リネージュ2 二次創作長編小説 12
極悪非道ヌルカ血盟軍

処刑場の中の中断層へと繋がる階段でグラディエーター、レディックを追いかけてきた集団を、ガルシニア、ラシュ、レディック三人のグラディエーターが階段を塞いだ。
メリーはセシル、ローズ、ハミル、アンナ達メイジのガードに着いていた。
バタバタと階段を駆け降りてくる集団が、ガルシニア達に月明かりの下で、はっきりと見えてきた。
ガルシニア達のパーティーより遥かに人数が多かった。
20から30人はいるように見えた。
だが、ガルシニアもラシュも怯む事はなかった。
むしろ、この状況を楽しんでいた。
『兄貴!ワクワクしてきたぜ!』
ラシュが言うと
『俺もだよ!やっぱり血筋だな!!レディック!無理するなよ!取り敢えず俺とラシュに任せとけ!』
レディックは『ラシュ』という名前を聞いて、はっ、とした。
この人がラシュ?
じゃこっちの人は…ガルシニア?
レディックが、最強のグラディエーターになるべく目標としてる二人だった…
グラディエーターとして、最強、と言われる二人の名前を知らないファイターはいなかった。
レディックはガルシニアに言われるまま少し後ろに下がった。
その時、ガルシニアとラシュの5メートルほど前方に、レディックを追いかけてきた集団が立ち止まった。
集団の先頭にいた二刀を持った厳つい体の男が、ラシュとガルシニアの後ろにいるレディックを目敏く見つけた。
『そこにいる男を、こっちへ渡してもらおうか』
そう言って一歩前に出た。
『嫌だね!』
ガルシニアが言った。
『ならば、その男とお前らの装備もろとも力付くで奪うまでよ!ついでに女どももな!!』
厳つい体の男は、そう言って二刀を構えた。
『ほぉ…果たして貴様らに奪うことができるかな?なぁラシュ』
『まず、無理だと思うがな』
ガルシニアとラシュも二刀を構えた。
ラシュという名前を聞いた厳つい体の男は一瞬怯んだが数秒間睨み合いが続いた。
『ガルシニアとラシュの兄弟か?』
厳つい体の男は剣を構えながらガルシニアとラシュを睨み付けた。
『あぁ…その通りだ…糞野郎!怪我したくなかったらさっさとこの場から消えろ!』
ガルシニアは厳つい体の男を睨み返した。
『てめぇらが最強だろうがなんだか知らねぇけど、これだけの人数相手に二人で勝てると思ってんのか!ばぁかが!』
厳つい体の男は、見方の人数が多いのをいいことに、尻込みしながらも強気に出た。
『そんなこと言って後悔すんなよ?くず野郎!』
ラシュも男を睨み付けた。
お互いが相手の出方を待っていた。
ガルシニアとラシュにエルダーハミルの強化魔法がかけられた。
レディックにもアンナの強化魔法がかかった。
同時にパルチザンにアジトを持つ血盟の集団も味方の強化魔法をかけはじめた。
両陣営共に強化魔法をかけおわると、また沈黙が訪れた。
その時だった。
血盟集団がひしめき合う階段の上の方から一本の矢が飛んできた。
その矢はガルシニアの肩を掠めて後方にいたメリーのシールドに乾いた音をたてて矢が弾かれた。
その音が合図かのように、ラシュとガルシニアが矢の如く飛び出した。
たちまち乱闘になった。
ラシュとガルシニアはお互いを庇いながらも、確実に相手にダメージを与えていた。
ガルシニアとラシュの剣術はヌルカ血盟集団を圧倒していた。
ガルシニアとラシュの二人をヌルカの血盟集団は突破出来なかった。
狭い階段では相手の人数は関係なかった。
ガルシニアとラシュの鮮やかで華麗な剣さばきに、ヌルカの血盟集団はバタバタと倒れていった。
クラゥディとマリマルは階段の上にいる敵を攻撃していた。
階段の上の方で、スナイパーの弓から矢が放たれようとしていたのを、マリマルは見逃さなかった。
素早く狙いを定めマリマルは矢を放った。
矢を放とうとしていたスナイパーの肩にマリマルの矢が突き刺さった。
弾みでスナイパーの矢は前にいた見方のヒーラーの背中に突き刺さってしまった。
クラゥディも他の弓職にハリケーンを打ちはなっていた。
ラシュとガルシニアは、相変わらず鮮やかな剣捌きでパルチザン、ヌルカの血盟軍を倒していった。
