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ショートストーリーへようこそ(^-^)/♪

2016.08.20(23:08) 184


【ようこそ美香の創作ショートストーリー集へ♪】

いらっしゃいませ♪

コミカルホラーやファンタジーなどを書いております。
また、長編二次創作(まだ途中(^_^;))などもあります。

なにも用事がなく、お時間のあるときに読んでいただければ幸いです♪


【目次】

【傘】ホラー👻

置き忘れられた一本の傘のお話です👻



【シャラの木の夢】ラブファンタジー

【1】 【2】 【3】



【虹の雫】ショート



【いつものように…】ファンタジー




【人間になった猫】只今創作中♪




【行き先の無いドライブ】ファンタジー完結
(あらすじ)

とある海岸で知り合った男女。
二人は付き合うごとになった…。
そして、初デートは彼女の手作りのお弁当を持ち
ドライブデートへと出発するのだが…。




【お化けの憂鬱な長い夜】コミカルホラー完結
(あらすじ)
とある廃墟の村へと肝試しにいく男女5人と廃墟の村を荒らされないように人間を追い返そうとするお化けたちの一夜の攻防戦♪
果たして勝者は?



【天使の仕事】ファンタジー完結
(あらすじ)
見習い天使のエヴリルは星の欠片を集め、欠片の中に閉じ込められている人間の願いを叶える仕事をしている。
ペガサスと共に星を飛び越え願いの主と共に(遇いたい)という願いを叶える物語を天使エヴリルの視点で書いています。



【海辺のバンガロー】コミカルホラー創作途中
(あらすじ)
男女5人と(出る)という、海辺のバンガローでのお化けと5人の攻防戦♪
お化けの長老率いるお化け達の、あれやこれやの追い返し作戦に男女5人はどうなるのか…
その壱【その弐】【その参】
(いま、一生懸命続きを書いております(^_^;))



【烏帽子の真珠】ラブファンタジー完結
(あらすじ)
いつも波打ち際で遊ぶ少女と海の恋物語。



【一年間だけの約束】ラブホラー完結
(あらすじ)
桜井一美は不慮の事故で命を落としてしまう。
一美(かずみ)は自分が命を落としたことに気付いていなかった。
そして一美が運び込まれた病院で広江という幽霊と、幽霊が見える姉妹と出会う。
広江は一美にこの世に未練を残さないためにも、婚約者の斎藤孝と妹の美雪に今の自分の想いを、天に召される四十九日までになんとか二人に伝えようとするラブホラー。
【1】 【2】【最終章】


【番外編18禁( 〃▽〃)】エロスコメディ完結
(あらすじ)
ログレスというスマホゲームをモチーフに書きました。
性描写のあるショートストーリー。

男女二人が、レア物のアイテムを探しに山に登り遭難するというストーリーw
性描写に拒絶感を持たれる方、または、よいこはご遠慮くださいますようお願い致します(*^^*)b


リネージュⅡの二次創作長編ファンタジー小説はカテゴリーからお入りくださいますようお願い致します♪


それでは、気になるお話へお入りください(*^^*)

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移り行く日々の徒然に…


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海辺のバンガロー…その壱 👻ヽ(;゚;Д;゚;; )ギャァァァ

2016.08.22(16:03) 47


『ねぇねぇ♪この海辺のバンガローだけどさ…すごく安いと思わない?』

美香は、スマホで格安バンガローを見つけた。

すると、他の四人が顔を近付けてきた。

夏休みに、仲の良い5人組でバンガローを借りてワイワイやろうよ♪と、いうことになり…

美香の家に5人で集まり、あーでもないこーでもないと言いながら、それぞれがスマホで好みのバンガローを探していた。

偶然、美香が見つけた【海辺のバンガロー】に、皆が注目した。

合計8棟が、砂浜に繋がる小高い丘に建っている写真が載っていた。

『お~♪格安もいいとこじゃん♪風呂付き、エアコン付き、寝具付きで1人頭1000円か~♪目の前が海ってのもいいねぇ~♪』

いつも、おちゃらけてる雄二は気に入ったらしい。

『悟志!ここにしようぜ‼』

雄二は悟志に同意を求めた。

『へぇ~、海が目の前でこの料金かよ…外観もコテージ風だな。俺もここでいいぜー。料金安い分、冷蔵庫も完備だから酒もいっぱい買えるしな♪』

普段は大人しいが、お酒が入ると怖いもの無しの悟志も乗り気になった。

『絵理はどうよ?』

雄二は、絵理の顔を覗きこみ返事を待った。

『う~~ん…格安ってのは良いんだけど…海の近くっていうのが…ちょっとね~…お盆の時期に海…やめたほうがいいかもよ…?』

絵理は意味ありげに、にやりと笑った。

好奇心旺盛な絵理はオカルト好き。でも、本人は一度も心霊現象等に会うこともなく今に至る。

『俺は何処でもいいぜ~…俺は何処に行ってもハマる男だし~♪』

確かに顔はイケメン、何処に行ってもその場に馴染む性格で、ナルシストの浩二がボソッと呟いた。

『はいはい…アンタは凄いよ~。何処に行ってもハマる…イコール…何処に行ってもその場に馴染む♪カメレオン浩二君♪』

雄二が浩二を茶化した。

『誰がカメレオンだって~このやろ~♪左右の目んたま別々にに動かしたろか~♪』

浩二は雄二の頭を両手で押さえて、自分の顔を近付けた。

『ば、ばかやろっ!それ以上近付くなっ!』

二人の顔は今にもくっつきそうなくらい接近していた。

『ほ~ら、カメレオンは舌も長いんだぞ~♪』

浩二は、舌をペロペロ出しながら更に顔を近付けた。

『絵理っ、美香っ!どっちでもいいから浩二と代わってくれ~~』

『どさくさに紛れて何言ってんのよっ!』

雄二の横にいた絵理が雄二の頭を指で小突いた。

『いっそのことくっついちまえw』

今度は、悟志が浩二の頭を小突いた。

ぶちゅっ‼Σ(`Д´ )

二人の顔は、あっさりくっついたのだった。

『あらまw』

『おめでとーw』

『おー♪二人とも幸せになっ♪』

絵理、美香、悟志が二人を見て手を叩いた。

『ペッペッ!絵理か美香なら未だしも…よりによって浩二とかよー…』

雄二は唇を、手の甲で拭きながら言った。

浩二は何故か頬を赤く染めているのだった。

『てめーw真剣に照れてんじゃねーよw』

雄二が浩二の後頭部に、パチーンと突っ込みを入れた。

『ちょっとーっ!未だしもってどういう意味よっ?』

美香が突っ込みを入れた。

『ほんと、失礼ねっ!でも、、、まぁ…二人の結婚式には出席してあげるからw』

絵理が、更に突っ込みを入れた。

『うるせー!!』

雄二が叫んだ。

『まぁまぁ…ゆうじこうじの漫才はそのくらいにして、、、美香、そのバンガローの管理してるとこに電話してみなよ』

悟志が話を元に戻した。

『OK、電話してみるね』

美香はバンガローの管理会社に電話をかけた。

『…あ、もしもし……おそれいりますが、○○町のバンガローの事で、お電話させていただきました…』

他の四人は、美香の電話の対応をなんと無く聞いていた。

『…はい、5人です…はい…はい…料金は、このサイトに提示してある料金でよろしいのですね?…はい…はい……えっ?はぁ…はい…そんな噂が…はい…はい、、、解りました。では、皆に相談してから、またお電話させていただきます…』

美香は、通話を終えてスマホをテーブルに置いた。

『ねぇねぇ美香。噂話って何?』

美香が、スマホをテーブルに置いたと同時に絵理は美香の顔をみた。

『格安の意味が解ったよ…』

そう言って、美香は渋い顔をした。

『なになに?幽霊が出るとか?』

絵理が瞳をキラキラさせて美香の顔を覗きこんだ。

『その通り!…でも…あくまでも噂、ということらしいけど…』

美香は、ボソボソっと言った。

『行こうよ行こうよ~~そこのバンガロー行こうよ~♪』

駄々っ子のように、皆に懇願する絵理。

『俺、幽霊って見たことないなー…よし、真相確かめに行くか?』

雄二は、そう言って皆の顔を見た。

『へへっ♪もし、本当だったら俺の酒で清めて成仏させてやるぜ♪』

悟志も賛成した。

『よく言うぜw悟志は酒が入ってなんぼ、の男だろーがw酒が入る前にお化けちゃんにバッタリ出会ったらその場でちびるんじゃねーの?』

雄二が悟志をからかった。

『心配すんな。バンガローに着く前には俺の体は酒に清められてるからよ♪お化けの方が逃げてくぜ?』

『うんうん、悟志ならあり得る…』

絵理が悟志の言葉に頷いた。

『で…美香と浩二は?』

雄二は二人の顔を交互に見た。

『わたし…お化け屋敷とかは平気だけど…本物はちょっと怖いかな…』

美香は苦笑いをしながら雄二の顔を見た。

『美香、なんなら俺の傍に居ればいい。ずっと抱き締めててやるからよ…』

悟志が照れ笑いを浮かべて両手を広げた。

『それってお化けより危なくない?w』

絵理は、わざと冷ややかな視線を悟志に向けた。

『じょ…冗談に決まってるだろ~…』

半分本気だった悟志の弁解に浩二が突っ込みを入れた。

『い~や、今のは冗談じゃねーだろーwちょっと照れが入ってるとこが冗談にゃ見えなかったぜ~♪悟志くんw』

『うるせーよwお前は雄二とべたべたくっついてろよw』

悟志に言われて、浩二は雄二に熱い視線を投げかけた。

『そんな目で見るなーw』



かくして、5人の一行はそれぞれが会社のお盆休みに合わせて…

恐怖の海辺のバンガロー(お化け達にとってw?)に行くこととなったのであります(*^^*)b


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海辺のバンガロー👻 その弐 ((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル

2016.08.29(12:28) 50

雄二、浩二、悟志、絵理、美香の5人は、格安のバンガローを見つけ、それぞれが会社のお盆休みを合わせて【海辺のバンガロー】へ行くこととなった。

しかし、その海辺のバンガローには幽霊がでる、という噂があった。

だが、5人は…出る、という噂を知りながらも【海辺のバンガロー】へと向かうのであります。

待ち受ける恐怖…忍び寄る陰…そして…

飛び交う悲鳴…ヽ(;゚;Д;゚;; )ギャァァァ


では…続きをどうぞ…👻



浩二達5人の乗った車は、バンガローまであと五キロの所まで来ていた。

そして、そこから道路は未舗装になっていて、砂利は敷いてあるものの、数年は整備されていないようで、所々に大きな轍ができていた。

『すげー道悪だな…』

浩二は体を左右に振られながらも、大きな轍だけは巧みに避けながら車を走らせていた。

道幅は相変わらず狭く、狭い道に覆い被さるように林道の左右の草木が、時折、車のボディーをなぞるようにカサカサと音をたて、低く垂れ下がった木々の枝は…車の屋根を…コンコン…コツン…と乾いた音をたてて叩いていた。

そして、5人の乗る車の前方に太い木の枝が、道の上に張り出していた。

その枝の木の葉に上手く隠れている一人のお化けがいた。

『ひっひっひ…奴らの車がこの下に来たら、屋根に乗って、人間の子供に化けたこの手を横のガラスにペタッと貼り付けて脅かしてやるぜ…いや、待てよ…顔を半分だけ見せるのもいいかもな…よし♪それでいこう♪』

