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告知された、がんという病気…

2018.02.27(22:11) 170


こんばんは(*´∀`)ノ

今日はそれほど寒くなかったね♪

昼間、部屋の窓を開けたままでも寒くなかった(*^^*)b

相変わらず自宅療養の私にはとても心地よい♪


さて…

腎臓内科の先生が、毎回の診察で私の様子を診ながらあれこれと薬を変えてゆき、今では毎日この薬の量(^_^;)
日々のお薬

腎臓も間接リウマチも、身体の中の炎症を抑える薬を飲むわけで…。

リウマチの痛みは、ご丁寧に相も変わらず激痛はあるけど、徐々に痛みの続く時間が短くなってきてる。

身体の何処かが正常に機能しないというのは、本当に辛いものだと、つくづく改めて思うのであります。

C3腎症もリウマチも予後不良な訳ですが…。

お薬で病気の進行を抑える治療しか出来ないという事なのでありますが…。

更には、担当医からの腎症もリウマチも確実に悪化すると言われ、何れは間接が固まり、慢性腎不全か…

とか思っていた1月のとある日…。

トイレに入ってオチッコしたら、オチッコとは違うものが、トゥルッ、トゥルッと尿管を抜けていく感覚
(; ゚ ロ゚)ナンカデタ!

私は、その何かを確認するべく、恐る恐る便器を覗きこんでみたら…

便器の中は真っ赤っかヽ(ヽ゚ロ゚)ヒイィィィ!

更には…一つ、二つ、三つ…

便器にへばりつく赤い固まり…

『あっ、あの得たいの知れない物はこれか…』

一人呟くワタクシなのであります。

そう、血尿と一緒に血の固まりみたいなものが出ていたのであります。

血尿は、今までも出ていたけど…これはそのまんま血液だし…

ましてや血の固まりのようなものがあるわけで…

こんな血尿ははじめて…

しばらくそのまま固まるわたし(^_^;)

もう夜も遅いのでリウマチ以外の痛みも苦痛もなかったので、そのままの症状をスマホでググるのでありました。

かくして、私のGoogle診断は…

『えっ?えっ?膀胱がん?』

この時点では、私の中では否定しているのであります。

次の日に、病院へ行こうかと思っていたのですが、リウマチの痛みと、なんとも言えない身体のダルさ。

起きて座ってるだけでも辛い。

次の日には、オチッコは正常な色に戻っていたのであります。

次の診療予約日が近かったので、それまで自宅に籠るワタクシなのであります。

そして、腎臓外来日の前日…

またもや、どろどろの血尿と血の固まり( ;∀;)マタダ…

腎臓内科外来診療日の当日、担当医に血尿の症状を細かく説明。

『これは、泌尿器科で検査した方がいい』とのことで

腎臓内科から同病院ないの泌尿器科へ予約。

そして、泌尿器科診療当日。

私が症状を告げると、直ぐに検査しましょう。と言われ30分後にズボンとパンチュ脱いで分娩台のような椅子に座らせられたのであります(///∇///)オオマタビラキノコンニチハ

ちょっと痛いけどがまんしてね、と先生。

尿道からカメラを入れるのですが…

甦る腎生検の時の尿道カテーテルの、あの痛み
c(>_<。)シ* クゥーッ、

しかし、泌尿器科の先生だから上手なのか…

麻酔がよく効いていたのか(*^.^*)

それほど痛くなかった♪

そして、カメラは膀胱内へ(*´∇`*)

大股開いて椅子に座る私の斜め左横にモニターがあり、私の膀胱内を映し出していた。

○○さん、モニター観てください。

先生の言葉に返事をしてモニターを見つめる私。

『これ、あまり良くない出来物だから早急に切除しましょう』

と、いう先生の『良くない出来物』という言葉に敏感に反応した私なのであります。

モニターに写し出された、私の膀胱の内側にへばりつく突起物(^_^;)

Googleで見つけた画像と似てる。

ここで私は自分に言い聞かせたのであります。

先生に膀胱がんと言われても挫けるな、と(^_^;)

そして、十数分後…

検査を終えて、診療室の横で待っていた私の元へ看護士さんが来て、そのまま診療室へ。

『この良くない出来物を取らなければいけません。今のところ、内視鏡メスで切除できるので早めに手術日を決めましょう』

と、先生が言ったのであります。

そこで私は先生に質問(^_^;)

『先生…良くない出来物って…もしかしたら膀胱がん?』

『そうですね…ハッキリ言いましょう。紛れもない膀胱がんです。これから、CTやMRI検査でいろいろ調べたあと、治療に入ります。手術日はなるべく早い方がいい』

という先生の言葉に、何となくわかっていた膀胱がんのこと…少なからずとも気持ちはやっぱり沈んだ。

リウマチ、腎症、膀胱がん( ;∀;)

3つ揃いました…

他に転移してなければ内視鏡メスで切除するだけで済むはず。

膀胱がんの転移が無いことを祈りつつ、3月22日の手術が確定しました。

その前に、CTとMRI検査。

更に、その合間に生活保護の申請。

その後で、自己破産申告…

これからの生活は生保に頼るしかないワタクシなのであります。

生活保護には家賃の上限もありまして…

今の賃貸住宅では家賃の上限を3000円ほどオーバー。

今住んでいる家は、賃貸マンションでペット可なので、私の身体の状態と愛猫トマトもいるわけで、ここだけはなんとかしないと…。

そんな黒猫トマトは寒さを凌ぐためポットの上で肉球暖めてます。

肉球が冷たくて((+_+)) トマト


時々、沸かし直しのボタンを押してしまうことがあり、いつかお尻を火傷するんじゃないかと心配なので、トマトがポットに乗るとコンセントを抜く私w

暫くすると温かくなくなるので、次に暖を求めて私の膝へ(*≧з≦)溺愛♥

私の好きな場所(=^ェ^=) トマト

そして私がベッドに入れば…
添い寝💕
後からもぞもぞもぐりこんできて朝まで爆睡。
トマトが一緒に寝ると、湯たんぽのような柔らかい温かさ。

温もりって、気持ちを和ませたり安心させてくれたり(*^.^*)♪

小さな黒猫トマトは、私の大切な家族♥

ママはまた入院するけど、もう一人のママの言うこときかなきゃだめたぞ?