それでも、ヌルカの血盟軍の二人がガルシニアとラシュの間をすり抜けローズ達メイジに襲い掛かっていった。
レディックとメリーは素早く応戦した。
また一人ラシュとガルシニアの間をすり抜けてきた者がいた。
身体の大きな男は(オーク)という種族で自分のスキルを上げていく事で、とてつもない体力と攻撃力を身に付けられる人種である。
その男がローズやセシル達に襲いかかろうとした。
やはり体力を回復できるヒーラーや攻撃力や防御力を高める事ができるメイジ達を執拗に狙ってきた。
クラウディ が魔法攻撃ハリケーンをオークの男に放った。
オーク種族は、物理的な攻撃と防御にはとても強いが魔法耐性がとても低かった。
メリーとレディックは先にガルシニア達の攻撃を掻い潜り、やはりセシルやローズに襲いかかろうとしていた二人を相手に戦っていた。
そして物理的な力の弱いメイジだが、男であるエルダーハミルも接近戦にもつれ込んだ。
力は弱いが攻撃力の高いサムライロングソード2刀、武器の強化を16回行ったオーバーエンチャント+16の威力は伊達ではなかった。
屈強な体をもつオークに与えるダメージは大きかった。
セシル、アンナ達は、オークの男の足を止めて、その場所から動けなくする魔法『ルーツ』を使い微力ながらも攻撃魔法やポイズン(敵に毒をかける魔法)を使い、怪物並みのオークの体力をジワジワと奪っていった。
ローズは最後方でパーティー全員の体力を回復できる、グループヒールや個々に体力を素早く回復できるバトルヒールを使い分けパーティー全員の回復に専念していた。
クラゥディはオークにハリケーンを打ち続けていた。
さすがに体力がありタフなオークでも、スペルハウラーのレベルの高い攻撃魔法ハリケーンを立て続けに受けていては、たまったものではない。
自慢の体力も、たちまち無くなって立っているのがやっとだった。
そして、マリマルは敵のヒーラーにダメージを与えていた。
それぞれが的確な役目を果たし、敵軍は半分ほどに減っていた。
ラシュとガルシニアの前には怪我を負った敵軍が階段を埋め尽くしていた。
ガルシニアとラシュ、クラゥディ達は命を奪う事はしなかった。
前線に復帰できない程度のダメージに留めていた。
それでも威勢のいい者もいて、ガルシニアとラシュに果敢にアタックしてくる者もいたが、ガルシニアとラシュには敵わなかった。
屈強なオークもクラゥディのハリケーンに倒れていった。
そしてリーダー格のダークエルフ、2刀を持ったブレードダンサーがヌルカ血盟集団を押し退け前に出てきた。
世界樹を母とする聖に属するエルフとは対照的な、闇に属する青白い身体を持つダークエルフ。
クラゥディやセシル、アンナも強力な闇の力を持つダークエルフだ。
ダークエルフファイター(ブレードダンサー)は、ガルシニアやラシュのように剣術に特化したファイターで、2刀に精通したブレードダンサーはラシュやガルシニア、グラディエーターと同等な剣術を持っていた。
ダークエルフの男は、グラディエーターのガルシニアとラシュの前に立ちはだかった。
『ダンサーか?』
2刀を持つダークエルフを見てガルシニアが口を開いた。
ダークエルフの男は、ガルシニアの聞いた事には応えず
『あんたらグラディエーターのガルシニアとラシュか?』
逆に男が探るような目で口を開いた。
『ほぅ…初対面なのに俺達の名前を知ってるとはな…名乗る手間が省けて嬉しいぜ!』
ガルシニアはダークエルフの男の顔を見ながら相手の出方を探ろうとした。
が、相手の男は自らの感情を、うまく消していた。
ガルシニアもまた、自分の出方を悟られないようにしていた。
ダークエルフの男は、まだ怪我をしていない兵に負傷したヌルカの同盟軍である兵達を、つれていくように命じた。
残ったのは、ヌルカ血盟集団の数名とダークエルフが6人だけになった。
負傷した者が次々と階段の上の方へ運ばれていく中、グラディエーター、ガルシニアとブレードダンサー、ダークエルフの男は睨みあったまま、お互いが相手の動きを探っていた。