木の枝に隠れている、人間の女の子に化けたお化けは車が自分の下に来るのを、息を潜めて待っていた。

しかし、車はお化けが隠れている道に張りだした木の枝の数メートル手前で停まったのだった。

『あれ?なんでそんな中途半端な所で停まるんだよ~…』

お化けは、既に15分ほど木の枝にしがみついていた。

蚊に刺され、蛇に驚き蝉にオシッコをかけられながらの15分…

お化けが動く度に、ユサユサと枝が揺れていた。

その頃、5人の乗った車内では…。

『浩二~、ストップストップ~♪ちょっとオシッコ(^_^;)』

一番後ろの席の悟志が車を停めさせたのだった。

『わり~わり~♪すぐ終わるからさ♪』

悟志は、真ん中の席のウォークスルーを抜け、絵理の横のドアから外に出た。

『俺も~♪』

『俺もしてこ~♪』

雄二と浩二も外に出た。

『うわっ!』

『ひぇ~』

『半端ね~な!この蚊の大群(^_^;)』

外に出た男達は、矢継ぎ早に声をあげた。

『絵理!虫除けスプレー貸して!』

絵理は窓を少し開けて虫除けスプレーを悟志に渡した。

3人が、それぞれ体にスプレーをかけると、蚊は3人を遠巻きにぶんぶん飛んでいた。

スプレーを絵理に返し、3人は車に背を向けた。

『これで、心置きなくションベンできるぜ』

『だな~♪』

『うんうん♪』

3人は、ハーフパンツの前を開けて用を足そうとしたとき、遠巻きに飛んでいた蚊が3人の股間目掛けてまとわりついてきた。

『わーわー( ;`Д´)』

浩二が慌てて股間を手で隠したw

『ちょっ、この蚊挑戦的だなっ!俺は耳なし芳一かよ~(^_^;)』

雄二も慌てて股間を手で隠した。

『絵理ーっ!○ん○んにスプレーかけて~…』

雄二が叫んだ。

『絵理ー、俺も~♪』

浩二は嬉しそうに言った(^_^;)

『じゃ、俺は美香に頼もう♪美香~♪スプレーかけて~♪』

悟志は、後ろを振り返り車の中の二人を見た。

『勝手に刺されてろっ!w』

絵理は窓を少し開けて.美香と口を揃えて言ったのだった(*^.^*)

『そうだ、いい方法があるぞ♪』

悟志が横を向き二人を見た。

『何だよいい方法って…蚊に刺されないのか?』

雄二が悟志の顔を見た。

『おぅ♪多分なw尻文字書きながらすれば大丈夫w動いてりゃ蚊は止まらねぇだろ』

『尻文字って…宴会とかで時々コンパニオンがするやつか?w』

『そうそう、何とかの何とかはどう書くの?こー書いてこー書いてこー書くの♪ってやつw』

『あ~♪それ知ってる知ってる♪よ~し、やってみよ』

3人は横に一列に並び、一斉に放尿開始w

『あのね、のあの字はどう書くの?』

悟志の第一声w

『こー書いてこー書いてこー書くの♪』

3人は声を揃えてお尻で『あ』の文字を書くのだったw

『あっ!雄二っ!もうちょっと離れろよ~、ひっかかるだろーw』

『いーじゃねーか、ちょっとくらいひっかかったってw』

あーだの、こーだの言いながら3人は子供のように騒いでいた。

『まったく…男って生き物は…( ̄▽ ̄;)』

絵理が呟くと…

『いくつになっても子供だわ┐(-。-;)┌』

続けて美香が呟いた。

そして…

そんな3人を見ている者が絵理と美香の他にもう一人いた。

道端の茂みに向かい小用をしている3人の、ほぼ正面の木の陰に隠れて5人の様子を伺っていた、女のお化け。

『…まったく…3本そろっ…あっ(*ノ∀`*)マチガエタ…3人揃って何やってんだか(///∇///)』

女のお化けは顔を赤らめて、3人を見てから改めて悟志を見つめた。

よくよく見れば、 どことなく生き別れた彼氏に似ていた。

女のお化けは、不慮の事故でこの世を去り、彼氏への未練が強く残り、幽霊となり…いつも彼氏を見守っていたが、数年後に彼に新しい彼女が出来たことで、哀しみと未練の塊となった魂は、成仏できずにこの世をさ迷い…

何時しか、このバンガローの地へ辿り着いた。
そして…更に数年がたち…

強く残った未練と哀しみは、彼女の魂を徐々に実体化していき、自分の存在を彼氏に知ってほしいという願望が彼女を妖怪へと変貌させてしまった。

彼女の見た目は雪女のように綺麗な容姿をしていた。

自分が妖怪に変貌したことも忘れ、彼女は彼に自分の存在を知ってほしく、彼に会いに行った。

しかし、彼氏と生き別れて数年が経っていたので、彼は…既に結婚していて子供にも恵まれていたのだった。

彼女の哀しみは…深い深い哀しみとなり、幸せそうな人を見ると幸せを分けてほしくて人前に現れては手招きをするようになったのだった。

彼女は、このバンガローの地へ戻り、他のお化けや幽霊達と静かにこの地に住み着いていた。

そんな彼女は、元彼にどことなく似ている悟志を見て、数年ぶりに笑顔を見せたのだった。

そして、車の中に居る絵理と美香に敵意のある冷たい眼差しを向けた。

『あの二人は…彼に近付かせない…』

彼女は、そう呟いて…車の中に居る絵理と美香に邪念を送って自分の存在を見せつけようとした。

そんなことは知らずに、いつしか絵理と美香は、車の前方に見える道に張りだした木の枝を見ていた。

先程から不自然に揺れている木の枝に美香が気が付き、絵理の肩を突っついた。

『絵理…あの木の枝見て…あの枝だけ不自然に揺れてるんだよね…』

美香は不安な表情を浮かべて前方を指差した。

『ほんとだ…』

絵理は、すぐにバッグからデジカメを取り出し、写真を数枚撮った。

その時だった。

雄二、浩二、悟志の3人が車に戻ってきた。

前方の木の枝を注視していた絵理は、不意に悟志が開けた車のスライドドアにびっくりして、悟志の方を見てシャッターを押してしまった。

『お待たせ~♪』

悟志はドアを閉めて後部座席に戻った。

『あんた達、ちゃんと手を洗いなさい!』

絵理が男達3人に、ペットボトルの水を渡した。

そして、絵理が悟志にペットボトルを渡した時に…

絵理は、何とも言えない哀しみに包まれて自分でも、訳がわからず涙が溢れてきた。

『どうしたの絵理…』

美香が、突然涙を流した絵理の顔を心配そうに覗きこんだ。

『わかんない…なんか…急に哀しい気持ちになっちゃって…』

と、その時だった。

5人の乗った車の前方に見える、道に張り出している木の枝が、バキバキっと音をたてて折れた。

車内の5人は、一斉に前方をみた。

折れた木の枝は、浩二達に、これ以上先には行くな…と、言わんばかりに完全に道を塞いだ。

(くちょ~…いて~…思いきり頭から落ちた(*T^T))

おかっぱ頭の着物を着た女の子に化けていたお化けは、頭から落ちたため、頭のてっぺんは、ほぼ平らになり顔の鼻と口は体に埋もれ、両目だけがキョロキョロ動いていた。

(う~、顔が埋もれた…痛い…)

化けてる時のお化けの体は、すぐに元に戻れるように、とても柔らかいのだった。

(あ、あれっ?首が…元に戻らないぞ…( ;`Д´))

男のお化けは、自分の顔を両手で引っ張りあげるのだが、ズッポリ体にめり込んだ顔の半分は、容易に元に戻らなかった。

元に戻るには化けた時と同じ形でなければならない。

なので、今のお化けの状態では元に戻ることができなかった。

その時、車の中から雄二、浩二、悟志の3人が降りてきた。

(ま、まずい…あいつら降りてきたぞ…(;゜゜))

お化けは、そぉ~~っと木の葉の隙間から顔を出した。

幸い、雄二、浩二、悟志の3人は、お化けが隠れている道を塞いだ木の枝に背中を向けて、それぞれが訳のわからないポーズをとっていた。

とりあえず男3人記念撮影、ということで…スマホで3人が自撮りしていたのだった。

『さ~~て…この木の枝どうすっか…3人なら何とか引き摺って、そこの脇に寄せられそうだな』

悟志が3メートル程先にある右側の窪みを指差した。

『そこまでなら3人でいけそうだな!』

浩二も窪みを見て、枝が折れた部分を持ち上げようとした。

持てる所は折れた部分しかなかった。折れた部分から先は折れた太い枝からいくつも伸びている枝に葉っぱが密集していたのだった。

お化けは、その葉っぱの中に身を隠していた。

3人は枝の折れた部分を持ち、引摺り始めた。

(な、なんだ…こいつらなにする気だ?)

お化けは不安に陥った。

『よ~~し!この窪みに落としちまおうぜ!』

そして、そこまでの一部始終を見ていた女のお化け。

男のお化けが枝を折り、道を塞いだのを見て小さくガッツポーズをしたのだが…

事の成り行きを見ていて焦りだした( ;`Д´)

『あれは…わざと木の枝を折ったんじゃないのか…折れたんだ…早く逃げないとあそこから落とされちゃうじゃん…まぁ…お化けだから死ぬことはないけど…あの窪みの下は崖だし…お化けって言っても痛みは感じるからな~…よし、ここはアタシの妖術を使って、究極の哀しみを味あわせてやる!先ずはあの男から…』

女のお化けは、浩二に自分の哀しみを送り込んだ。

『やっぱり辞めようぜ…この木を落とすの…』

浩二が突然木の枝を離した。

『ん?どした?浩二…』

雄二が浩二を見ると、浩二は涙を溢し哀しげな顔で、横たわる木の枝を見つめていた。

『よし、次はあの男だ…』

女のお化けは雄二にも、自分の哀しみを送り込もうとした。

だが、上手くいかなかった。

『ん?なぜ妖術が送り込めないんだ?もう一度やってみよ…』

女のお化けは、もう一度力を込めて哀しみを雄二に送り込もうとした。

しかし、やはりダメだった。

車内で、お清めと称して悟志から受け取った日本酒が効を成したのだった。

その時、悟志が妙な気配を感じとって頭をぐるりと回らせ、やがて一点を見つめたのだった。

悟志の視線は、女のお化けがいる場所に向いていた。

女のお化けの姿は、鬱蒼とした茂みに隠れていて悟志からは見えなかったが、女のお化けは悟志の顔はハッキリと見えていた。

幸せの絶頂期に、自分が不慮の事故で生き別れた彼氏に似ている悟志を見つめていた女のお化け。

つい先程の、3本…いや…w3人の放尿シーンが頭を過った。

女のお化けの哀しみは消え、エッチな気分に照れ笑いを浮かべる女のお化け。

彼女の心とリンクしている浩二もまた、エッチな気分に顔がにやけていた。

そして、男がエッチな気分になれば…極自然に生理的現象が体に現れるわけで…(*ノ∀`*)

浩二はハーフパンツの前をモッコリさせるのだった(///∇///)