と、いうことで…

今日はこのへんで(*^.^*)♪


皆さん、体調管理には気を付けてくださいね(*^.^*)b



by美香♪

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移り行く日々の徒然に…


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一年間だけの約束…後編 1

2018.02.26(18:22) 103

どもども(^.^)ノ♪

いや~、時間かかっちゃった(^_^;)待っててくれた方々ごめんなさいm(;∇;)m


ショートストーリー、【一年間だけの約束…】前回のあらすじです♪


桜井一美(かずみ)は、不運な事故にあい命を落としてしまう。

しかし、当初の一美(かずみ)は自分が他界したことに気付かないでいた。

病院に駆けつけた、結婚間近だった恋人の斉藤孝と、一美(かずみ)の妹の美雪に話しかけても気付いてくれない。

当の一美は、現在起きていることは夢だと思っていた。

そこに、一美の元に広恵という女性が現れ、哀しい現実を突き付けられ、それを受け入れた一美。

広恵は一美に、この世に未練を残すな、と言った。

一美は自分の存在に気付いてくれない、恋人の孝と妹の美雪に、なんとか今の自分の気持ちを伝えようとする。

そこに現れた一美(ひとみ)と、ひとみの妹の美幸(みゆき)。

お互いの姉妹の名前に、違和感を持つ二組の姉妹…

一美(かずみ)の伝えたいこととは…

果たして、それが二人に伝えられるのか…
一年間だけの約束…前編

【一年間だけの約束…後編】情景を思い浮かべながら読んでみてくださいね(*^^*)b


尚、本編に出てくる登場人物の名前は、私が選んで決めた名前ですので、同じお名前の方は、どうぞお気になさらずに(^_^;)

では、本編へどうぞ(⌒‐⌒)♪





※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


一美(かずみ)は、自分のワンピースを抱きながら寝ている孝を暫く見つめたあと、ベッドに上り孝の背中に抱き付くように横になった。

『孝…ごめんね…あなたと一緒に暮らしたかったのに…。でも…あなたのご飯をつくるのも…この部屋の掃除をするのも…あなたの洋服を洗濯することも…もう…』

孝の背中に頭をつけながら、孝に話しかけていた一美(かずみ)は、ここまで言って涙を流した。

涙は次第に溢れてきて、一美(かずみ)は、しゃくりあげながら泣いた。

『愛してる…愛してる…孝…アタシあなたと離れたくない…ずっと一緒にいたいよ…』

一美(かずみ)の涙は止まらなくなった。

そして孝の横顔にキスをした一美(かずみ)。

ぽろぽろ溢れていた涙の一滴だけが、何故か孝の頬に落ちた。

孝は一美(かずみ)の涙で目を覚ました。

孝は、上半身だけ起き上がった。

部屋の中が、何となくヒンヤリと感じた孝は、身体をブルッと震わせた。

そして…孝は一美(かずみ)のワンピースを引き寄せ、胸に抱いた。

洗濯したあとの、一美(かずみ)のワンピースに染みた柔軟剤の香り…。

ベッドに二つ並べてある、枕に残る一美(かずみ)のシャンプーの香りが、今も一美(かずみ)が一緒に寝ているように思えた孝だった。

ただ…いつもと違うのは…温もりだけがそこにはなかった。

孝は思い付いたように携帯を手に取り、一美(かずみ)の携帯番号をだし、発信ボタンを押した。

いつもの呼び出し音が鳴り、6回目のコールで孝は電話を切った。

いつもなら、5回コール内で必ず出ていた一美(かずみ)。

夢であってほしい、という孝の願いは虚しく掻き消された。

携帯画面を見つめながら、孝の胸に急激に込み上げてきた虚しさと哀しみ。

孝は、声を出して泣いた。

自分の気が済むまで泣いた。

一美(かずみ)はベッドの上で、寂しそうに孝を見つめていた。

一頻り泣いた後、孝はタバコを持ち部屋の窓を開けた。

部屋の中の冷たい空気が孝の足もとを撫でるように出ていき、窓の上の方から5月半ばの少し湿った空気が流れ込んできた。

この部屋に詰まっていた幸せが足もとから出ていき、代わりに寂しさが忍び込んできた…。孝には、そう思えてしかたなかった。

窓際で、孝はタバコに火を着けた。

その煙が部屋に入り込み、一美(かずみ)の方へ流れてきた。

何気無くタバコの煙に手を翳す一美(かずみ)。

タバコの煙が、そこだけ乱れた。

自分の存在を知ってもらえるかも…。一美(かずみ)は不意にそう思った。

『孝!孝!こっち見て!』

一美(かずみ)は叫んだ。

一美(かずみ)の手はタバコの煙を掻き乱した。

その時、一美(かずみ)の手にタバコの煙がまとわりついて、煙が一美(かずみ)の手の形をうっすらと浮き上がらせていた。

窓から外を見ていた孝が振り向いたが、一美(かずみ)の手の形をした煙に気付くことなくタバコを灰皿で揉み消した。

孝は時計に目をやり時間を確かめてから、携帯を手に取り上司の携帯に電話をかけた。

孝は、昨日からの事を上司に話した。

そして、上司に暫く仕事を休む事を告げた。

上司も快く承知してくれた。

電話を切った孝は、またすぐに電話をかけた。

『もしもし、美雪ちゃん?起きてた?あのさ…、俺…今日から暫く休みとったから…。これから一美(かずみ)の事で色々大変だろうから…俺に出来ることは何でもするからさ…遠慮なく俺に言ってほしいんだ…』

『ありがとう…孝さん…。後でお家に来てもらっていい?私だけじゃ解らないことたくさんあるから…』

『うん、わかった。後でそっちに行くよ…じゃ、後で…』

孝はそう言って電話を切った。

孝は、パソコンのスイッチを入れ、何かを調べ始めた。

一美(かずみ)がパソコンの画面を覗きこんだ。

自分の葬儀の事だった。

見ているのが辛くなりそうなので、一美(かずみ)は広恵との約束もあったため、病院に戻ることにした。



病院に着いた一美(かずみ)は、ナースステーションの傍にある長椅子に腰掛けた。

ここで広恵を待つことにした一美(かずみ)。

その時、看護師達の話し声が聞こえてきた。

『小児病棟の、あの女の子…美幸ちゃんだっけ?オペ延期になったね…。昨日の夜から高熱が続いてるんだって?』

『うん…その高熱だけど、原因がわからないのよ…』

ひそひそと二人の看護師が話していた声が、一美(かずみ)の耳に入ってきた。

『みゆきちゃん?もしかして…あのみゆきちゃん?』

一美は立ち上り、小児病棟を探し始めた。

ほどなくして、小児病棟を見つけた一美(かずみ)。

それぞれの病室の出入り口に書いてある名前を、一つづつ確認していった。

5部屋目の入り口に、五十嵐美幸という名前を見つけた。

『この部屋だ…』

一美(かずみ)は中を覗いてみた。

他の部屋とは違い、個室ではあるが広い部屋だった。

窓際にベッドが置いてあり、美幸はそこに寝ていた。

ベッドのすぐ横には、一美(ひとみ)が椅子に座ったままベッドにもたれ掛かるように寝ていた。

一美(ひとみ)の手は、点滴の針を刺したままの美幸の手を握っていた。

一美(かずみ)は、その光景を見て自分の妹である美雪の事を思い出した。

『アタシも美雪が小さいときに同じことしてたな…。一美(ひとみ)ちゃんも妹を大切に思ってるんだね…』

一美(かずみ)は美幸の傍に行きたかったが、一美(ひとみ)との約束を破る訳にもいかず、況してや自分のせいで美幸が高熱を出したとなれば、近付く訳にもいかない。

歯がゆい思いをしながら、一美(かずみ)は美幸を見ていた。

『何してるの?』

一美(かずみ)は後ろから声をかけられた。

少し驚いて、一美(かずみ)は振り返った。

声をかけてきたのは、広恵だった。

『広恵さん…ビックリした~…』

『美幸ちゃん、また熱出しちゃったのかな?あっ…一美(かずみ)さん、もしかしたら美幸ちゃんに会った?』

『はい…、昨日、広恵さんと別れてから、あの子に会ったの。あの子と、あの子のお姉さんの一美(ひとみ)ちゃんは私が見えるの…』

『うん…私も知ってる…。でも、あの子のお姉さんに言われなかった?妹に近付かないでって…』

『あっ、それ言われた。私達みたいな人とお話しすると妹が体調を崩すって言ってた。さっき、ナースステーションの横に居たときに、美幸ちゃんが原因不明の高熱を出して、手術が延期になったって言ってました。だから心配になって…』

