名を返せ…友人帳を渡せ…とか言う展開?』

『違うから…。でもさー最初は友人帳を狙ってたにゃんこ先生、今はタカシを守ってくれる。普段は、お酒大好きおっさん猫だけど、あやかしに変わったときのギャップがいいよねー…。タカシがあやかしに襲われたとき何処からともなく現れるにゃんこ先生。
夏目ー!お前は何故、何時もどうでもいいあやかしに関わるのだ。めんどくさいやつだ…。とか言いながらもタカシを助けるにゃんこ先生…おっさん猫だけどカッコカワイイイって感じだよね』

『うんうん、にゃんこ先生も良いけど、あたしは断然祓い屋の名取ファン♪』

アニメ夏目友人帳を愛してやまない二人だった。

『えっとー…どこまで話したっけ?てか、何で夏目友人帳の話になった?』

そう言いながら、人の話は最後まで聞け、と言わんばかりに雪枝は美樹の左右のほっぺたを両手で引っ張った。

『ごべんだざい…。続きをどーぞ…』

反省する美樹。

『それでね、あたしが鳥居を潜ったとたん、クラっと目眩がしたみたいになって、ほんの数秒目を閉じてたの。そしたらさー…』

雪枝は、またも勿体振らせの一呼吸。

『友人帳を渡せー、名前を…』

またも美樹が口を挟むのを、美樹のほっぺたを摘まんで阻止する雪枝。

『それで目を開けたら、目の前に田んぼがあって周りには古民家みたいな家がぽつぽつ建ってたんだ。
うしろをふりかえるとあたしが潜った鳥居があって、鳥井の潜る部分だけに田んぼが見えてうちらの学校も見えてた。
それでね、あたしのすぐ横に古い家があったの。
ちょっと怖かったけどその家の引戸を開けてみたら、砂漠があって遠くにピラミッドが見えてた。ビックリしたよ…。
慌てて戸を閉めてから離れて、家の横を見たけど家の横は伸び放題の雑草しか無かったの。
もう一度戸を開けてみたら、今度は日本以外の何処かの国の古い立派なお城が目の前に見えてたんだよね…
これってなんだと思う?美樹…』

美樹は、雪枝の話を最後まで聞いてから雪枝のおでこに手を当てた。

『ユキモン、熱は無いみたいだけど…山に入って毒キノコでも食べちゃった?白兎を追いかけて異世界に行くなんて不思議の国のアリスか映画のマトリックスくらいじゃん』

美樹はそう言いながらあることを思い出した。

『ちょっとまって…ねぇ雪、それ見たのいつ?』

『三日前だよ。何で?』

『待ってね』

美樹はそう言ってカバンから携帯を取り出して何かを調べ始めた。

『どしたの?何調べてるの?』

雪枝は美樹の携帯を除きこんだ。

『雪、三日前…CERN(セルン)の事故があった日だ…』

美樹は携帯を握りしめて目の前の山を見上げた。

『事故?セルンて何?』

雪枝は不安げに美樹を見た。

『うん、あたしも詳しいことは分からないけど…。
ネットのニュースでセルンが小規模の事故を起こしたって言ってた。
セルンてスイスとフランスの国境を跨いでる物理学の研究所で原子核の衝突実験してるところなの。
宇宙の起源とか研究してるとこ。
そこで三日前事故があったみたい。
どこまで本当のことか分からないけど、陽子の衝突実験とかやってるんだって。
小さなブラックホールができる可能性もあったり、時空に歪みをもたらせる危険な実験で、他の物理学者とかから宇宙を破壊するかもしれない危険な実験だって言われてるんだって。
実際、セルンの近くにあるパラレルワールドは破壊されたかもしれないって言われてるらしいよ』

『なんかよく分からないけど…パラレルワールドやブラックホールは知ってる。あたしが見たのもパラレルワールドなのかな…』

『雪が見たのはパラレルワールドとは違うかも…。もし雪が見た世界がセルンの事故のせいだったとしたら、雪はタイムスリップしたのかも…雪、あんたとても危険な所に行こうとしてたのかもね…違う世界に行って戻ってきたら浦島太郎みたいに何十年も経っててユキモンはおばあちゃんになりましたとさ。みたいなことになるかもよ?』

『タイムスリップだとすると、あたしが見たお侍さんは…過去から来た人になるのかな…。
なんか鳥井のところに行くのが怖くなっちゃった。行くの辞めようか…』

『そだね…今日は日も暮れてきたし辞めとこうよ。日曜日にでも、あたしのクラスの友達とユキモンのクラスの友達誘って行ってみようよ』

『そうしよっか!あたしもピラミッドはもう一度見てみたいし』


二人は目の前の山を見上げながら、そう言って駅へと向かった。



続く…

(注)ストーリーはフィクションで実際に起きたものではありません。
ただ、原発のように何かあったときに人の手で抑制出来ないものには手を出すべきではないものだとも思うのであります。


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移り行く日々の徒然に…


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  1. 異世界の忘れ物…(10/01)