そんな浩二を見て、女のお化けは恥じらいを見せた。

『私ってば、はしたない…彼に嫌われちゃう…』

何年か振りに笑顔を思い出させてくれた悟志に、彼女の中で恋心が芽生えたのだった。

もちろん一方的な片想いで…悟志には彼女の気持ちは勿論、存在さえも知るよしもなかった。

彼女は浩二にかけた妖術(呪い?)を解いた。

『浩二…お前…どした?泣いてたと思ったらニヤニヤし出してよ…』

悟志は浩二の顔を覗きこんだ。

『ん?何々?どしたの?』

女のお化けの呪い?が解けた浩二は自分を取り戻した。

『泣いてたと思ったらニヤニヤして股間モッコリだしさw』

雄二が浩二の股間を指差した。

『えっ?えぇ~~!なんでー?w』

浩二は股間を手で押え横を向いた。

『お前…雄二のこと考えてたんじゃね~のぉ~♪お前ら二人はちゅ~した仲だもんな~♪』

悟志が浩二をからかった。

『ば、バカ言ってんじゃね~よ…(〃 ̄ー ̄〃)』

否定はするが、何故か照れる浩二。

『だ~か~ら~…なんで照れるんだよw誤解されんだろw』

雄二が浩二の頭をペチンと叩いた。

『ほらほら、恋人同士の痴話喧嘩はそのくらいにして、この木の枝を窪みに落とそうぜ』

悟志が枝の折れた部分を持ち上げようとした。

『誰が恋人だっちゅーのっ!w』

そう言って、雄二と浩二も木の枝の折れた部分を持ち上げた。

浩二は、運転していたため【お清め】と称した悟志の日本酒を飲めなかったため容易に女のお化けの呪い?に掛かってしまったのだった。

(えっ?👀‼落とすの?そこから?そこの下は…が、崖なんですけど…)

男のお化けは、木の枝に足が挟まったまま引き摺られて窪みの前に置かれた。

『よ~~し!あとは、ここから少しずらせば車は通れるだろう』

そう言いながら、悟志は太い枝の折れた部分を蹴りだした。

雄二と浩二も、木の枝を蹴りだした。

『よし!もうちょいだっ!』

悟志は二人に声をかけた。

雄二と浩二は、枝の真ん中と先の方に分かれ枝をずらしていった。

(や、やめて…落とさないで…)

男のお化けは半べそ状態。

叫びたいが、口も鼻も体にめり込んでいるので声に出せない。

3人は、枝を蹴ったり押したりで枝はズルズル落ち始めた。

(あっ、あ~っ!いやだーっ!)

男のお化けは、挟まっていた足が外れ足をバタバタさせた。

『うわっ‼』

浩二が、何かに驚いたように大きな声をあげた。

と、同時に枝は…落ちた。

(ぎゃあーーーー…)

当然お化けも…声に出せない悲鳴をあげて落ちたのだった。


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天使の仕事…

2017.04.09(11:54) 89


私は、オリンポス十二神に支える天使。

名前はエヴリル。

歳は天界の数えで16歳。

でも、もう二千年近く天界にいる。

そして、ようやく私は天使になれたの。まだ見習いだけどね。

私は、毎日ペガサスと共に月にいる。そして地球に落ちていきそうな星の欠片を見つけては、ペガサスに乗り追い掛けて、燃え尽きる前の小さくなった星の欠片を取ってるの。

そして、その欠片に込められた願い事を叶える仕事をしているんだ。

でもね、物欲的な願い事は却下。

それはそれで、物欲専門の天使がいるから、運良くその天使に願いを込めた星の欠片を取ってもらえたら、願い事が叶うかも知れないけどね。

ただ、それは願い事を叶える順番が来るまで何年掛かるか判らないけど…。

私の場合、誰かに逢いたい、という再会を専門に願い事を叶えているの。

そして、それは二度と逢えなくなってしまった人との再会を専門にしてる。

これからお話しするのは10年前に願いを叶えてあげられた人のお話です。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

底冷えのする12月。

とっくに陽の落ちた、夜8時。

空には雲一つなく星は瞬き、つい先程まで自分がいた月は、白く冷たい光を放っていた。

私は人知れず、それほど大きくない川沿いの道へと、ペガサスに乗り舞い降りた。

『よしっ、着いたぞ~。ここに居れば願いの主が来るはず…』

私はペガサスの長くしなやかな首を撫でた。

『ありがとう、ペガサス。あなたは月に戻って待ってて。願い主とお話が終わったら迎えに来てね』

ペガサスは、自分の顔を私に刷り寄せてきた。

この仕草がとても可愛い。

そして、ペガサスは折り畳んでいた翼を広げた。

綺麗に整った羽は、広げると両翼の端から端までの長さは6メートルを少しこえていた。

ペガサスは、もう一度私に顔を刷り寄せた。

そして、5~6メートル助走してからペガサスは地面を軽く蹴った。

ペガサスが翼を2回ほど羽ばたくと、瞬く間に夜の空へ消えていった。

『さてと…願いの主がもうすぐ自転車に乗ってここを通るはず…』

ペガサスに乗っているときに、私は願い主を確認していた。

数分して、遠くの方に小さな灯りが見えた。

『きたきた…私の読みが正確なら願い主は私の前で止まるはず…』

私は、自分に言い聞かせるように小さく呟いた。

徐々に灯りが近付いてきた。

そして、私自身が自転車の灯りに照らされたとき、自転車は大きくよろめいた。

そして、猛ダッシュで離れて行き少し離れたところで止まって、私を見ているようだった。

『やばっ、脅かしちゃったかな…そのまま帰らないでよ~、願い主さん…』

自転車に乗った願い主が私の方に戻ってきた。

再び私の身体は自転車のライトに照らされた。

『どしたの?こんな寒空にこんな暗いとこで独りでいるなんて…突然人影が見えたからビックリしちゃったよ…何かあったの?』

私の読み通り願い主から声をかけてきた。

『驚かせちゃってごめんなさい。わたし、お姉さんを待ってたの』

自転車に乗った願い主はキョトンとした顔でライトに照らされた私を見ていた。

『お姉さんて…私のこと?』

『うん』

『え~…どうして?』

『お姉さん、だいぶ前に流れ星にお願いしたことがあるでしょ?』

私の言葉に願い主は眉をしかめた。

『うん…何度かお願いしたことはあるよ…』

『そうだよね。だから私はお姉さんの願いを叶えに来たの』

願い主の顔がちょっと困ったような顔になった。

『もぉ…大人をからかわないの!そんな時間あったら、お家に帰って勉強しなさい!こんな暗いところに一人でいたら危ないんだからね!』

願いの主は、そう言うと自転車の向きを変えて帰ろうとした。

『ちょっと待って、お姉さん。私はお姉さんが流れ星に込めた、お姉ちゃんに逢いたいっていう願いを叶えに来たの。とにかく、お姉さんはこれを持っていて。絶対捨てたりしないでね。今夜零時にお姉さんを必ず迎えに行くから。そしてお姉さんの願いを必ず叶えてあげる』

そういって私はお姉さんの願いの星の欠片をお姉さんに渡したんだ…。

『わかったよ。一応もらっておく。私の願い事知ってるみたいだし…てゆうかなんで知ってるの?』

『それは後で教えてあげるよ』

『OK、じゃあ…半分信じて待ってるよ。私も…出来ることならお姉ちゃんに逢いたいし…』

願い主は寂しそうに空を見上げた。

『必ずお姉さんのお姉さんに逢えるから…約束する。だから、お姉さんに渡した小さな石の欠片…絶対に無くさないでね』

『わかったよ。大切に持ってる。まだ半信半疑だけど…あなたを信じてみる。私は美香、あなたの名前も教えてくれる?』

『ありがとう美香さん。私の名前はエヴリル。必ずお姉さんのお姉さんに逢わせてあげる。約束する』

私は、そう言いながら右手の小指を差し出した。

美香さんも小指を伸ばして、私の小指と繋がった。

『エヴリル…か…日本人じゃないの?』

『私は、どこの国の人でもないよ。後で教えてあげる』

『そっか…わかったよ。エヴリルって不思議な子だね。高校生くらいなのに、なんか…凄く色っぽいし…。特にその艶のある唇がとても色気があるな~…』

『やだ美香さん…私はまだ16歳なんだよ?』

『16歳でその色気か~…私も見習わないと…エヴリルが大人になったら、女神様~って男達がすり寄ってきそうだね』

『女神様になれるなんて…とんでもない…』

とか言っちゃった私だけど…いずれは女神様になりたいと思ってる。

でも、あと数千年はかかるとおもう。

『じゃあ、美香お姉さん。後で迎えに行くから待っててね』

『そうそう、待って。お家まで一緒にいくよ。こんな暗い道、独りじゃ危ないし…』

『ほんとに?でも遠いよー?』

私は悪戯っぽく笑いながら言った。

『…そんなに遠いの?』

『うん。例えば、お姉さんの自転車が空を飛べるとしても、行けないところ。それに私には頼りになる相棒がいるから心配しなくて大丈夫だよ』

『あっ、誰か待ってるんだ。なら大丈夫かな?』

『うん、大丈夫よ。心配してぐれてありがとう』

『わかった。じゃあ気を付けて帰ってね』

『じゃあ、美香さん。後で迎えに行くね』

私は、そう言って暗い道を美香さんが来た方向へ走り出した。

遠くの空に流れ星のような光が見えた。

『あっ、ペガサス…来てくれたね』

私は後ろを振り返り美香さんが見えなくなったのを確認して、その場に立ち止まった。

ペガサスが翼を目一杯広げて、静かに私の前方に降り立った。

目一杯翼を広げて降り立つペガサスの姿は、いつ見ても優雅に見える。

私の素敵な相棒…。

『迎えに来てくれてありがとう、ペガサス』

私は、ペガサスのしなやかな首に抱き付き撫で回した。

ペガサスは、私が背中に乗る時には首を下げて、前足を曲げて、身体を低くして私を乗りやすくしてくれる。

私がペガサスの背中に落ち着くと、ペガサスは立ちあがり翼を広げた。

真冬の12月の寒さに冷えていた私の身体は、温かさに包まれた。

ペガサスは温かな空気のベールに包まれていて、空高く舞い上がり、宇宙へ行っても温かな空気はそのまま私とペガサスを包み込んでいる。

『月に行こう』

ペガサスの首を撫でながら私が言うと、ペガサスは5~6メートル助走して地面を軽く蹴った。

ペガサスが翼を羽ばたかせると、瞬く間に地球を見下ろす高さまで上がった。

凄まじいスピードは神の力。

そして、私は風を受けることもなく、衝撃もほとんど感じない。

飛んでいるとき、ペガサスの足だけは絶えず動いているけど、私には水の上を滑っているような感覚しかない。

そんな状態で、私とペガサスは月へ降り立った。

『お疲れ様、ペガサス。今日の願い主さんは、とてもいい人だよ。今夜は、ちょっと遠い所に行くから少し休もう。銀河系の真ん中近くまで行くんだよ。でも、あなたならそれほど時間は掛からないと思うけどね』

私は、ペガサスの首に抱き付き目を閉じた。


暫くして目を覚ました私は、肩から掛けている小物入れの中から時計を取り出した。

細いチェーンが付いていて、蓋の付いた丸い時計。

懐中時計というらしい。

70年ほど前に、願い主の方から戴いたもの。

戦争で亡くした息子さんに逢いたい、という願い事だった。

その時は、たしか…Taurus(おうし座)に行った。

願い主の方は、おじいさんだった。病気で寝たきりだったけど、再生の天使にお願いして数時間だけ動けるようにしてもらった。

そして、願い主のおじいさんにペガサスに乗ってもらい、おうし座の星の一つ、アルデバランに行って息子さんと再会を果たした。

おじいさんは、涙を流して喜んでいたんだ。

そして、もう思い残すことはない、と言って…

お礼だよ、と言いながら私にこの時計をくれた。

今までに、何度か動かなくなったことがあったけど…その都度、再生の天使にお願いして直してもらった。

今でも時計は、ちゃんと動いている。

おじいさんから時計を戴く前は、月から見た星の位置や地球の陰り具合なんかで時間をみてたから、当時は願い主に、ハッキリと時間を告げなかった。

ただ、願い主に渡した流れ星の欠片の片割れが光だしたら、私が迎えに来ると思って下さい、とだけ告げていた。

だから、石が光る前に寝ちゃう願い主さんもいて、当時は大変だった。

おじいさんの時計を持つようになり、願い主を迎えに行くときの時間をハッキリと告げられるようになってからは、皆石が光るまで半信半疑ながらも寝ずに私を待っていてくれるようになった。