『そうなんだ…。私が美幸ちゃんに声をかけられて、私とお話しした夜も、やっぱり高熱だしたのよね…美幸ちゃん…。私も、それから近付かなくなったよ…。いわゆる霊障っていうやつなんだろうね…私達に悪意は無いんだけど…成仏できてない私達は、何かしら悪い影響与えるのかもね…』

『霊障…か…。可哀想なことしたな…。でも一美(ひとみ)ちゃんは大丈夫だって言ってた…』

『お姉ちゃんの方は、そういうのに負けない力が有るのかもね』

『そうかもね…。あっ、広恵さん。外に行きませんか?ここにいたら、美幸ちゃんに良くないかもしれないし…。話したいこともあるから…』

一美(かずみ)は、広恵を見ながら外を指差した。

『オッケー。あたしも話したいことあるから外に行こか』

二人は、美幸の病室を後に病院の外にある広場に出て、広場の隅にある木の根元に座った。

『ねぇ、広恵さん…美幸ちゃんの手術って何の手術か知ってます?』

『うん…ついこの前聞いたんだけど、先生達の話を聞いてたら心臓の手術をするって言ってた。だから体が元気な時じゃないと手術は出来ないって聞いたよ』

『心臓の手術なんだ…。あんな小さな体で手術しなきゃいけないんだ…。頑張ってほしいな…手術いつになるんだろうね?』

そう言って一美(かずみ)は広恵を見た。

『そうだよね…。確かに気になるな、私も…。後で先生達が話しているとこに忍び込んでみるよ』

『うん…お願いします。あっ、それからね…昨日、自宅に戻って今朝までいたんですけど、ちょっとした発見がありましたよ』

一美(かずみ)はニッコリ笑って広恵の腕に手を置いた。

『何々?何を発見したの?』

一美(かずみ)の笑顔を見て、広恵も釣られて笑顔になった。

『あのね…昨夜自分の部屋に戻った時の事なんだけど…。テーブルの上にボールペンがあったの。でね、孝と妹にアタシの気持ちを伝えるには、やっぱりこれしかないって思ってボールペンを掴もうとしたの』

『お~、ナイスアイテム!でも、掴めた?』

広恵は人差し指と親指でボールペンをつまむ仕草をした。

『ん~~ダメだった。でもね、何回も何回も何回もやってみたけど、やっぱりボールペンはつまむ事さえできなかった。それでだんだんイライラしてきて、ボールペンに怒りさえ感じて、こいつ!へし折ってやるっ!って思いながら、ボールペンを思いきり叩いてみたの。そしたらボールペンがほんの少しだけど動いたの。すっごい嬉しかった。でね、気がついたら朝になってた。アタシって執念深いのかな?』

『あはは!もしかしたらそうなのかもね。一美(かずみ)さんみたいな人は、絶対に天国に行かないとね。じゃないと、もし一美(かずみ)さんがこの世に残ったら、そうとう怖い幽霊になっちゃうかもしれないね!』

『貞子みたいな?』

長い髪の毛を後ろから前に垂らして四つん這いになる一美(かずみ)。

『ちょっとやだー!冗談じゃなくマジで怖いんだけど…本物だけに…』

『それともおいわさんとか?ここにたんこぶ、みたいな…』

頭のこめかみの上辺りに右手でコブを作るような仕草をする一美(かずみ)。

『それじゃ、林家三平だよ!どーもすいません、になっちゃうから!おいわさんに怒られるよ!』

『林家三平?林家たい平のお父さん?アタシ、三瓶でーすしか知らない…おいわさん、ごめんなさい…』

天然ボケな一美(かずみ)だった。

『ちがーう!』

広恵はケラケラ笑った。そして、久しぶりに笑った気がした。

広恵は、そんな一美(かずみ)に対して親近感を持ち始めた。

この子の気持ちは、なんとしても彼氏と妹に伝えてあげたい、と思う広恵だった。

『ボールペンの話だけどさ…。まだつまむことも出来ないんでしょ?』

広恵は、ボールペンの話に戻した。

『うん…あれからは何もしてない…』

そう言って一美(かずみ)は、落ちていた小枝をつまみ上げようとした。

やはり空気をつまんでいるような感触しかなく、小枝はピクリとも動かなかった。

『これから毎日ここで練習しようよ。ボールペンが少しでも動いたんだから、諦めないで頑張ってみよう?彼氏と妹さんに、あなたの気持ちを伝えないと…』

広恵は、一美(かずみ)の肩に手を置き笑顔を見せた。

『はい、頑張ってみる。ボールペンを持って字が書けるようになれば、気持ちを伝えられるもんね。あっ、あとね広恵さん。タバコの煙も、孝達に私の存在を知ってもらえるかもしれないよ?』

『どういうこと?』

『今朝早く孝に会いに行った時、孝が吸うタバコの煙を手で扇いだら、タバコの煙を掻き乱す事ができたの。そして、その煙が私の手にまとわりついて、煙が私の手の形を浮き上がらせたの!これって有効だと思いません?』

『あっ、そういう事か…。あのね、昨日、一美(かずみ)さんと別れてから私達が生きてる人達に自分の気持ちをどうやって伝えたら良いのか、この世界に長くいる人に聞いてくるって言ったじゃない?それで、私その人に会って聞いてみたの。そしたら、気持ちを伝えるのは難しいって言ってた。あるいは無理かもしれないって。美幸ちゃんや一美(ひとみ)ちゃんみたいに私達が見える人なら簡単に気持ちを伝えられるけど、それ以外は難しいって。ただ、自分の存在を知ってもらうことは出来るって言ってたよ。それは、お線香の煙を使うんだって。その意味が、一美(かずみ)さんが体験したタバコの煙の事だと思う…』