ダークエルフの男が、不意に口を開いた。
『あんたに一度会ってみたいと思っていた…というか…会うつもりでいた…』
『ほぅ…そりゃ光栄だな』
そう言いながら、ガルシニアはサムライロングソード二刀を持ち直し体を低く構えた。
ダークエルフの男も身構えた。
数秒間の睨み合いの後、二人は、ほぼ同時に力強く地を蹴り剣を突き出した。
剣と剣が激しくぶつかる音と同時に火花が闇の中で弾けた。
そこから絶え間ない剣と剣のぶつかり合いが始まった。
防御の盾を持たず二刀を持つ二人は剣が盾となり武器となる。
二人の攻防戦は凄まじく激しいものだった。
しかし、お互いの剣が相手の身体に触れる事はなかった。
だが、ガルシニアの剣術にダークエルフの男は徐々に後退していた。
ダークエルフの劣勢を察したヌルカ血盟の一人が横から加勢してきてガルシニアに剣を振り下ろしてきた。ガルシニアは、それを片手で弾き飛ばした。
それは凄まじい力だった。
ヌルカ同盟のガルシニアに振り下ろされた剣は綺麗に二つに切断された。
『手を出すなっ!!お前らも怪我人運んでいけ!』
ダークエルフの男は加勢してきた者に怒鳴り付けた。
一方ガルシニアの弟であるラシュは黙って見ていた。
こんなにも真剣な兄を見るのは久しぶりだった。数年前のコロシアムでの決闘トーナメント以来にみる兄の真剣な力強い姿だった。
しかし一方で、ローズは気が気ではなかった。
ラシュとクラゥディにガルシニアに対してのヒール(回復魔法)はしないほうがいい、と止められていた。
男同士のプライドをかけた闘いらしいが女のローズには関係ない、と言わんばかりにヒールをかけようとしたが、今度はセシルに止められた。
『ローズ、ガルシニアは大丈夫よ。ラシュだって、みんなそう思ってるよ。あなたの旦那さんになる人は最強と言われているグラディエーターなんだから。あなたは純粋なヒーラーだから心配になるのはよくわかるけどね…』
ローズは渋々頷き、事の成り行きを見守る事にした。
『ラシュ!!お前は絶対に手を出すんじゃねぇぞ!』
ガルシニアは弟のラシュに言った。
勿論ラシュは手を出すつもりはなかった。
ただ、兄であるガルシニアの剣の捌きをじっと見つめていた。
相変わらず剣と剣の激しいぶつかり合いが続いていた。
互の剣は時折風を切る音がして、月の光に光る剣の光跡が鮮やかに見えるほど二人は素早い剣捌きの攻防戦を続けていた。
そして激しい攻防戦の末、ガルシニアの剣はダークエルフの剣を弾き飛ばした。
すかさず、ガルシニアは右手に持った剣をダークエルフの鼻先に突き付けた。
『さぁ!お前の負けだ!』
ガルシニアは勝利を宣言した。
『さすがに最強と言われているだけあって素晴らしい剣捌きだな…』
ダークエルフの男は、そう言ってから自分の後ろをみて、ダークエルフだけしかいないことを確認して、少し間を置いてまた口を開いた。
『俺はヌルカの同盟軍隊長レイというものだ。今は訳あってヌルカの傘下にいるが、何れ復讐のためヌルカを倒し奴のアジトを我々の血盟軍の物にしたいと思っている。だから・・・あんたの力が欲しい。報酬はあんたの望む物を出してもいい…力を貸してくれないか?』
ダークエルフ、レイは剣を置きガルシニアを真っ直ぐ見つめた。
ガルシニアも剣を納めた。
『それはできない。俺達はこれから胞子の海へ行く。あんたらに手を貸す余裕はない。それに人殺しに手を貸すなんてごめんだね』
ガルシニアは傍らに倒れているエルフの女を見つめた。
その横にはレディックがいた。
レイも倒れている女を見た。
『死んでいるのか?』
レイが誰にともなく聞いた。
その言葉を聞いたレディックは怒りを露にした。
『貴様らが殺したんだろ!』
左手に持った剣を振りかざした。
『まてっ!レディック!!』
傍にいたラシュが、ダークエルフのレイに振り下ろされようとしたレディックの剣を自らのサムライロングソードで止めたのだった。
『なぜ止める!!』
レディックは怒りに震えていた。
『奴は剣を置いている・・・何か事情があるようだから、少し待ってやれ』