そして、今回のお話の願い主、美香さんも半信半疑ながら待っていてくれた。


月の上で目覚めた私は、懐中時計を見て時間を確かめた。

地球という星の中の、日本という国の時間に時計を合わせていた。

11時30分…。

『さてと…ペガサス。そろそろ願い主の所に行こうか…』

相棒のペガサスは首を上下に振り、翼を広げて3回羽ばたいた。

ペガサスは、走ることより飛ぶことが大好き。

流れ星を追い掛ける時はとてつもないスピードを出している。

私が燃え尽きる前の星の欠片を取ると、両翼を目一杯広げてスピードを落としていく。

翼を広げたペガサスは、とても優美。

素敵な相棒、ペガサスと私は月を離れ、今夜の願い主である美香さんの所へ向かった。

日本という国の形が、見るみる近付いてきて横浜という町の上空に差し掛かったとき、私が持つ星の欠片、願い主に渡した片割れが光だした。

緑色の細い光の帯が私の持つ星の欠片を照らしていた。

『美香さんの石が導いてる…』

私は光の帯を辿った。

そのまま、光の帯を辿ると3階建ての白い建物の2階から光が届いていた。

白い建物に近付くと、2階の窓際に願い主の姿が見えてきた。

願い主である美香さんだ。

美香さんは目を丸くして私とペガサスを見ていた。

そして美香さんは、窓際のカーテンに隠れてしまった。

私とペガサスは、美香さんの部屋のベランダのすぐ横で立ち止まった。

美香さんは、カーテンに隠れたまま顔だけピョコっと出して、また慌てるように隠れてしまった。

まぁ、このくらいの事は私の想定内。

だって、2階のベランダの外に馬に乗った私が宙に浮いてるんだもん。

しかもペガサスだから翼もある。

翼のある馬が女の子を背中に乗せて宙に浮いてれば、誰でも腰を抜かすとおもう。

幸い、美香さんは起きていてくれた。

寝てしまった人を起こすより楽チン。

私は、カーテンに隠れている願い主である美香さんの心に呼び掛けた。

『美香さん、私だよ。エヴリルだよ。あなたを迎えに来たの。ベランダに出てきて下さい』

すると、願い主の美香さんは顔だけピョコっと出した。

私はペガサスに跨がったまま左手に緑色に光る石を持ち、右手で手を振った。

美香さんは、テーブルの上に置いてある、私が預けた小さな星の欠片と私の左手を交互に見ていた。

そして、ようやく美香さんは窓を開けてくれた。

『エヴリル?エヴリルなの?』

美香さんは私に話しかけてきた。

『そうだよー。美香さんを迎えに来たの。私が預けた小さな星の欠片を持って私の後ろに乗って下さい』

『あっ、この光ってる石ね。少し前から緑色に光だしたからびっくりしたよ…爆発したらどうしよう…とか思っちゃった』

そう言いながら、美香さんはテーブルの上で光っている石を手に取ろうとして、私の方を振り向いた。

『どしたの?』

『いや…この石熱くない?』

どうやら光ってるので熱いと思ったらしい。

『大丈夫よ。熱くないから』

私は笑いながら言ったら、美香さんは指で小さな石をツンツンつついたあと、熱くないと解ったのか、指先で星の欠片をつまみ上げてハンカチに包んだ。

そして、ベランダに出た途端…

『ひゃ~~寒っ!』

美香さんは、パジャマ姿だった。

『早くペガサスに乗って。ペガサスに乗れば全然寒くないから』

『わかった、ちょっと待って。ヒーター消してくる』

そう言って、美香さんは部屋に入り、すぐに出てきた。

窓を閉めた美香さんは、ベランダの手摺に足を掛けてペガサスの背中に這いずるように上がってきた。

『ワァー、凄い!本当に温かい!ペガサスって本当にいたんだねー♪私、空想の生き物だと思ってた』

『うん、この子が、さっき話した頼りになる相棒だよ♪』

『そっかー。あなたがエヴリルの相棒だったんだ。この子名前は?』

『名前は…そのままペガサスだよ。頼りになるし頼もしい男の子なの』

『そっかー。ペガサス?今日は何処に連れていってくれるのかわからないけど、よろしくね』

ペガサスは美香さんの言葉に反応して、首を上下に振った。

『ふふっ♪ペガサスは美香さんのこと気に入ったみたいだよ』

『本当に~?なんか嬉しい♪ペガサス、ありがとう』

そして、美香さんは何気無く下を見て…。

『うっ、浮いてる…。エヴリル、私達浮いてるー♪凄いー』

美香さんは、子供のようにはしゃいでいた。

『これから、もっと凄いもの見られるよ』

私は、後ろにいる美香さんに振り向いて笑顔を見せた。

『んー、やっぱりエヴリル色っぽい…。その艶やかな唇がなんとも…んー…やっぱりエヴリルは女神様だ♪』

何故か照れてる美香さんだった。

そう言われた私も、何故か照れてたのだ。

『じ、じゃあ、美香さんのお姉さんに逢いに行こー。ペガサス!お願い!美香さんは私の背中に掴まってて!』

そう言って、私はペガサスのしなやかな首をやさしく撫でた。

ペガサスは宙に浮いたまま向きを変えて翼を広げた。

そして、翼を広げたままペガサスは走り出した。

ある程度勢いがつくと、ペガサスはそのまま地面に向かっていき、地面に足を着いたかと思うと、力強く地面を蹴りあげた。

そして、翼を羽ばたかせてから月へ向かって一直線に夜空を駆け上がっていった。

瞬く間に地球を離れ、月が見るみる近付いてきて、ペガサスは月の引力に任せて、更にスピードを上げて月に向かっていった。

そして、月の表面を掠めるように、ペガサスはもう一度力強く月の表面を蹴りあげた。

更にスピードを上げて宇宙空間へと飛び立った。

『凄い凄いー♪ジェットコースターみたいー♪ねぇエヴリル、今の…一瞬だけ降りたとこって、もしかして月?』

『そうよ。私とペガサスがいつもいるお月様だよ』

私は美香さんに振り向き応えた。

『えっ?いつも月にいるの?どういうこと?エヴリルってどういう人なの?』

『そうだね…そろそろ全部お話しないとね。私は天使なの。オリンポス12神に支える天使なの。まだ見習なんだけどね…』

『天使…か…なんか物語の世界みたい…まぁ…夢の中の事だから何でもあり♪』

『美香さん?これは夢じゃないの。現実よ?美香さんのいる地球の殆どの人は、偉大なゼウス様や女神様、そしてアポロンやポセイドンの神々は空想のお話だと思ってるはず。でも、実際は実在するの。そして、私達は12神のいる天界からの使い…天使にも、それぞれ役割があって、人を守るもの、動物を守るもの、人々の争いを収めるもの、沢山役割があるの。その中で私は願い事を叶える天使。そして、私のするべきことは、天に召された人達に現存する人達の【逢いたい】という願いを叶えてあげることなの。それは、流れ星に託された願いだけ。私は、そういう願いの込められた流れ星の欠片を取って、願い主を探して、順番に願いを叶えていくの。そして、美香さんの順番が来たのよ』

私は振り返り美香さんの顔を見た。

美香さんは難しい顔をしていた。

『私は、多分夢を見ているんだろう…』

美香さんは独り言のように呟いた。

『美香さん?これは夢じゃないの…。いま宇宙に居るのも本当。私が再会の天使ということも本当。そして、天に召された人は、自分の誕生月の星座に行くのよ。そのために12星座というのがあるの。美香さんのお姉さんは12月生まれでサジタリウスという星座の中の一つにいるんだよ。美香さん達の言葉では射手座だよね?』

『そうだけど…エヴリル…夢の中じゃなきゃ、ペガサスに乗る天使と一緒に宇宙空間に居るなんて信じられないよ…』

『夢じゃないよ。ほら、あそこ見て?大きな星が見えるでしょ?あれは美香さん達の言葉では木星という星。現実に今、私達は宇宙にいるのよ』

美香さんが私の指差す方向を見ていた。

木星は、あっという間に近付いてきた。

『ぶ、ぶつかるっ!エヴリルっ!ぶつかるーっ!』

美香さんは私の背中にしがみついていた。

『大丈夫よ、美香さん。ペガサスと私達は木星の引力に引っ張られてるの。ペガサスは、この引力を使ってもっともっとスピードを上げていくよ』

ペガサスは、ぐんぐん速度をあげていった。

そして、木星を覆っているガスを掠めるように水平に飛んでいき、ペガサスは、たちまち大きな木星を飛び越えていった。。

遠くに見える星が流れるように見えていた。

綺麗にリングを纏った土星が、楕円形に歪んで見えていた。

『美香さん。ペガサスは光の速度を越えてるよ♪この早さなら射手座の星の一つ、ルクバトまでもうすぐよ』

『ルクバト?』

『うん、射手座の膝の辺りの暗い星なの。美香さんのお姉さんは、そこにいるの』

『…本当にお姉ちゃんに逢えるの?』

美香さんは不安な顔をしていた。

『もちろんよ。必ず逢える…ほら、美香さん見て?銀河の渦の中心が見えてきたよ。あの中心の側にサジタリウスがあるの』

『すごーい!ミルキーウェイだー!綺麗ねー』

美香さんの瞳が銀河の光で輝いていた。

『美香さん…その、ミルキーウェイって何?』

『えっ?エヴリルは知らないんだ。エヴリルの前で言うのはちょっと気が引けるけど…教えてあげるね。全能の神ゼウスが浮気をして出来た子供がヘラクレスなんだって。そして、ゼウスには女神である奥様のヘーラー様がいる。だけど、ヘーラーはゼウスの浮気相手の子供、ヘラクレスを良く思わなかった。だけど、ゼウスはヘラクレスに不死の力を与えようと、妻である女神、ヘーラーのお乳を、ヘーラーが眠ってる時に飲ませようとしたんだって。だけどね、ヘラクレスは赤ちゃんの時から力が有り余ってた。だから、女神様のお乳を吸う力も強いから、女神様は痛くて目が覚めたら、ゼウスの浮気相手の子供、ヘラクレスが自分のお乳を吸っていたからサァ大変。女神ヘーラーはヘラクレスを突き放したんだって。そうしたら、女神様のお乳がビューって飛び散って空に天の川、銀河の渦が出来て、それをmilkywayと呼ぶようになったんだって。女神様のお乳は不死の力を持って、天の川をつくる。凄いよね♪エヴリルも女神様になったら不死の力を持つお乳ができるのかな…?』

私は顔が熱くなるのが自分でもわかった。そんな話は初めて聞いた。ゼウス様が浮気性なのは噂で聞いていたけど…、女神のお乳にそんな力があるのは知らなかった。

『ねぇ、美香さん?そのお話ほんとなの?』

『どうかなー?これはギリシャ神話の一つの作り話だとは思うけどね♪でも、エヴリルの居る所では、ギリシャ神話に出てくる人達が居るんだよね?もしかしたら、作り話じゃなくて、本当の事かもよ?でも、エヴリルが知らないなら…女神の最高機密かもよ?』