『そうなんだ。煙って霊にまとわりついてくるものなのかな?お線香でも試してみたいね。あとは、ボールペン持って字を書けるようになれば、だね!』

『そだね。アタシも協力するよ!』

広恵は右手を横に伸ばし肘を、グイッと曲げて力こぶを作った。

『頼りにして大丈夫かな~~…』

一美(かずみ)は、広恵のプヨプヨな力こぶを触り、ボソリと言った。

『任せとき!プヨプヨだけど…』

『ありがとう、広恵さん…』

『一緒に頑張ろう!それはそうと、彼氏と妹さんの傍に居なくていいの?』

『うん…、今は一緒にいない方がいい…。会えば辛いし哀しくなっちゃうから…。二人に会うのは私が天国に行く日にする…。その時は、広恵さんも一緒にいてほしい…』

『そっか。でも…それでもいいの?お通夜とお葬式は、自分の身体の傍にいた方がいいと思うよ?』

『でも…自分のお通夜とかお葬式見てるなんて哀しすぎるよ…』

『それはそうだけど、お葬式の時は自分の身体の傍に居ないとだめよ…。お坊さんのお経は聞いた方がいい。心が穏やかになるよ?心穏やかにして天国に行かないと…ねっ?』

一美(かずみ)は広恵の顔を見て頷いた。




その頃、孝は美雪の家に行くために車を走らせていた。

時間は午後12時になろうとしていた。

孝は、ピザ屋の前に車を停めた。

美雪の大好物のシーフードピザLサイズを二つ買い、コーラを2本買った。

美雪も孝も、昨日から何も食べていなかった。

どんなに哀しくても、どんなに辛くても、腹は減るんだな…。

そんな自分の気持ちが、何となく腹立たしかった。

『お前も好きだったよな。シーフードピザ…』

ポケットに入っているイルカの指輪を握り締め、孝は一人呟いた。

孝の胸に哀しみが込み上げてきたが、ぐっと堪えた。

いくら泣いても一美(かずみ)は戻ってこないもんな…。

笑顔で見送ってやろう…。そう思う孝だった。

40分ほどで孝は、美雪の家に着いた。

5分ほど前に美雪には電話を入れておいた。

玄関のチャイムを鳴らすと、すぐに美雪が出てきた。

部屋にはアルバムが何冊も重なっていた。

美雪は姉との思い出に耽っていたようだった。

美雪は目を赤く腫らし涙を拭いていた。

『わざわざ来てくれてありがとう、孝さん』

『一美(かずみ)の良い写真あるかな?』

重なっていたアルバムを見て孝が言った。

『うん、お姉ちゃんらしい写真は選んでおいたよ。選んでたら、色んな思い出が浮かんできちゃって…。気が付いたらアルバムだらけになっちゃった』

『一美(かずみ)も美雪ちゃんも写真大好きだからな。そうなって当然!それよりさ、お腹すいてるだろ?昨日から何も食べてないだろうと思ってピザ買ってきた。俺も昨日から何も食べてないから腹ペコなんだよね。とりあえず、食べよう。ほら、美雪ちゃんの好きなシーフードピザだよ』

ピザの箱を開けたと同時に、美雪のお腹がグゥと鳴った。

『えへへ…、私もお腹ペコペコなの…』

『食べよ食べよ!』

二人は一美(かずみ)の写真を見ながら、思い出に浸りながらピザをペロリとたいらげた。

孝はピザの空箱を片付けて、キッチンの換気扇を回しタバコに火を着けた。

ゆらゆらと立ち昇る煙は途中から勢いよく換気扇に吸い込まれていった。

孝はタバコを吸うわけでもなく、ただ換気扇に吸い込まれていく煙を見つめていた。

一度も吸うことなく孝は蛇口に手を伸ばし水を出して、火の着いたままのタバコを水に着けた。

ほんの一瞬だけ、ジュッという音がしてタバコの火は呆気なく消えた。

不意に孝は、唇を噛み締めた。

こぼれ落ちそうな涙を必死に堪えていた。

『くそっ…何でも呆気なく消えちまいやがって…』

一美(かずみ)への想いが急激に沸き上がってきた。

『孝さん?大丈夫?』

いつの間にか、美雪が後ろに立っていた。

振り向くと、一美(かずみ)の面影のある美雪の顔が目の前にあった。

孝は堪えきれなかった。

美雪から顔を反らし、涙を見せないようにした。

孝は肩を震わせ声を出さずに泣いていた。

『孝さん…我慢しないでいいよ。孝さんは私のお兄ちゃん同然の人なんだから。私の前で格好つけることないんだから…』

美雪の言葉に負けた孝は、声をあげて泣いた。

『ごめんね、孝さん。私が居たからお姉ちゃんとの結婚が遅れちゃって…』

『美雪ちゃんは、そんなこと気にするな。逆に結婚できないでいたから、今まで一美(かずみ)と長い間付き合っていられたんだと思う。それはそれで良かったんだと思うんだ…。だから、美雪ちゃんはそんなこと思わなくていい。ねっ?』

『うん…わかった…』

『これから一美(かずみ)のお通夜と葬儀の段取りしなくちゃな…。美雪ちゃんは、お金のことは心配しなくていい。美雪ちゃんは喪主だから、訪れてくる人たちに挨拶してくれてればそれでいい。後は俺の友達も何人か来てくれる予定になってるから委せてくれ』

『ありがとう、孝さん…よろしくお願いします』

孝は美雪の言葉に頷いた。

と、その時…。一美(かずみ)の部屋で携帯が鳴っていることに気がついた美雪は、一美(かずみ)の部屋に入った。

そして美雪は、一美(かずみ)の携帯を持ちながら孝の横に来た。

『お姉ちゃんのお友だちみたい…』

孝に同意を求めるような素振りを見せる美雪。

『出てごらん?』

孝の言葉に首だけで頷いた美雪は着信ボタンを押した。

『もしもし…』

『あー、出てくれた!一美(かずみ)の妹さんの美幸ちゃんですよね?』

『あっ、はい…』

『私のことおぼえてくれてるかな?一昨年の春に私と一美(かずみ)と美雪ちゃんでディズニーランド行ったの覚えてる?』

『あー!冴子さんでしたっけ?』

『そうそうあのときの冴子!あの時は一美(かずみ)と同じ職場だったけど、今は埼玉の方にいるの。それで、昨日の夕方一美(かずみ)の会社に電話したら、一美(かずみ)が亡くなったって聞いて…』

