👻海辺のバンガロー 其の四👻
前回までのあらすじ…
気になる方はこちらからどうぞ♪
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【海辺のバンガロー 其の参】
(あらすじ)
雄二、浩二、悟志、絵理、美香の5人は、会社のお盆休みを利用して仲の良い5人で一夏のバカンスを楽しむために、海辺のバンガローを借りたのだが…
そこには幽霊が出る、という噂があったが皆で相談した結果とにかく行ってみようということになった。
一方で海辺のバンガローに住み着くお化け達はバンガロー手前で5人の行く手を阻もうとするのだが…
お化けの一人は5人に気付かれることなく雄二達男3人の手により無慈悲に崖から落とされてしまった。
一方、女のお化けは元彼に似ている悟志に一目惚れで、今にも天国へ行きそうな浮かれよう。
そしてバンガローに人間達を入れないように阻止するお化けの長老。
作戦を練り、5人を待ち受けるお化けの長老と新人お化け…
バンガローに着いた雄二達5人に待ち受ける恐怖とは…
それでは本編にお入りください👻
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部屋に荷物を入れて一息ついた5人は、部屋の柱にかけてある宿泊者用の落書き帳を見つけて、前宿泊者の書き込みを見ていた。
そこにはお化け達に怯える、それぞれの状況が刻々と書かれていた。
酒好きの悟志は、自分のビビリを誤魔化すためにビールを飲もうとコップに注ぐのだが小刻みに震える手はコップに注ぐ缶ビールがカタカタとコップに当たり奇妙な音をたてていた。
それを見ていた浩二が悟志をからかっていた。
そんな5人を天井裏に潜む新人お化けが、天井の節穴から見ていた。
『長老は、ここに隠れてあいつらを脅かせって言ってたけど…どうやって脅かせばいいんだ?』
まだお化けになったばかりの新人お化け。
人間を怖がらせる要領を得ていなかった。
『…あれ?そういえば長老何て言ってたっけ…飛びっきりの…何だっけ?味わせろ、とかなんとか言ってたような…』
新人お化けは初めての試みで人を驚かせる、という緊張感から長老から言われた言葉を忘れてしまった。
『味わせろって…何か食べさせるんだっけ…何を食べさせれば怖がるんだ?』
そんな思い違いなことを考えながら、新人お化けは再び節穴から部屋の中の5人の様子を伺うのだった。
部屋に置いてあった宿泊者のための落書き帳の恐怖に怯える書き込みを見た、雄二浩二達の5人は少々臆したが
まだ午後を廻った昼間ということもあり、気持ちを切り替えるのと空腹のため昼食の準備を始めた。
『そんな落書き帳なんて気にすんな。それより昼飯にしようぜー』
落書き帳を見ながら不安な顔になる美香と、怖いながらも興味津々な絵理を見て浩二が車から降ろした食材の入った袋を両手に持って皆に見せた。
『肉も野菜もたっぷりあるぜー。バーベキュー用の炭も網もあるから外で飯食おうぜ』
『おー、さすが浩二君。用意がいいねー。あっ、そうそう。俺の口には霜降牛肉しか合わないんだけど…ある?』
悟志は、わざとらしく上品ぶって顎に手を当てて浩二の顔を見た。
『何上品ぶってんだよ悟志は!んなもんあるわけねーだろ!全部スーパーの焼き肉用の肉だからな❗しかも30%オフの大衆向け焼肉だからな。霜降り以外、口に合わないんじゃ食べられませんね、悟志くーん♪』
肉のパックを両手に持って悟志の前で両手を広げ、奇妙なリズムで霜降り腰降りと歌いながらクネクネ腰振る浩二。
『うるせー!俺は美食家なんだよ!てかさ、浩二…何腰振ってんだよ…フラダンスみてーなことしてんじゃねーよ!ここはワイキキじゃねーんだぞ!』
そう言った悟志もぎこちなく腰を動かし、フラダンスと言うには程遠い奇妙な踊りだった。
『パトラッシュ…僕、何だかすごく眠いんだ…お腹すいたろ?ほらお食べ…』
浩二がいきなり膝まずいて両手に持った肉のパックを雄二の足元に置いた。
『おまえ、それフランダースの犬じゃねーかよ!ベタすぎるぞ!』
悟志がすかさず突っ込みをいれた。
『涙もんのラストシーンだぞ!みんな泣け!』
浩二が皆の顔を見た。
『それじゃ、そろそろ天使が空から舞い降りてくるのか…』
雄二が空を見上げた。
『涙のラストシーンには程遠い夏の空♪』
絵理が空を見て言うと…
『サーフボードで波に乗ってくる天使かも~』
そう言って、美香が波乗りのバランスポーズをみせた。
『おー♪今時の天使ははいからさんだな。夏はサーフボードで冬はスノボー、春と秋はスケボー天使かもな!』
浩二が言うと…
『いやいや浩二くん、天使には翼があるからボーダーとは限らんぞ。パラセイリングに熱気球、もしかしたら戦闘機に乗ってくるかもな』