美香さんは笑いながら言った。

『女神様のお乳は不死の力…女神様の秘密だったら大変だから、皆には内緒で覚えておこう…』

私は、ぼそぼそと独り言をいった。

ちょうどその時、ペガサスがスピードを落とし始めた。

『あっ、美香さん。そろそろ着くみたいよ』

『何処?どの星?』

『ほら、正面に見える少し暗い星よ』

青白く光る星が見るみる近付いてきた。

そして、ペガサスと私達はその星の一画に降り立った。

辺りは白く濃い霧のようなものに包まれていて白く太い柱が二本建っていて宮殿のような建物がうっすらと見えていた。

『美香さん、着いたよ。ここであなたのお姉さんに逢えるの』

『エヴリル…私の髪の毛乱れてない?』

美香さんは髪を頻りに手で撫でていた。

『大丈夫よ。乱れてないし、とてもきれいよ』

『お姉ちゃん何処にいるの?』

『もう、近くに居るはずよ…。その前に…美香さんに約束してほしいことがあるの』

私は振り返り美香さんを見た。

『約束?わかった…どんな約束なの?』

『うん、美香さんのお姉さんは、私達の目の前まで来れるの。だけど…美香さんは、絶対にお姉さんに触れてはだめ。ペガサスから降りる事もできない。これだけは絶対に守ってください…』

『うん、わかった。約束する』

美香さんは左手を私の方へ伸ばし小指を出した。

私も小指を伸ばし約束の指切りをした。

『約束よ♪じゃあ美香さん、お姉さんを呼んでみて』

『大声で?』

『うん』

『わかった…』

美香さんは気持ちを落ち着けているのか深呼吸を二回だけしていた。

『お姉ちゃーん!正美姉ちゃーん!』

美香さんが叫んだあと、私と美香さんは耳を澄ました。

『美香さん、もう一度…』

美香さんは頷いてもう一度お姉さんの名前を呼んだ。

『マミ姉ー❗正美姉ちゃーん❗』

私と美香さんは耳を澄ました。

『美香?美香なの?』

お姉さんの返事が聞こえた。

『お姉ちゃん!お姉ちゃん!マミ姉ちゃん!美香だよー!何処にいるの?』

お姉さんの声を聞いた美香さんは、突然泣き出した。そして泣きながらお姉さんの名前を呼んでいた。

白い霧の中に青い服を着た女性の姿が見えてきた。

その女性の姿が少しずつはっきりと見えてきた。

『綺麗な人…』

整った顔立ちの髪の長い女性だった。

『お姉ちゃん…』

美香さんはそう言って声を詰まらせた。

『美香!美香ー!』

美香さんのお姉さんが走り寄ってきた。

『お姉ちゃん…逢いたかった…』

『あたしもだよ…本当に逢えると思わなかった…』

『…なんで…なんで私を独りにしたのよ…どんなに哀しかったか…どんなに寂しかったか…なんで私も一緒に連れてってくれなかったの?』

美香さんは、子供のように泣いていた。

『美香…独りにさせちゃってごめんね…あたしも寂しかったよ…。とても哀しかった…。でも…私にはどうすることも出来ないし、ただ、自分を受け入れることしか出来なかった…。でも…本当に美香に逢えると思わなかった…』

『うん…ここに居る天使のエヴリルが…私の願いを叶えてくれたの…』

美香さんは子供のように泣きじゃくりながら私の髪を撫でていた。

『あたしも天使が美香を連れてきてくれるからここで待っているように、別の天使から言われてたの…』

美香さんは、私を後ろから抱き締めたまま、ありがとう、ありがとうと言って泣いていた。

『天使エヴリル…妹に逢わせてくれてありがとう…』

お姉さんが私に頭を下げてくれた。

私はこの時、胸が熱くなるのを感じた。

そして、お姉さんはとても優しい眼で美香さんを見詰めた。

『美香…髪の毛伸びたね…あたしより長くなったじゃない』

お姉さんは、美香さんに触れようとしては躊躇していた。

別の天使に、美香さんに触れないよう固く注意されていたのだろう。

『うん…お姉ちゃんみたいに長くきれいに伸びたでしょ?』

『そうだね…すごく綺麗だよ…』

お姉さんは、無意識に美香さんの髪に触れようとして、気が付いたように、すぐに手を引っ込めた。

『それより、お姉ちゃん…何でまだ、あの時のままの洋服着てるの?』

青色のワンピース…所々破れていたり、解れていた。

『うん…ここには着替えも無いしね…それに、今以上汚れもしないし破れもしないの…髪も伸びないし…あたしの時間が止まった証拠ね…』

お姉さんは、そう言いながら、服の解れを気にしていた。

そんなお姉さんを見ていた美香さんは、涙を拭いながら自分の着てるパジャマを脱ぎ出した。

『美香さん!何してるの?危ないよ…ペガサスから落ちちゃうよ…』

パジャマの上は簡単に脱げたが、下を脱ぐときにペガサスから落ちそうになり、ペガサスが自分の翼で美香さんを支えた。

そして、ようやく脱げたパジャマの上下を手に持った。

『ねぇエヴリル…このパジャマをお姉ちゃんに渡してもいい?』

『美香さんからは直接は渡せないけど…私が渡すなら大丈夫よ』

『じゃあ、エヴリル。このパジャマお姉ちゃんに渡してほしいの…』

『うん…わかった』

美香さんからパジャマを受取り、私はお姉さんに差し出した。

『ありがとう美香、エヴリル。でも…美香は下着だけで寒くないの?』

『大丈夫よ。ペガサスの上はとても温かいの』

『そうなんだ…ここはとても寒いところなんだ…』

お姉さんは、そう言って美香さんのパジャマを頬に当てた。

『温かい…美香の温もりと香りがする』

お姉さんは、そう言って大粒の涙を溢していた。

お姉さんの涙には、美香さんに逢えた嬉しさと、寂しさ、そして哀しみと、どうしようもない切なさが入り交じっていた。

そして、お姉さんの気持ちが私の心に伝わってきて、私も堪えきれず涙が溢れてきた。

私は、自分の涙を指で拭い、すぐ傍にいるお姉さんが待っている美香さんのパジャマに涙の滴を染み込ませた。

『エヴリル…今、何をしたの?』

お姉さんが涙を溢しながら私を見て言った。

『うん。天使のおまじないをかけたの。天使の涙には、人が触れると幸せになれると言い伝えがあるの…だから…お姉さんが生まれ変わったとき、来世で幸せがたくさん来るようにおまじないをかけたのよ』

私は、涙を溢しながらも笑顔を見せた。

『そういうことか…。エヴリル…ありがとう…貴女の気持ち、とてもうれしい…』

お姉さんの顔は笑顔になり、私に伝わるお姉さんの気持ちが微妙に明るくなった気がした。

『お姉ちゃん、早くパジャマに着替えて!そうすれば夢の中に出てくるお姉ちゃんも、そのパジャマで出てくるようになるかもしれないから…』

『わかった…』

そう言って、お姉さんは辺りをキョロキョロ見回した。

『大丈夫よ、お姉さん。ここには私と美香さん、そしてお姉さんの3人しか居ないから。あっ、ペガサスは男の子だからちょっと横向いててね♪』

私は、ペガサスの首を撫でた。

ペガサスは、私の言葉に反応して照れくさそうに横を向いた。

『ふふっ、ペガサス可愛い。ごめんね、ちょっと横向いててね』

お姉さんは、ペガサスに声を掛けながら青いワンピースを脱いで美香さんのパジャマに着替えた。

『温かーい』

『二人で暮らしてた時のお姉ちゃんだ…ねぇ、エヴリル…お姉ちゃんを連れて帰ることできない?』

パジャマ姿になったお姉さんを見て、美香さんがお姉さんを連れて帰りたい、と言い出した。

『それは出来ないよ…もし、お姉さんがこの星を出たら…この星を離れた瞬間に消滅してしまうわ…私達がこの星の地に足を着いても同じ…私達も瞬時に消滅してしまうの。ほら見て?ペガサスもこの地には足を着いていないの。お姉さんを連れて帰りたい気持ちはわかるけど…』

『ほんとだ…ペガサスは、ずっと浮いてたんだ…』

『うん…人に与えられた星座に、命あるものは足を踏み入れてはいけないの。この、ギリギリの境界線まで来れるのは、私を含む再会の天使と新命の天使だけなの』

『美香?エヴリルを困らせないの!来世というのが本当に有るのなら、私は本当に幸せになれると思う。エヴリルの天使の涙を纏ってるんだもん!ねっ、エヴリル!』

『わかってるよ。無理なお願いだとは思ってたけど…ちょっと言ってみただけ…ごめんねエヴリル…』

『うん…お姉さんには、必ず来世が来る。それは、まだまだ先の事かも知れないし、すぐかも知れない。それは大天使様が決めること…そして何時か…新命の天使が迎えに来てくれるわ…。いつの日かお姉さんは、自分の身体を離れる時が来るの。そうなったら新命の天使が迎えに来るのが近いと思って待っててね』

『わかったよ…エヴリル…。私は、その時を楽しみに待ってます。その時が来るまでは、私は…ここで美香を見守ってる…』

美香さんとお姉さんは、お互いの顔を目に…記憶に焼き付けているかのように見つめあっていた。

『じゃあ…美香さん。そろそろ帰りましょう…』

『あっ…、もう帰らないといけないんだ…もっとお姉ちゃんと一緒に居たいけど…約束守ってくれたエヴリルの言うこと聞かないとね』

『お姉さんも美香さんも名残惜しいと思うけど…そろそろ帰らないと…。美香さん?お姉さんはここで美香さんをいつも見ててくれてる。それを励みに一生懸命生きてください』

『そうよ、美香?あなた、何度も私を追い掛けようとしてたでしょ?でも、あなたは私を追い掛けられなかった…何故かというと、私が別の天使にお願いしたからよ…もう二度と私を追い掛けようとしちゃダメよ!』

『そうだったんだ…』

『わかった?美香?あたしはいつも、ここで美香を見守ってるから…』

『わかったよ、お姉ちゃん。絶対いつも私を見ててね』

『うん。あっ、それからこの前銀行の通帳と判子探してたでしょ?あたしのバック一つづつよく探してごらん?何れかに入ってるはずだよ?』

『そっかー…一度探したんだけどね…もう一度探してみる。あっ、そうだ…お姉ちゃんのアクセ使ってもいい?』

『いいよ。好きなだけ使いな』

『ありがとう…お姉ちゃん…じゃあ、もう行くね…』

『うん…天使エヴリル…本当にありがとう…今日のことは来世になっても忘れないでいたい…素敵な色気のある天使さん?女性の天使は女神になりたいという天使が多いって聞いたことがあるけど、貴女はきっと素敵な女神になる気がする。妹の願いを叶えてぐれてありがとう』