冴子は、そこまで言って言葉を詰まらせ、電話口で泣いていた。

『一美(かずみ)はもう家に戻ってきてる?』

『今日の夕方にはここに帰ってくる予定です』

『今夜お邪魔してもいいかな?美雪ちゃん…』

冴子は声を震わせ泣き出しそうなのを我慢していた。

『もちろんです。姉も喜ぶはずです』

『ありがとう、美雪ちゃん…。今夜伺わせてもらいますね』

『はい、お待ちしてます』

美雪はそう言ってから電話を切った。

『一美(かずみ)の友達?』

『そう…。私も何度か会ってる人だった。今夜ここに来るって』

『そうか…、わかった』




そして、この日の夕方に一美(かずみ)は、物言わぬ身体で家に帰ってきた。

一美(かずみ)のお通夜は、この夜、自治会館でしめやかに行われた。

一美(かずみ)の友人や、職場の仲のよい同僚たちが次々と訪れてきた。

それぞれが、焼香を済ませ静かに眠る一美(かずみ)の顔を見て別れを告げていた。

訪れてきた一美(かずみ)の友人や職場の仲のよい同僚たちだけで20人は越えていた。

そして、孝の友人5人と美雪の友人6人入れると30人を越えていた。

元々明るい性格の一美(かずみ)の交友の広さが露呈された。

後から後から焼香に訪れる人が絶えなかった。

一美(かずみ)の身内、親戚は一組の夫婦だけが来ていた。

一美(かずみ)が18歳になるまで、美雪とお世話になっていた母方の親戚だった。

母方の親戚は、この老夫婦一組だけだった。

父方の親戚は、美雪があえて連絡をしなかった。

焼香に来た老夫婦に、一美(かずみ)と美雪が引き取られる前に父方の親戚のところにいた一美(かずみ)と美雪。

二人は厄介者扱いされながらも、里親と名乗る父方の親戚は児童手当が入る度に夫婦でパチンコに明け暮れていた。

それでいて、お金が無いから、と言って一美(かずみ)と美雪の洋服すら買ってくれなかった。

それを知った、母方の親戚が子供たちはうちで預かる、と言ったが児童手当が無くなるのが嫌で中々母方の親戚に子供たちを引き渡さなかった。

しかし、母方の親戚が児童相談所に相談したところ、父方夫婦の子供達の養護は不適応と判断され、一美(かずみ)が18歳になるまで、二人は母方の親戚と暮らしていた。

18歳になった一美(かずみ)は、高卒で食品工場に就職した。

そして、里親である母方の両親にアパートを借りるために保証人になってもらっていた。

そのとき、まだ小学の低学年だった美雪は家で預かる、という両親の言葉を、一美(かずみ)は断ったのだった。

美雪も一美(かずみ)と離れるのを拒んだ為、両親は仕方なく姉妹で暮らすことを承諾した。

それからの一美(かずみ)は、美雪の母親代わりとなった。

美雪にとって、一美(かずみ)は優しい姉であり、また母親として、かけがえのない存在だった。

誰よりも大切な姉を亡くして、悲観に暮れていた美雪だったが、姉の一美(かずみ)がこれ程までに皆に親しまれていた事が誇らしく思えた。

美雪と初対面の人もたくさん来ていた。

恐らく、友達から友達へと連絡が飛び交ったのだろう…と、美雪は思った。

それは、孝にとっても同じ気持ちだった。

これだけの知合いがいる一美(かずみ)と結婚していたら、賑やかな家になってたんだろう、と思う孝だった。

夜も遅い時間になっても、焼香に訪れてくれる人もいた。

その中に、冴子の姿があった。

冴子は受付を済ませてから、美雪の元へ行き深く一礼をした。

『美雪さんですよね?』

『はい』

『冴子です。突然のことで…何と申し上げていいのか…言葉も見つかりません。心からお悔やみ申し上げます…』

そう言って冴子は、もう一度美雪に一礼をした。

美雪は、なにも言わず深々と冴子に一礼をした。

『冴子さん、お久しぶりです。冴子さんの事は姉から色々聞いてます。来てくれてありがとうございます。姉も喜んでると思いますよ』

『一美(かずみ)は私のこと、どこまで美雪さんに話してるのかな?』

『色々な話を…とだけ言っておきます』

美雪はそう言って小さく笑った。

『あっ、その美雪さんのいい言い方だと、私の恥ずかしい事なんかもぜんぶ聞いてるみたいね』

『色々な話を、とだけしか言えません…』

美雪は、小さく笑った。

『一美(かずみ)め…。美雪さんに全部ばらしたな…。誰にも言わないでねって言ったのに…ちょっと一美(かずみ)に文句言ってくる』

冴子も、そう言って小さく笑った。

冴子は、一美(かずみ)の遺影の前で一礼をして焼香を済ませてから、静かに眠る一美(かずみ)の顔を見ていた。

冴子は一美(かずみ)の頬に、そっと手を当てた。

一美(かずみ)の頬の冷たさが冴子の手に伝わった時、これまでにない哀しみに包まれていくのを感じた冴子。

嗚咽をもらしながら、静かに眠る一美(かずみ)に話しかけていた。

ちょうど、焼香に訪れる人も途絶えたので、美雪は冴子の気が済むまで、そのままでいさせてあげようと思った。

夜も遅い時間になり、通夜会場に残っているのは冴子と、一美(かずみ)と仲のよい友人達数人が残っていた。

そして、孝の友人も皆残ってくれていた。



そんな様子を、ずっと見ていた一美(かずみ)と広恵。

一美(かずみ)は泣きっぱなしだった。

『こんなにたくさんの人が来てくれたなんて…』

一美(かずみ)は友人達が何時までも残ってくれていることにも心を打たれた。

『ねっ、一美(かずみ)さん。来てみてよかったでしょ?それにしても、あなたは皆に親しまれてたんだね…。でも…何となくわかる気がする。私はあなたに会ってから、まだ二日しかたってないのに凄い親近感が湧いてるもの。あなたには…何かしら人を引き付ける魅力があるんだろうね。だから、これほどまでに多い人達があなたを偲んで来てくれたのだと思う…』

受け付けに置いてある記帳ノートに記帳されたページ数を見ながら広恵は一美(かずみ)の顔を見た。

しかし、一美(かずみ)は別の方を見ていた。

自分の身体の横にすがり付いて泣いている冴子を見ていた。

『どしたの?』

広恵は一美(かずみ)の視線の先を見た。

『あの人は?お友達?』

『はい…一番仲の良い友人です。ちょっと彼女の傍に行ってきます』

一美(かずみ)は冴子の所へ行くために、一晩絶えることのないようにしている線香の煙の中を通ったとき、部屋に漂っていただけの線香の煙が乱れた。

そして、徐々に一美(かずみ)の身体にまとわりついてきていた。

一美(かずみ)が冴子の横に立ったとき、場内がざわめいた。

『ねぇ…、一美(かずみ)の横で泣いている人の傍に誰か立ってない?』

会場内に残っていた一美(かずみ)の友人の一人が言うと、皆が一斉に冴子の方を向いた。

線香の煙の中に、溶け込むようにうっすらと一美(かずみ)の全身の姿が見えていた。

よく、目を凝らさないとわからないくらいに、線香の煙に同化した一美(かずみ)の身体を数人が見たのだった。

『ほんとだ…あれ…一美(かずみ)じゃない?』

冴子を見ていた美雪もまた、煙のようにうっすらと見える一美(かずみ)の姿を見ていた。

信じられない、という状態で、姉の一美(かずみ)だと確信しながらも美雪は声がでなかった。

美雪の傍で友人と話をしていた孝の腕を掴んで何も言わず一美(かずみ)を指差した。

『どした?美雪…ちゃ…』

美雪の指差す方向を見た孝の目に、煙に包まれた透き通った身体の一美(かずみ)が見えた。

『一美…だ…』

孝も一目で一美(かずみ)だとわかった。

しかし、孝もまた、一美の姿に見とれるだけだった。

冴子以外、会場にいた全員が、一美を見ていた。

冴子は、静かに眠っている一美(かずみ)の横で思い出に耽っていたが、会場に残っていた皆が自分の方を見ていることに気が付いた。

状況が飲み込めない冴子は何故か辺りをキョロキョロ見渡した。

すると、すぐ横に白い人影を見たような気がした。

一美(かずみ)は冴子の前にしゃがみこんだ。

『冴子…。今まで色々ありがとう…。冴子と友達になれて本当に良かった…。冴子との付き合い…最高の思い出になったよ…』

一美(かずみ)の身体を形どっていた線香の煙が一瞬ふわっと乱れ、しゃがみこんだ一美(かずみ)の身体を追い掛けるように、再び煙は一美(かずみ)の身体を浮かび上がらせた。