レディックは収まらぬ怒りに打ち震えていたが、何とか自分を抑える事ができた。
『あんたの女か?すまないことをした・・・ただ・・・言い訳じみた事は言いたくないが、俺の血盟軍は城を攻める時意外は、むやみに人は殺さない。恐らくヌルカの一味だろう・・』
少し間をおいて、レイは小物入れから何かを取り出してレディックに差し出した。
『これを持ってすぐにエルフ村へ行くといい。ヌルカの血盟倉庫に入ってたものを持ち出してきた。・・・そしてこれを、村の長老に渡せば彼女を生き返らせる事ができるかもしれない・・・ただし、死んでから24時間以内に、この復活のスクロールを使わなければ効力は無い。ワイバーンを召喚してやるからすぐにエルフ村へ飛んで行け。山を越えられれば12時間くらいで着くだろう。山を越えられなければ、エルフ村に着くのはギリギリの時間だろう・・・ワイバーンにとっては山を越せるか越せないかギリギリのラインだ。無理だと思ったら無理せず最短ルートを探して行ってこい。・・・・・愛する者を無くした気持ちは、俺も痛いほどよくわかる。俺の妻と娘はヌルカに殺されたんだ。そして俺はヌルカへの復讐を誓った。奴はとてつもなく強い。だから同盟軍と称して中に入り込み、仲間を増やして内部からヌルカの牙城を崩してやるつもりだ』
レイは、ガルシニアの方を向いた。
『あんたと弟ラシュの力が欲しかったが無理だったな・・・そして、俺もあんたに勝てないようじゃヌルカにも勝てやしねえや。まだまだ修行が足りねえな・・・』
一通り話し終えたレイは剣を拾い上げ踵を返し階段を上っていこうとした。
ヌルカの血盟軍はもういなくなっていた。
レイの血盟軍ダークエルフだけは残っていた。
『レイさんよ…あんたがヌルカの牙城を崩そうとする時に、この仕事が終わっていてやる事が無ければ加勢に行ってもいいぜ・・・なぁラシュ』
『兄貴が行くんなら、もちろん俺も一緒だ。俺達はグルーディンの町にいるから呼びに来てくれ』
ラシュは剣を高々と上げながら言った。
『すまない・・・あんた達の気持ちに感謝する』
レイは丁寧に敬意を現す挨拶をして、階段を上っていった。
他のダークエルフ6人もガルシニアとラシュに敬意を現す挨拶をしてから、レイの後に続き階段を上っていった。
レイと数名の仲間は闇に消えていった。
『ふぅ…とりあえず一段落だな…』
ガルシニアが独り言のように呟いた。
『兄貴…今のレイって奴、なかなか腕のたつ奴じゃなかったか?』
ラシュが兄のガルシニアを見て言った。
『あぁ…奴はかなりの剣術を身に付けてるな…俺の剣が奴の体に一度も触れなかったからな…』
ガルシニアは顎を擦りながらラシュを見て言った。
そんなとき、レディックは復活のスクロールを見ながら半信半疑でいた。
『これ・・・・・ほんとに生き返るんだろうか・・・』
独り言のように呟いた。
エルダーのハミルがレディックに見せてくれ、といって復活のスクロールという巻物を手に取り調べてみた。
『驚いたな、こいつは本物の復活の儀式に使う呪文の書かれたスクロールだ。簡単に手に入る代物じゃないんだが・・・まぁ、あいつの言ってた事は嘘じゃないな。レディック、すぐにエルフ村に行ったほうがいい。できるだけ早く』
『わかりました』と、レディックは言ってからワイバーンに恋人であるポーリーを乗せた。
自分もワイバーンに乗り出発の準備をした。
『皆さん、ありがとう。エルフ村へ行ってきます。皆さんもこれからの道のり気をつけて・・・ガルシニアさん、ラシュさん、あなた達の剣術、とても勉強になりました。これから自分も腕を磨いてあなた方のような最強のグラディエーターになりたいです・・・では・・・行って来ます』
ワイバーンは力強く羽ばたき暗い空へと舞上がっていった。
『気をつけてなー!』
それぞれがレディックに別れを告げた。
『よし!それじゃ俺達も行きますか』
ラシュはパーティーの最後方に戻った。
皆は隊列を元に戻し階段を上り始めた。
階段を上りつつ、クラゥディは、ふとサラの事が頭の中を過ぎっていたのだった。
続く…

にほんブログ村

人気ブログランキング
スポンサーサイト