お姉さんの私に伝わる気持ちから哀しみが少し和らいでいた。

『お姉さんも、美香さんも喜んでくれて良かったです。まだまだ見習いの天使だけど…何時かは女神様になりたいです。じゃあ、お姉さん。美香さんを連れて帰ります』

『はい、美香をよろしくお願いします。じゃあね美香。あたしはいつもここに居るからね。寂しくなったらこの星を探して、今日の事を思い出すのよ?』

『わかった…お姉ちゃん。そうするよ…じゃあね…』

私は二人の会話を聞いてから、ペガサスの首を一撫でした。

『帰ろう、ペガサス。お姉さん、また誰かの願いでお姉さんに逢えるかもしれないね。だから、私はサヨナラは言わない…またね、お姉さん…』

『またね、エヴリル。美香…』

『ペガサス、帰ろう!』

『…お姉ちゃん…またね…』

美香さんは、涙を堪えてお姉さんに笑顔を見せていた。

私はペガサスのしなやかな首をもう一度撫でた。

ペガサスは向きを変えて翼を広げ、ゆっくり走り出した。

三回ほど翼を羽ばたかせたペガサスは、スピードをあげていった。

美香さんとお姉さんは、何時までも手を振っていた。

そして、ペガサスは遠くに見える大きな惑星に向かっていった。

惑星の引力に任せるまま、ペガサスはスピードを上げていき大きな惑星で一蹴りの弾みをつけて、更にスピードをあげた。

幾つかの惑星の引力を利用しながら、ペガサスは光の速度を越えた。

その間、私も美香さんもお喋りはしなかった。

二人の沈黙を割いたのは、美香さんだった。

『エヴリル…ありがとう。最初は信じられなくて疑ったりしてごめんね…』

『気にしないで、美香さん。現実離れした出来事だもん、信じられないのは当たり前よ♪でも、もう信じてくれたでしょ?』

『もちろんだよ。ねぇ、エヴリル。人は死んじゃうと星になるって言うのは本当のことなんだね…』

『星になるっていうのは、本当。だから、ゼウス様は人々に十二星座を与えたの。それを、大天使様と私達天使に任せてあるのよ』

『そうなんだ…』

美香さんは、また黙ってしまった。

美香さんの寂しさが、私の心に入り込んできた。

お姉さんと美香さんの、たくさんの想い出が私にも垣間見えた。

二人で懸命に暮らしていた歳月。

美香さんは、心から慕っていたお姉さん。

その、お姉さんを亡くした深い哀しみ。

独りになった寂しさ。

お姉さんとの想い出。

涙が込み上げてきて、堪えきれず涙が溢れた。

『美香さん…。私の涙…美香さんの指で拭ってぐれる?』

『どうしたの?エヴリル…』

『美香さんの今の気持ちが私の心に入り込んできたの…涙が止まらないの…私の涙美香さんの指で拭って?そうすれば、美香さんにも…』

『そっかー、幸せになれる天使の涙ね。私が触れてもいいの?』

『うん、美香さんには…これからたくさん幸せになって欲しいし…そうなるべきだと思うの…私の涙に触れて…』

『私の気持ちが天使のエヴリルにシンクロしちゃったのね…でも、私はもう泣いてないよ。だから、エヴリルも泣かないで?』

美香さんは、そう言って私の涙を拭ってくれた。

『これで美香さんも、お姉さんと同じくらい幸せが待ってるよ…ただ、私は見習い天使だから幸せ効果はどこまで期待できるかわかりませんけど~』

『エヴリルのおまじない信じてるよ。私の分もお姉ちゃんに分けてあげて。そうすれば一人前の天使の幸せ効果になるかもね』

『…悔しいけど当たってるかも…』

『冗談よー。これから、幸せな事があったらエヴリルの天使の涙効果だって…エヴリルのことを思い出すよ』

『ありがとう、美香さん…あっ、ちょっと月に立ち寄るね私のお仕事見せてあげる』

『わぉ‼流れ星捕まえるの?』

『そうよ!ほら、月が見えてきた。ペガサス、お仕事するよー!』

ペガサスが、チラッと私を見た。

どうやら、ヤル気満々のペガサスだ。

月に降り立つ前に、ペガサスは思いきり翼を広げた。

そして、月のクレーターの盛り上がった岩の上に降り立った。

私は辺りを見回して、地球に向かっていく星の欠片をみつけた。

『見つけたー!ペガサスっ!行くよー!美香さん、ペガサス全速力で行くから私に掴まって!』

『オッケー!』

美香さんの腕が私の身体にしがみついた。

『ペガサスっ!お願いっ!』

私はペガサスの首を撫でた。

それが合図になり、ペガサスは力強く月面を蹴りあげた。

いつもより、翼を羽ばたかせたペガサスは、ぐんぐんスピードを上げていった。

そして、地球に近付き燃え出した星の欠片と並んだペガサス。

後は、燃え尽きる前に袋に入れるのが私の仕事。

夜の街の灯りが見るみる近付いてくる。

『今だっ!』

私は小さな袋を広げ、星の欠片を袋に入れることに成功した。

と、同時にペガサスは急減速。

『やったー‼美香さん、取れたよー。後は誰かの願いが入っていればオッケー!』

『ひぇ~…、凄い速さ…そのまま落ちるかと思って声も出なかったよ~…』

『ふふっ、怖かった?』

『う、うん…真剣に怖かった…』

『これが、私の仕事よ。美香さんのお願いもこうして叶える事が出来たの』

『命懸けの仕事ね…。すごいわ…。それで…今の星の欠片には願い事入ってた?』

『今から、見てみる…』

私は、今、手に入れたばかりの星の欠片に願い事が入っているか確かめた。

『…へへ~♪入ってたよ、美香さん。しかま、私の専門職。お婆ちゃんに逢いたいっていう願い事。願い主さんは小さな女の子みたいよ…』

『じゃあ、これから願いを叶えに行くの?』

『いいえ…この子の願いを叶えられるのは1年後くらいになるかな…』

『順番待ちなんだ…』

『うん。でも、美香さんみたいに必ず叶えてあげるわ…』

『エヴリルは、何のために仕事をしてるの?』

『ん~…願い主さんのありがとう、という言葉と人々の考え方や感情を勉強して、いろいろな情報通にならないと、女神様になれないからね』

『そうなんだ~。これからは夜空を見る度に、お姉ちゃんとエヴリルの事を思うことにする。応援してるよ、エヴリル』

『ありがとう、美香さん。私が天使の涙を分けてあげた人は、美香さんと美香さんのお姉さんを入れて、10人になったの。私の感情が昂らないと、分けてあげられないの。相当な人数の願い事を叶えているけど、美香さんとお姉さんで10人なのよ。だから、幸せ効果は期待してもいいかも♪美香さん達の言うところの、レア物?かな?』