そして、一美(かずみ)は冴子の頬に手を当てた。

だが、次第に煙は薄くなり、一美(かずみ)の身体は見えなくなった。

『えっ?一美(かずみ)?』

間近で見た冴子には、はっきりと一美(かずみ)だとわかった。

『一美!一美!消えないでっ!いるんでしょ?もう一度顔見せてよ!一美!』

会場内の全員が、一美(かずみ)の幽体を見たが、誰一人怖がることもなく、冴子の傍に集まってきた。

『みんな…もう…おしゃべりも…会うこともできなくなったけど…アタシはみんなのこと忘れないからね…』

皆が冴子の所へ集まってきたため、線香の煙も拡散され薄くなっていた。

『みんな…バイバイ…』

一美(かずみ)は線香のすぐ上に手をかざした。

一美(かずみ)の手は徐々に線香の煙に包まれて、煙は一美(かずみ)の手のひらだけ形作った。

一美(かずみ)は皆に手を振って、その手はゆっくりと消えていった。

『一美(かずみ)…』

お通夜会場に残っていた者達それぞれが、一美(かずみ)の名前を口にした。

お通夜会場に啜り泣きの声が暫く続いていた。




会場の外に出た一美(かずみ)と広恵。

一美(かずみ)は何となく気持ちが吹っ切れたような顔をしていた。

『一美(かずみ)さん?皆にお別れできて良かったね!』

『はい!ほんとに良かった!仲の良かった皆に会えたし、私が居たことも皆わかってくれたみたいだし。ほんとは、ここに来るのはやめようと思ってたけど…広恵さんの言うこと聞いて良かった!』

『うんうん!お通夜に行きなさいっていうのは、余計なお世話かな?って思ってたから、一美(かずみ)さんが行きたくないって言ったらその通りにしてたかもしれない…。でも、お葬式だけは強引にでも、連れていくつもりでいたのよ?ていうか今でもそのつもりだからね!』

『はい!大丈夫です!先輩幽霊の広恵さんには逆らいません!』

一美(かずみ)は笑いながら、広恵に敬礼をした。

『うむ、よろしい!』

広恵は胸の前で腕を組んで、大きく頷いた。

『広恵さん。私の家すぐ近くだから今日は家でボールペン掴む練習するよ。広恵さんも来て…』

『お邪魔していいの?』

『もちろん!』

そして、二人は朝までボールペン掴みに没頭するのだった。



翌朝、一美(かずみ)と広恵は、一美(かずみ)の通夜会場である自治会館に向かった。

中を覗くと、昨夜からここにいた一美(かずみ)の友人と孝の友人は、それぞれがそこここに座って永遠の眠りについた一美(かずみ)と朝を迎えていた。

美雪は冴子と並んで座り話をしていた。

孝は、受付で記帳された名前の整理をしていた。

『…皆、帰らなかったんだね…』

一美(かずみ)は誰にともなく呟いた。

『お友達は…たぶん…一美(かずみ)さんと離れるのが辛いのよ…。それに…惜しまれつつ亡くなった友達に寂しい思いをさせたくなかったんじゃないかな…。昨夜は、ここにいる全員があなたの姿を見たんだもん…。あなたに寂しい思いをさせたくなかったのよ…』

『…うん…』

一美(かずみ)は広恵の言葉に涙を滲ませ、友人達を見ながら小さく頷いた。

その時、孝が美雪の傍へ行き手招きした。

『美雪ちゃん、ちょっといいかな?葬儀のことで話があるんだけど…』

『あっ、はい。冴子さん、ちょっと孝さんと話してくる』

『うん、いっといで…』

冴子は泣き腫らした顔で美雪を促した。

美雪は、孝と話始めた。

一人一美(かずみ)の傍に残った冴子は一美(かずみ)に話しかけた。

『一美…。彼いい人だね。私に彼氏紹介してっていつも言ってたのに…結婚式の時にどんな人かわかるよって言ってたよね?…でもさ…結婚式の前に何でお通夜になっちゃうのよ…あんた順番違うでしょ?』

一美(かずみ)の遺影を見ながら涙を溢しながらも、冴子は一美に笑顔を見せた。

『ほんとにそうだね…冴子…』

冴子のすぐ横にいた一美(かずみ)は一人返事をした。

そこへ、広恵が一美(かずみ)の元へやって来た。

『一美さんの告別式二日後だって…。場所も時間も聞いたからあなたは必ず行かないとダメよ❗』

『はい…必ず行きます』

『家族葬みたいだから、お友達は来れないと思うけど大丈夫ね?』

広恵の一美に対する振る舞いは、少しずつ姉のような振る舞いになっていた。



そして二日後…。

一美(かずみ)の葬儀は滞りなく行われた。

そして一美の身体も遺骨となり、位牌となって美雪と孝と共に家に帰ってきた。

『お姉ちゃん…こんなに小さくなっちゃった…。これで、家族3人居なくなった…。とうとうアタシ一人だけになっちゃった…』

美雪は寂しそうにポツリと呟いた。

『戸籍上は俺と美雪ちゃんは他人になっちゃうけど、もう12年も付き合ってるんだぜ?況してや、こんなにちっちゃいときの美雪ちゃんを知ってる俺は兄弟親子身内同然!』

孝は自分の足首辺りの高さに手のひらを持っていき、美雪の幼い時を表現した。

『いくらなんでもそんなに小さくないと思うんだけど!』

美雪は笑いながら孝を睨み付けた。

『ははっ!ちょっと小さすぎた?…あのさ…小さい時みたいに…あのー…孝兄ちゃんって呼んでくれないか?これからも…この先ずっと…。俺…今まで、て言うか今も美雪ちゃんの兄貴でいるつもりなんだ…。だから…独りぽっちになったなんて思わないでほしい…。美雪ちゃんにそう言われちゃうと俺もさみしくなっちゃうよ…』