そんな5人の馬鹿話を天井裏から這い出てきた新人お化けは部屋の窓のカーテンに身を隠し五人を脅かすタイミングを見計らっていた。
浩二が荷物の中を、がさごそと何かを探していた。
『雄二、タバコある?』
『あっ、部屋に置いたままだ。俺もタバコ吸いたいから取ってくるわ』
そう言いながら、雄二は玄関から部屋に入っていった。
部屋に入ろうとする雄二に、焦る新人お化け。
『えっ?この部屋に来るのか?ヤバい、今から天井裏に隠れられない…どうしようどうしよう…そうだ、ここは何かに化けてやり過ごそう』
そう思った新人お化けは、お腹も空いてたのか先ほど浩二が手に持っていた焼肉特大パックに自ら化けてしまった。
部屋に入った雄二はテーブルに置いてあったタバコとライターを手に取り部屋を出ようとしたときに、窓に掛かったカーテンの下の焼肉用の特大パックが置いてあるのに気が付いた。
『あれ?こんなとこに焼肉パックが…』
雄二は、それを拾い上げた時…背中がゾクッとして鳥肌がたった。
何気なく部屋の中を見回す雄二。
『あの落書き帳のせいだな…気のせい気のせい…』
そう自分に言い聞かせた雄二は特大焼肉パックとタバコとライターを手に、外に出た。
『浩二!部屋の中に焼肉用の特大パック、置いてあったぞ』
そう言いながら雄二はキャンプ用のテーブルの上に、お化けが化けた焼肉用の特大パックを置いた。
『えっ?俺、部屋で出した覚えないぞ?』
『袋から落ちたんじゃねーの?』
『かもな、雄二、タバコとライターちょうだい』
『雄二は自分のタバコに火を着け、浩二にタバコとライターを手渡した』
この時点で新人お化けは焼肉用の特大パックに化けたことを後悔していた。
(まずいぞまずいぞ…このままだと生焼きにされちゃう…)
新人お化けは、危機的状況に陥った。
『よーし、炭に火がはいったぞ。美香、肉のパック開けて焼く準備して。絵理は野菜適当な大きさに切っといて』
『オッケー』
『アタシの包丁さばきは伊達じゃないよ!』
そう言いながら絵理は包丁を右手から左手へ交互に投げては掴んでいたとき、手が滑って新人お化け焼肉特大パックの数センチ横に落ちたのだった。
落ちた場所には玉ねぎもあり、その玉ねぎにザックリ包丁が食い込んだ。
その光景を目の当たりにした新人お化け。
『あわわわ…こ、ころされる…あっ、でも俺お化けだから死ぬことないけど、切られたら痛いもんな…ここから逃げなきゃ』
新人お化けは震える焼肉パック状態の体を何とか伸ばし、芋虫のように這って逃げようとした。
と、ちょうどそこへ美香の手が新人お化けの焼肉パックに伸びてきた。
(や、ヤバい…早く逃げなきゃ)
『もー、絵理!真面目にやりなさい。危ないよ』
そう言いながら絵理から視線を新人お化け焼肉特大パックに視線を移したちょうどその時、びろーんと伸びた焼肉パックが、まるで芋虫のようにぐにゃりと曲がったのを見た美香の頭の中は『えっ?何で?』の言葉しか浮かんでこなかった。
しかし、テーブルから落ちちゃう、という無意識な条件反射のように美香の手は新人お化け焼肉パックを掴んだのだった。
(ヤバい、捕まった)
美香の手はラッピングのビニールを剥がそうとしていた。
しかしラッピングはとても丈夫で中々剥がせなかった。
それもそのはず、ラッピングのビニールは新人お化けの皮なのでパックと一体化してるので剥がれることはない。
その剥がれることはないラッピングのビニールを剥がそうとする美香の顔を見た新人お化けは、地獄の鬼のように見えたのだった。
新人お化けは美香の手の中で暴れた。
急にぐにゃりと曲がったかと思うと、活きの良い魚みたいにピチピチ跳ねた。
『きゃっ』
思わず手を放す美香。その隙に地面へと転がる新人お化け焼肉パック。
転がった所で運悪く絵理に踏まれたのだった。
(ぐぇっ)
ビニールのラッピングは裂けて中の肉は砂まみれになった。
『やだー、美香何してんのよー。肉踏んづけちゃったじゃん』
『あっ、ごめんごめん。こいつが暴れるから手が滑ったのよ』
『えっ?暴れる?』
絵里が不思議そうな顔をして美香を見た。
確かに暴れたやき肉パック…
気のせい…、気のせい気のせい。
手が滑っただけよね…。
拾い上げた焼肉パックを見た美香。
『こりゃダメだ。ビニール破れて、お肉砂だらけ…』
美香は浩二に砂だらけの肉を見せて新人お化け焼肉パックはゴミ箱行きが決定した。
こうして新人お化けはゴミ箱の中で一難を乗り越えたのだった。
雄二、浩二、悟志、絵理、美香の五人グループ。
海辺のバンガローにとり憑くお化け二体撃退…
続く👻

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