『そうか~…貴重な天使の涙の滴なのね…。あっ、私の家が見えてきた』

ペガサスは、ゆっくりと美香さんの部屋のベランダに近付いていった。

『あらっ…、そういえば私下着だけだった…』

『お隣さんももう寝てるみたいだから大丈夫じゃない?』

美香さんは辺りをキョロキョロ見回した。

『そうだね。すぐにベランダに行くわ…』

美香さんはベランダの手摺に足をかけ、そのままベランダに飛び降りた。

『さ、寒い~…。エヴリル、ありがとう。貴女のことは一生忘れないよ。エヴリルはきっと素敵な女神になれる!ここで応援してるよ』

美香さんは、そう言って手を振ってくれた。

『またね~』

『じゃあ美香さん、またね…』

私はペガサスの首を撫でた。

『ペガサス、月へ帰ろう!』

ペガサスは、美香さんに顔を刷り寄せた。

『美香さんを、本当に気に入ったみたいね』

『またね、ペガサス』

ペガサスは美香さんを見詰めながら、瞬きをした。

私には、ペガサスが美香さんにウインクしたように見えた。

ペガサスは、向きを変えて翼を広げた。

ゆっくり走り出して翼を羽ばたかせた。

ペガサスは、適当な平らな地面を見つけ、そこで地面を強く蹴りあげた。

私とペガサスは、晴れた夜空を一直線に、月に向かって駆け上がった。




おしまい🐎
ペガサス



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一年間だけの約束…

2017.05.19(21:04) 92


【ひとみとかずみ1】

桜井一美(さくらいかずみ)は、あまりの寒さに眠りから覚めた。

辺りを見回すと、白く冷たい感じのする部屋の中だった。

『…頭が痛い…。寝すぎたかな…』

一美は、虚ろな眼で部屋の中を、もう一度見回した。

『何処だろう…ここは…』

部屋の中には、自分が寝ていたベッドが一つだけ置いてあった。

一美は頭の痛さと寒さでもう一度ベッドに潜り込んだ。

そして、猫のように身体を丸めて頭の痛さと寒さに耐えた。



ちょうどそのころ、斉藤孝(さいとうたかし)は東京世田谷区の駒沢にあるオーダーメイド専門のジュエリーショップに入るところだった。

『こんにちはー』

孝はジュエリーショップのドアを開けて中に入った。

『いらっしゃいませ。あっ、斉藤様』

女性店主は孝を見るなり、にっこりと笑顔を見せて頭を下げた。

『どうも。指輪を取りに来ました。もうできてますよね?』

孝も軽く頭を下げて指輪を取りに来たことを告げた。

『できてますよ。はい、これです』

女性店主はそう言って、カウンターの上に両手で小さな箱を孝の前に置いて蓋を開いた。

孝は、この店で桜井一美にプロポーズするためにオーダーメイドで作った世界でたった一つだけの指輪を、女性店主と孝でデザインを決めてこの店で作成した指輪だった。

リング自体が、立体的な二頭のイルカのデザインになっていた。

二頭のイルカが向かい合わせになり、センターにダイヤが埋め込まれていた。

『想像通りの指環です…プラチナとゴールドの二頭のイルカがスマートで素敵ですね』

孝は、一美の喜ぶ顔を想像して眼を細めた。

『これから奥さまになる方へのプレゼントでしたよね?』

『えぇ…そんなとこです』

孝は照れくさそうに返事をした。

一美とは、高校生の時に知り合い、孝の一つ年下だった。

今はお互いに社会人になり、孝は29才、一美は28才になっていた。

孝はもっと早くに一美と結婚したかったが、一美は両親を早くに亡くしていて、九つ離れた妹がいる。

一美は、妹と二人で細々と暮らしていた。

一美の意向で、妹が成人するまで結婚は待ってほしい、と孝に言っていた。

孝は、一美の意見を尊重して、その時が来るのを待っていた。

その間、孝と一美は結婚資金をコツコツと貯めていた。

そして、一美の妹、美雪(みゆき)が成人になった今年…。

孝は一美に対して改めて、結婚を申し込むつもりでいた。

孝は一美との結婚のために、出来る限りの節約をして指輪を作るお金を貯めていたのだった。



孝は、ジュエリーショップで指輪のお金を支払いお店を出たところで、一美の妹の美雪から、携帯に着信が入った。

『美雪ちゃんからか…電話してくるなんて珍しいな…』

孝は独り言を呟きながら、携帯の着信ボタンを押した。

『もしもし、美雪ちゃん?電話くれるなんて珍しいねー。どしたの?』

美雪からの返事はすぐになかった。

『どした?美雪ちゃん?』

携帯から聞こえてきたのは、美雪の啜り泣く声だけだった。

『どうした?美雪ちゃん?なんで泣いてる?何かあったのか?』

『お姉ちゃんが…お姉ちゃんが…』

美雪が何かを伝えようとしているのが孝にはわかった。

『美雪ちゃん、落ち着け…。一美がどうかしたのか?』

『お、お姉ちゃんが…事故で…危険な状態だって…』

美雪はそう言って子供のように泣き出した。

孝は、一瞬だが自分の耳を疑った。

到底受け入れられない美雪の言葉に、孝は少しの間言葉を失った。しかし、美雪の泣き声が孝を現実に引き戻した。

『美雪!しっかりしろ!何処の病院か教えてくれ!…頼む…』

敢えて冷静さを保とうとする孝だったが、孝の頭の中に白い靄のようなものが立ちこめてきて、思考能力がほんの少しの間途切れた。

そして、弱気になった自分の気持ちを奮い立たせた。

『美雪ちゃん、きっと助かる!妹思いの一美が美雪ちゃんを一人になんかしない!そんな筈はない!』

そう言いながら、孝は自分にも言い聞かせていた。

『何処の病院に行けばいいんだ?美雪ちゃん?』

今となっては、たった一人の心の寄り所となった孝に、美雪は泣きながら一美のいる病院の場所を告げた。

孝は、すぐに会社に電話をして早退することを上司に伝えた。

そして、一方的に電話を切った。

上司が何かを言っていたようだが、お構いなしに孝は電話を切った。

孝はタクシーに乗り、一時間ほどで一美のいる病院に着いた。

釣り銭も受け取らず、孝はタクシーを降りて病院の入り口へと駆け込んだ。

孝の右手には、一美に渡す指輪の入った小さな箱が握りしめられていた。

ナースセンターで一美のいる場所を聞こうとしたとき、美雪が孝の元へ走ってきた。

『孝さん!お姉ちゃんが…』

『美雪!一美は何処だ!』

孝は、美雪の指差す方を見た。

一美はナースセンターの横にある集中治療室にいた。

ドクターが一美に対しての蘇生を試みていた。

一美の体に電気が流れるたび、一美の体は激しく動いた。

『うそだろ…なんで…なんで一美があんなことされなきゃいけねぇんだよっ!死ぬわけねぇっ!一美が死ぬわけねぇっ!』

孝は、自分に言い聞かせるように強い口調で口走っていた。

数分間一美に対しての蘇生を試みていたドクターの手が止まった。

ドクターは時計を見て時間を確認した。

それを見ていた孝は、崩れ落ちるように床に膝を着いた。

美雪は一美にしがみつき泣き叫んでいた。

『夢なら今すぐに覚めてくれ…。じゃないとおかしくなっちまいそうだ…』

孝は、血が滲み出るのではないかというほど唇を噛み締めた。

孝の耳には、美雪の泣き叫ぶ声がとても遠くに聞こえてるような気がした。


※※※※※※※※※※※


そして…、一美は寒さのあまり再び目覚めた。

頭の痛みは、相変わらずあった。

一美は頭を押さえながら、虚ろな目で天井を見つめた。

相変わらず白く冷たい感じの部屋は、先程より明るく、天井が低くなっていた。

そして、先程とは少し違う雰囲気に気が付いた。

誰かが泣いてる?

泣き声は遠くから聞こえてるようだった。

一美は、上半身だけ起き上がり辺りを見回した。

天井は、更に低くなり横の壁は、ただ白く冷たい光を反射しているようだった。

一美は、何気なくベッドに着いている自分の左手を見て、唖然とした。

左手を着いてる筈のベッドが見下ろす所にあった。

天井が低くなっていたのではなく、自分が浮いているからだ、と一美は気が付いた。

『えっ?なんでアタシ浮いてるの?…なんで?…あっ、これって夢か!じゃなきゃ宙に浮くわけないし…』

四方八方を見回す一美の視界に、床に膝を着いている孝が見えた。

『あっ、孝だ。孝ー!』

一美は、孝の元へ近づいていった。

膝を付き下を向いてる孝の顔を覗きこむ一美。

孝は、声は出していなかったが涙をポロポロ溢していた。

『やだ、孝…なんで泣いてるのよ?』

そして、ベッドの横では妹の美雪が泣き叫んでいた。

『美雪!どしたの、そんなに大泣きして…』

一美は美雪の傍にいって声をかけた。

『お姉ちゃん!お姉ちゃん!起きてよー!』

『アタシは横にいるでしょ?まぁ、これは夢だから起きてはいないはずだけどさ…ほら、そんなに泣かないの!』

一美は美雪の頭を撫でた。

その時、一美の長い髪が美雪の顔を掠めた。

美雪は、突然泣き止み、辺りを見回した。

『お姉ちゃんだ!お姉ちゃんの香りがする!お姉ちゃんが傍にいる!』

美雪は、そう言って孝を見た。

『さっきから傍にいるでしょ?…夢だから私が見えてないのかな…?孝も気が付いてないみたいだし…』

一美は、もう一度孝の傍にいき、顔を覗きこんだ。

『たかしくーん!ほーら、泣かないの♪かずみちゃんだぞー♪』

一美は孝の目の前でおどけて見せた。

その時、一美の長い髪が孝の顔に触れた。

孝は、はっ、として顔をあげた。

『一美だ!一美の髪の臭いだ!一美…』

孝も辺りをキョロキョロと見回した。

『…なんか…寂しい夢だな…妹にも恋人にもアタシが見えないなんて…』

その時、孝は手に持っていた指輪の入った小さくお洒落な箱の蓋を開けた。

何となく、その箱を見ていた一美の目にイルカがデザインされた指輪が目に飛び込んだ。

『わー♪可愛い指環♪ねぇねぇ孝?その指環アタシにくれる指環だよね?そうだよね?』

その時、一美は後ろからトントンと肩を叩かれた。

一美が振り向くと、女性が一人立っていた。

『あなた一美さんていうの?』

『は、はい…えっと~~…どちら様ですか?』

一美は不思議そうな顔で女性を見た。年格好は自分より少し上かな?と、一美は思った。

『私は、広恵(ひろえ)。よろしくね』

広恵は、そう言って一美に頭を下げた。

『よろしく…何処かでお会いしました?』

一美は、立ち上り広恵と名乗る女性と向き合った。

『いいえ、一美さんとは初めてよ?一美さんが、今の自分に気が付いてないみたいだから教えてあげようと思って…』

『今の自分?気付いてない?どゆこと?』

一美は、訝しげに広恵を見た。

『一美さん?今のあなたは…夢を見ているわけではないのよ?
もう、あなたは、そこにいる妹さんとも彼とも、お話は…もうできない…
そして二人には、あなたの声も聞こえないし姿も見えなくなってるの…』

『ちょっ、ちょっと待って?二人にアタシが見えてないってどういう事?夢の中だからじゃないの?それに…あなたはどういう人?』

『私は、あなたと同じ状態のものよ。
ただ、生きてた時に悪いことしちゃったから、その償いとして他の人のためになることをしないと、天国へ行けないのよ…。
もちろん悪いことをしていない人は、その日から49日目に天から使いが来て天国へと連れていってくれるの…。
その時に、あなたのように自分の状態を解らないままでいると、天の使いが迎えにきたときに自分でそれを許否しちゃう可能性があるのよ?
今まで、私はそういう人を何人も見てきた…そうなると、誰にも話し掛けることも出来なくなるし、誰にも自分の存在を認めてもらえなくなる…。
だから…お節介かもしれないけど、あなたが天国に行くことを望むなら…今日から49日の間に、
あなたの大切なひとに伝えたいことがあるなら、伝えた方がいいよ?じゃないと、この世に未練を残すことになるとおもう…』

一美は、広恵の話を黙って聞いていた。

そして、一美は小さく息を吐いた。

『広恵さんでしたっけ?あなたの言うことだと…、私は死んじゃってる事になってるみたいだけど…どういう事?』

一美は、今の自分の状態に気付かず、広恵に対してイラつきを露にした。

『どうか、気分悪くしないで?
あなたの妹さんが泣きついてるベッドに寝ている人の顔を見て?紛れもないあなたなの…。
そしてあなたは、もうこの世の人ではないの…。
辛いかもしれないけど、今の自分の状態を受け入れないと…』

広恵にそう言われて、一美はベッドに視線を移した。

美雪がベッドにしがみつき、わんわん泣いていた。

先程までは、ベッドだけがみえていたが、もう一度よく見れば誰かが寝ているのがわかった。

近付いて、ベッドに横たわる人の顔を恐る恐る覗きこんだ。

その顔を見て、一美は立ちすくんだ。

紛れもない自分の顔がそこにあった。

一美は、泣き叫ぶ美雪を見てから、膝を床に着いたままの孝を見た。

そして、この部屋の中にいる白い服を着ている人たちが、一美の目にぼやけて見えてきていた。

暫くして…一美の目には、明らかに病院にいる看護師と医師が見えたのだった。

一美は広恵に向き直り涙を潤ませた。

『広恵さん、これは夢じゃないの?嘘じゃないの?本当の事なの?』

一美は、次第に涙を溢しながら広恵に問い詰めていた。

『そう…残念だけど本当の事よ?』

広恵の言葉に、一美は堪えきれず泣き出した。

『やだー!アタシまだ死にたくない!美雪が一人になっちゃうし、これから孝と結婚するんだからー!自分の身体に戻るー!』

そう言いながら一美はベッドに横たわる自分の身体に戻ろうとしたのだが、
一美の身体はそのままなんの抵抗もなく自分の身体とベッドをすり抜けてしまった。

一美は、泣きながら何度も何度も身体に戻ろうとしたが無理だった。

そんな一美を見ていた広恵が、一美の傍にきて一美の背中に手を当てた。

『もうわかったでしょ?私の言ってることが…。
あなたとあなたの身体を繋いでいた魂の糸は…もう切れてるの…。
身体に戻ることより、未練を残さないようにするために、あなたの想いを伝えることを考えた方がいいよ…
未練は残さない方がいい…後々とても辛い事になるから…』

一美は泣きながら、その場に座り込んだ。

『孝と…孝と結婚するのに…散々孝を待たせたのに…』

そう言って、一美は泣き崩れた。

広恵は、しゃがみこみ一美の背中にもう一度手を置き優しく撫でた。

『辛いでしょうけど…今言ったあなたの気持ちも彼に伝えるべきだと思う…』

『私の姿も見えない、声も聞こえないのにどうやって伝えろと言うのっ!?』

一美は声を荒げた。

『私も力になるから…二人で考えてみよ?』

広恵は、一美を宥めるように言ってから孝を見た。

そして、孝が手のひらに乗せて声を殺して泣きながら見つめている指輪が広江の目に留まった。

『素敵な指輪ね…可愛いデザインだね…』

女性である広恵は、一美の気持ちが痛いほど解っていた。

広恵もまた、一美の気持ちを察して涙を滲ませていたところに、指輪を見つめ声を殺して泣いている孝を見て堪えきれずに涙を溢した。

『…ごめんなさい…取り乱しちゃった…』

一美は広恵を見て頭を下げた。

『うぅん…気にしないで…取り乱して当然よ。私だってそうだったもの…』

『すみません…』

一美は、もう一度広恵に謝った。

一美は、自分が寝ているベッドに目を向けた。

看護師がいろいろな医療装置を一美の体から外していた。

妹の美雪が、看護師に体を支えられながら部屋を出ていこうとしたとき、孝が美雪と看護師の傍へ行き看護師の代わりに孝が美雪の体を支えて部屋から出ていった。

『美雪…独りにさせちゃったね…ごめんね…』

孝と美雪、二人が部屋を出ていくところを見ていた一美は、寂しく悲しい気持ちに胸を締め付けられる思いだった。

『あと49日か…』

一美は誰にともなく呟いた。

『そうだね…何とか一美さんの今の気持ちを二人に伝えないとね…あとご家族にも…私も力になるから…』

『ありがとう広恵さん。私の家族は妹だけなの…そして、孝も家族になるはずだった…』

一美はそう言って、また泣き出した。

『そっか…家族が増えるとこだったんだね…』

『はい…妹も家族が増えることに、とても喜んでたの…でも…増えるどころか…アタシ自身が居なくなっちゃった…』

広恵は、孝と美雪の二人が出ていった部屋の扉を見てから一美に向き直った。

『ほら、そう言う気持ちも妹さんに伝えないと…ねっ?
そうすれば、天国に行くときになっても寂しさも哀しみも癒されるよ。
私、この世界に長年いる人知ってるから、生きてる人に気持ちを伝えるやりかた知ってるかもしれないから聞いてみるよ。
一美さんは暫く妹さんと彼の傍にいてね?明日のこの時間に、この場所で会おうね』