『…うん…わかった。じゃあ、孝兄ちゃんもアタシのことちゃん付けで呼ばないで?』

『お、おう!OKだぜ、美雪!』

『なんかぎこちないけど許してやろう!』

『あれっ?なんか俺、押されぎみ?』

『ふふっ、一美姉ちゃんの妹ですからね。お忘れなく!あっ、そうそう…お姉ちゃんの納骨って四十九日目でいいの?』

『うん、一般的にはそうなってるね…。ただ、人それぞれ事情があって納骨できない場合もあるみたいだけどね。一美(かずみ)の場合、もう4日たってるから、あと四十五日だな…』

そう言って、孝は上着の内ポケットからイルカの指輪を取り出し美雪に渡した。

『この指輪を納骨の時に一美(かずみ)に持たせてあげてくれるかな?』

美雪は戸惑うそぶりを見せた。

『孝兄ちゃん…それは私には出来ないよ…。納骨の時にお兄ちゃんからお姉ちゃんに渡してもらいたい…。その方がいいと思う…』

『そっか…、わかった。そうするよ』

孝は指輪を、そっと上着の内ポケットにしまった。

孝は上着を脱ぎ自分の横へ置いて、仰向けに寝転がった。視界の片隅に、部屋の隅に片付けられたアルバムが見えた。

『美雪…アルバム見てもいいかな?』

『どうぞ、好きなだけ見ていいよ。今、コーヒー入れるね』

『ありがと』

孝はそう言って、うつ伏せになりアルバムを開いた。

どの写真も、孝の知らない写真は無かった。

何冊目かのアルバムを開いたとき、ページの間から紙の端が飛び出した。

『なんだろ…』

孝は、その紙をページから引き抜いた。

きちんと半分に折ってある、とても薄い紙だった。

孝はその紙を開いて、暫く声がでなかった。

それは、孝にとって哀しく切なく虚しさの込み上げてくる一枚の紙だった。

そこへ、マグカップに入ったコーヒーを持って部屋に入ってきた美雪に、孝は何も言えず、一枚の紙を美雪に渡した。

『えっ?何々?なんの紙?』

美雪は、孝から渡された半分に折ってある紙を広げた。

『婚姻届の用紙…。お姉ちゃんの名前が書いてある…』
                            
その婚姻届には付箋が付いていて、【あとは孝のサインだけだー♥】【いつ孝に持っていこうかな( 〃▽〃)なんか照れるぜ!】と手書きの絵文字付で書いてあった。

姉の自筆の名前が書いてある婚姻届をみた美雪は、腰が抜けたように、その場にペタンと座り込んだ。

そして、美雪は突然泣き出した。

『お姉ちゃん、ごめんなさい!アタシがいたから結婚できなかったんだよね?アタシがお姉ちゃんに甘えすぎてたんだよね?もっと早くにお姉ちゃんを安心させてアタシ一人で生活できてたら、お姉ちゃん孝兄ちゃんと結婚できてたんだよね?お姉ちゃん!ごめんなさい!アタシが何時までも子供だったから!アタシがいけないの!孝兄ちゃん!お姉ちゃん!ごめんなさい!』

美雪はテーブルに顔を伏せて号泣した。

孝は美雪の傍に行き、美雪の頭を撫でた。



孝が初めて美雪に会ったのは、孝が17歳の時だった。

一美(かずみ)が16歳で、美雪はまだ7歳。

その頃から美雪は、よく遊んでくれる孝になついていた。

はじめの頃は、美雪は孝のことを(孝兄ちゃん)と呼んでいたが、高校生になってから(孝さん)と呼ぶようになった。

孝には、当初何となく(さん)付けで呼ばれるのに抵抗があったが、美雪の孝に対する振る舞いは何も変わらなかったので、孝は気に止めないことにした。

何れは、義理の妹になる美雪のことを、孝は本当の妹のように接していた。

美雪が成人になったとはいえ、幼い頃から美雪を知る孝にとっては何時までも幼いままの美雪だった。

『泣くな美雪…。俺も一美(かずみ)も美雪のせいで結婚出来なかったなんて一度も思ったことないんだぞ!一美(かずみ)から、美雪が成人するまで結婚は待ってほしいって言われたときだって、俺は一つ返事でOKしたんだ!一美は美雪の姉さんであり母親でもあったんだ。親は子供が成人するまで決して手放しちゃいけないんだ!じゃないと親の手から見放された子供はとても寂しくて…とても哀しくて…とても辛い思いをするかもしれない…。そんな思いをした一美だから…だからこそ、未成年の美雪を独りに出来なかったんだ…。そんな一美の話を聞いていた俺だって美雪を独りにすることなんてできるわけないだろ?』

美雪はテーブルに顔を伏せたまま泣きながら孝の話を聞いていた。

『わかったか?美雪…。俺と一美が結婚しなかったのは、俺と一美の意志なんだ…美雪のせいなんかじゃない。自分のせいだと思うのは間違ってるんだからな?』

美雪はテーブルから顔を上げて涙を拭きながら孝の顔を見て頷いた。

『わかった…』

『うん…わかったらもう泣くな……………て言うか…なんか…俺、美雪のお父さんになったような感じ…』

『ほんとだね…』

美雪の顔に笑顔が戻った。




その頃、五十嵐美幸の病室では、美幸の母親と一美(かずみ)の親友の冴子が話をしていた。


『お姉さん…美幸のオペ延期になったんだって?』

『そうなのよ…原因不明の高熱が出ちゃってね…昨日よりは幾分熱が下がったけどね…。一美(ひとみ)が言うには幽霊のせいだ、って言うのよね…幽霊なんて本当にいるのかな…?』

『一美(ひとみ)ちゃん幽霊見える子なの?ていうか、お姉さん。幽霊って実際居るよ?アタシ、つい先日、とても仲の良かった親友が他界しちゃって、お通夜に行ったとき…アタシの目の前に立ってたの。そして、アタシの前にしゃがんでアタシの頬に手を当ててたのよ?親友の…その親友って一美(かずみ)っていう名前なんだけど…ね…。あっ…そういえば…一美(ひとみ)ちゃんと同じ字を書くんだ…。一美(かずみ)には歳の離れた妹がいるんだけど…妹の名前は美雪……えっ?なんか不思議…』

冴子は、美幸の母の顔を見て言った。

『へぇー…お姉さんが一美(かずみ)で一美(ひとみ)と字が同じ。で、妹さんが美雪…呼び方こそ違うけど字は同じなんだ…。二人は幾つ歳が離れてるの?』

美幸の母が興味ありげに冴子に聞いた。

『えとね…。確か9つ離れてるはず…』

『あら…一美(ひとみ)と美幸と同じだわ…』


冴子と美幸の母が、そんな話をしているとき…。

美幸の付き添いを、母と交代にきた一美(ひとみ)が病院の敷地内に入ってきて、こじんまりとした敷地内の広場を抜けようとした時、広場の端の方にいる広恵と一美(かずみ)が居るのが見えた。

二人は大きな声を出して、芝生に顔を近付けながら何かをしているようだった。

しかし、その声と姿は一美(ひとみ)にしか聴こえていないし一美(ひとみ)にしか見えていなかった。

『あ~~っ!ダメだっ!どうしても掴めない!』

『はいはい!もっと気合入れてっ!集中力高めて!絶対ボールペンで字が書けるようになるっ!って思わなきゃっ!彼氏と妹さんに伝えたいこと伝えられないよ?!ほれっ!頑張れ!』

『ひぇ~~広恵さんの性格が変わった~!』

『ふふふっ!ボールペンに見立てた小枝をつまめるようになるまでご飯抜きね』

『へへーんだ!アタシたちはご飯食べなくても平気だもーん!』

広恵に対して、あかんべーをする一美(かずみ)。

『くそー!そうだった…』

広恵と一美(かずみ)は、ケラケラ笑いながら孝と美雪に伝えたいことを伝えるべく、ボールペンを持てるように小枝を使って練習していた。


『あの人たち幽霊なのにやけに明るい人たちだな…。彼氏と妹さんに伝えたいことをボールペンで文字にして伝えようとしてるのか…。ん~~…、あの人たちは悪い幽霊じゃないから私が間に入っても良いんだけど…。でも、ちょっと不味いかな…。私が関わって、また美幸に悪い影響出ちゃうかも知れないし…。ここはあの人たちがボールペンを使えるようになることを願おう…』

一美(ひとみ)はそんなことを思いながら、美幸の病室に向かった。

院内に入り、一美(ひとみ)は小児病棟に向かい美幸の病室へと向かった。

美幸の病室に入ると冴子と美幸の母が話をしていた。

『あっ、冴子叔母さん!こんにちは』

『おー、一美(ひとみ)ちゃんお帰りー』

冴子には兄が二人いて、長男の子供が一美(ひとみ)と美幸で、冴子は二人の叔母にあたるのだった。

『一美(ひとみ)…冴ちゃんが一美(ひとみ)に話があるんだって…』

『えっ?何々?』

『あっ…でもね、アタシあまりゆっくり出来ないんだった…。今度ゆっくり話すよ。アタシの友達の事なんだけどね。じゃ、ゴメンねお姉さん。美幸ちゃんの手術の日が決まったら連絡下さい』

『うん、わかった。必ず連絡するよ』

『お願いします。じゃ、一美(ひとみ)ちゃん、今度ゆっくりお話しよ。じゃ、お姉さん、美幸ちゃんの手術の日にまた来るね』

冴子はそう言って、手を振りながら部屋を出ていった。

『ママ…叔母さんの話って何?』

『ん~…、今度ゆっく聞いてごらん?一美(ひとみ)も興味ある話かな…』

『え~、何だろう…』

『まぁ…、今度冴ちゃんに会ったときにわかるよ』

一美(ひとみ)の母親は、そう言いながら、少し熱が下がった美幸の額の汗をタオルで優しく拭いた。


そして…、美幸の病室を後にした冴子は病院を出て、病院の敷地内である広場を通り抜けるとこだった。

広場の片隅で、ボールペンに見立てた小枝を、つまみ上げようとしている一美(かずみ)の横にいた広恵が広場を歩く冴子を見ていた。

『ねぇ、一美(かずみ)さん。あの人一美(かずみ)さんのお友達じゃない?』

芝生に顔を近付けて、四つん這いのような格好をして小枝をつまみ上げようとしていた一美(かずみ)は、広恵の言葉に顔をあげた。

その瞬間に冴子を見ていた広恵は、目の前にいる一美(かずみ)に視線を戻した。と同時に『ヒィイィィィ!』と声を出して尻餅を着いた。

そして、そのまま両手両足を慌てて動かし、3メートルほど後退りした。

広恵の目の前にいた一美(かずみ)は四つん這いなりながら髪を前に垂らしていて、髪で前が見えにくいから顔を(グィッ)と上げて眼を大きく開いて瞼の上の方に白目を覗かせていた。

そんな格好の一美(かずみ)は、ホラー映画の(貞子)そのままだった。

『どしたの?広恵さん!』

髪を掻き上げて、普通の顔に戻る一美(かずみ)。

『あー、ビックリした!心臓止まるかと思った…』

『何言ってるんですか!アタシたちは、もう止まってるじゃないですか!お茶目な広恵さんだなぁ…』

『あっ…』

思わず左胸に手を当てていた広恵は、ばつ悪そうに一美(かずみ)の方へ戻り、気を取り直して冴子の事を一美(かずみ)に話をした。

『えっ?なんで冴子がここにいるんだろ』

冴子は、既に広場を抜けてタクシーに乗り込むところだった。

『どしたんだろう…冴子、どこか具合悪いのかなぁ…』

一美(かずみ)は、冴子が乗って走り去るタクシーを見つめていた。



⇒一年間だけの約束…後編 1の続きを読む

移り行く日々の徒然に…


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決意!(日記のようなもの…)

2018.02.13(06:55) 169




思い通りに進めぬ道を

右へ左へさ迷いながら

歩く我が身の影見つめれば

右へ左へまとわりついて

離れぬ影は重たくて

重たい影をひきずりながら

霞む未来を見つめてみたら

揺れる心が連れてきた

涙で何も見えなくなった…




おはようございます。

ブログ更新サボってました(^_^;)

そんな今の私は…


毎日が耐え難い間接リウマチの痛み…

腎臓に関しては真っ赤な血尿もまだ出てる…

リウマチも腎症も進行性の病気と言われ、これといった治療法もなく進行を抑える治療のみ…

眠れない頭痛と全身の痛み…

そして間違いなく悪化すると…


仕事もできず、会社も退職。

今まで休職していた期間の保険料の立て替え分も会社に支払うように言われた。

残りの傷病手当てで返せるだけ返したら収入は完全に途絶える…

生活保護にしても、何かしらの収入があるうちは受けられない。

そのささやかな傷病手当てさえ、保険料の立て替えに消えるわけで…

情けのない社会の仕組みに生きる力も失せてくる。

私一人では生きてはいけない。

今の私には、パートナーの存在がとても大きい…。

もしも、パートナーが居なかったら私は色んな意味で落胆し、色んな意味で諦めていたと思う。

何かと気遣ってくれるパートナーは、精神的な苦痛を和らげてくれる私の心の拠りどころであり、私が生きることの支えになってくれている。

パートナーの気持ちに応えるのが私の生きる糧。


どこまで痛みに耐えられるかわからないけど…

どこまで精神的に耐えられるかわからないけど…

今の私に出来ることは薬をキチンと飲むこと…

治療に専念すること…


その前に、社会保険も国保に切り換えなきゃ…

でも、国保に切り換えても保険料の支払いができない(^_^;)

そうなると…やっぱり生活保護に頼るしかないなぁ…


手続きいっぱい(^_^;)


頑張るしかない!



と、いうことで…

またチョコチョコブログ更新していきます✨




美香。。。


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2018年02月
  1. 告知された、がんという病気…(02/27)
  2. 一年間だけの約束…後編 1(02/26)
  3. 決意!(日記のようなもの…)(02/13)