『はい…』

一美は力なく返事をした。

広恵は手を振りながら、部屋から出ていった。

一美は、もう一度自分の体に戻ろうと試みた。

しかし、先程と同じで自分の体を何の抵抗もなくすり抜けてしまった。

部屋の外では、美雪の啜り泣く声が聞こえていた。

一美は、部屋を出て妹の美雪の傍に立った。

通路に備え付けてある椅子に座り、体を前に折り曲げて顔を伏せて泣いていた。

孝は、美雪の傍で目を赤くして、手に持っている指輪を見つめていた。

そして、指輪を握り締め肩を震わせていた。

美雪の傍に居る孝は、涙は溢してはいるものの、声を出さずに泣いていた。

暫くして一美の身体は治療台に乗ったまま部屋から出てきた。

看護師に自分の体が運ばれていくのを、ただ見送る一美だった。

孝と美雪は、その後を着いていった。

一美は、一人残って今まで美雪が座っていた椅子に腰掛けた。

そして…自分は本当にこの世の者ではなくなったんだ…と呟いた。

一美は…悲しみと、どうしようもない寂しさに包まれ声をあげて泣いた。

目の前を通り過ぎる病院関係者や、入院している患者らしき人は一美に目もくれず行来していた。

やっぱり、私は誰にも見えていないんだ…。

そんなとき、ふと、視線を感じた一美は顔を上げて辺りを見回した。

少し離れた所で、小さな女の子が一美をじっと見ていた。

一美は自分の周りを見回したが、自分以外に椅子に座っている人は居なかった。

そして、女の子に視線を向けた。

女の子は、一美を見ていた。

『あの子には、アタシが見えてるのかな…』

そう思った一美は女の子に手を振ってみた。

女の子は、笑顔は見せなかったが一美が手を振ったことに対して、手を振り返した。

『見えてるんだ…』

一美は、そう確信して女の子に笑顔を見せて手招きをした。

女の子は戸惑いを見せたが、一美の傍までとことこ歩いてきた。

女の子はピンクのパジャマを着ていた。

この病院に入院してるのだろう、と一美は思った。

『こんにちは。お姉さんにお名前教えてくれる?』

『お名前は、みゆきっていうの』

女の子は自分の名前を言い、笑顔を見せた。

『みゆきちゃんていうんだ。私の妹も美雪って言うんだよ。それから私は、かずみって言う名前なんだよ。みゆきちゃんは、私の事が見えるの?』

『みゆきのお姉ちゃんは、ひとみお姉ちゃんなの』

みゆきから見当違いの言葉が返ってきた。

『ふーん、お姉ちゃんがいるんだ。みゆきちゃんはいくつなの?』

そう言って一美は、ハッとした。

自分の名前を、ひとみ、とよく読み間違えられていたことを思い出したのだ。

女の子の名前は、みゆき…お姉ちゃんの名前は、ひとみ…漢字はどう書くのかわからないけど…瞳?一美?これって偶然?

一美は、ふとそんなことをおもった。

『ねぇ、みゆきちゃん。みゆきちゃんはいつもこのお医者さんにいるの?』

『うん。みゆきは、いつもここにいるよ』

それを聞いた一美は、先程別れた広恵の事が頭に浮かんだ。

『もしかしたら…この子も…』

そんなことを思った時、遠くの方から一人の女性が小走りに近付いてきた。

『みゆき!こんなところで何してるの?ママ探し回っちゃったじゃないの!さっ、お部屋に戻ろうね』

『ママ?今ね、このお姉ちゃんが泣いてたから、みゆきがお話ししてたの』

みゆきの母親の顔が少し曇った。

『お姉ちゃん?どこにいるの?』

みゆきのママが現れたことで、一美の気持ちは軽くなった。

『このお姉ちゃんだよ』

みゆきは一美を見て指を指した。

『みゆき?ママには誰も見えないよ?いつも嘘は言っちゃダメって言ってるでしょ!』

『うそじゃないもん!お姉ちゃんいるもん!』

みゆきは今にも泣きそうな顔をしていた。

『みゆきちゃんは嘘は言ってないよね。みゆきちゃんのママには、私が見えないだけだから。だから泣かないで?』

『うん…泣かない…』

一美と話しているみゆきを見た母親は、困惑した表情で、みゆきを見ていた。

『ほら、みゆき…お部屋に戻ろうね…』

みゆきの母親は、みゆきの小さな手を優しく握り、病室に戻ることを促し歩きだした。

『うん…お姉ちゃん、ばいばい…』

みゆきは、振り返って一美に向かって手を降った。

そんな娘を見ていた母親は、突然鳥肌が立つのを感じていた。

一美も手を降って、みゆきと母親の後ろ姿を見ていたとき、学生服を着た女の子が母親とみゆきの元へ駆け寄ってきた。

『ママ、みゆき!』

女の子が母親とみゆきの前で立ち止まった。

『ひとみ、みゆき居たよ。そこの長椅子の所にいたのよ…』

母親は振り向いて、一美が座っている椅子を指差した。

『あの子が、みゆきちゃんのお姉さんのひとみさんか…意外と歳が離れてるみたいね…アタシと美雪みたい…』

一美は、みゆきの姉であるひとみを見ていた。

ひとみも母が指差す長椅子を見ていた。と、言うより一美を見ていたようで、ひとみと一美の視線が交差した。

『ママ?みゆき…誰かとお話ししてなかった?』

そう言って、ひとみは母親の顔を見た。

『みゆきが座ってた椅子には、みゆきの他に誰も居なかったけど…みゆきは、お姉ちゃんが居るって言うのよ…なんか怖くなっちゃった…なんでそんなこと聞くの?』

『うぅん…何でもない…ほら、みゆき。お姉ちゃんとお部屋にいこう』

ひとみは、みゆきの手を繋ぎ病室へ向かおうとしたとき、みゆきが振り向き一美に向かって手を振った。

それを見ていた姉のひとみも振り返った。

二人には一美が椅子に座り、手を振っているのが見えた。

『ママ?先に行ってて。後からみゆきとお部屋に戻るから…』

ひとみは立ち止まり、母親を先に行かせることにした。

『そう?ママは来週のみゆきの手術のことで先生にお話しがあるからそうしてくれると助かるよ、ひとみ…』

『ちゃんと、みゆきをお部屋に連れていくから心配しないで』

母親は、ひとみにみゆきを任せ先に歩きだし通路の角を曲がって見えなくなった。

そして、ひとみはみゆきの手を繋ぎ、一美の所へと戻ってきて椅子に座ったままの一美の前で立ち止まった。

一美は顔を上げて、みゆきとひとみを見上げた。

『あなたにも私が見えるのね。あなたが、みゆきちゃんのお姉さんのひとみさん?』

『はい…』

『あの…一つきいていいかな』

一美は、そう言ってひとみを見た。

『はい。いいですけど…一つだけ約束してください…』

ひとみは、一美の視線から目を逸らすように言った。

『うん、わかった。約束するから言ってみて?』

一美は、ひとみとみゆきの顔を交互にみた。

『あの…約束と言うのは…妹に近付かないでほしいのです…。あなたは寂しくて妹に声をかけたのかもしれないですけど…これ以上、妹に近付かないでください…』

一美は、一瞬寂しそうな顔を見せたが、ひとみを見上げ笑顔を見せた。

『大丈夫よ、ひとみさん。確かに寂しかったのはある。みゆきちゃんとお話ししてみたかったの…ごめんなさい…もう…みゆきちゃんに近付いたりしないから安心して?』

『いえ、私の方こそごめんなさい…。私…お姉さんみたいな人たくさん見てきてるから…
妹も私と同じで見えちゃう子なの…。
そして、妹はよく熱を出したり体調を崩したりするの…
私は大丈夫なんだけど…。
お姉さんが寂しいのはわかるけど、妹には近付かないでください』

『そっか…。うん、わかった。
アタシ…さっき死んじゃったばかりで、彼と妹が来てるんだけど…
二人にはアタシの声も聞こえないし姿も見えない…。
悲しくてさみしくてここで泣いてたら、みゆきちゃんが慰めてくれたのよ…
アタシの妹も美雪って言うの…そして、アタシは一美(かずみ)…漢数字の一に美しいの美よ。
みゆきちゃんが体調崩したらよくないからアタシはみゆきちゃんに近付かないようにする。約束するよ』

『寂しいのはわかるけど…こんなこと言ってごめんなさい…。あの…お姉さんの聞きたいことってなんですか?』

ひとみは、モジモジしながら一美に問い掛けた。

『あっ、えーとね…。ひとみさんの名前の事なの。ひとみってどういう漢字を書くの?』

『あっ、それならお姉さんと同じです。漢字の一に美術の美。私は、これで(ひとみ)と読みます』

ひとみは、指で宙に書くように腕を動かした。

『読みは違うけど同じ字なんだ…みゆきちゃんはどういう字を書くの?』

『みゆきは、美術の美に幸せと書きます。お姉さんの妹さんは?どういう字を書くの?』

『アタシの妹は、美術の美に雪と書くのよ』

今度は、一美が指で宙に書くように腕を動かした。

と、その時…、一美(ひとみ)と美幸の母親が曲がっていった通路から、孝と美雪が歩いてきた。

そして二人は、一美が座っている長椅子から少し離れた場所にある長椅子に座った。

美雪は泣き止んでいたが、また感情が込み上げてきたのか、しくしくと泣き出した。

一美は思わず立ち上がり、美雪!孝!と二人の名前をよんだ。しかし、二人に一美の声は届かなかったが、みゆきとひとみにはハッキリ聞こえていた。

一美は、堪らなくなり美雪の側に駆け寄っていた。

『美雪…悲しい思いをさせてゴメンね…』

そんな一美の声を聞いていた一美(ひとみ)と美幸。

美幸は、一美(ひとみ)から手を離して孝と美雪の傍まで歩いていった。

『あっ!こらっ、美幸!』

一美(ひとみ)はすぐに美幸を追いかけ手を繋いだ。

『一美(かずみ)お姉ちゃん?この人美雪お姉ちゃんなの?』

そう言って、美幸は一美の方を見た。

『すみません!ほら美幸、お部屋に戻るよ!』

孝と美雪に、頭を下げて一美(ひとみ)は美幸の手を引き、その場を離れていった。

孝と美雪は、二人を目で追い掛けたあと、お互いが顔を見合わせた。

『今、一美(かずみ)お姉ちゃん、て言ったよね?』

美雪は孝の顔を見た。

『うん、確かに言ってたな…。美雪ちゃんの名前も言ってた…』

二人は顔を見合わせたあと、一美(ひとみ)と美幸が曲がっていった通路を見つめていた。


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  1. ショートストーリーへようこそ(^-^)/♪(08/20)
  2. 海辺のバンガロー…その壱 👻ヽ(;゚;Д;゚;; )ギャァァァ(08/22)
  3. 海辺のバンガロー👻 その弐 ((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル(08/29)
  4. 天使の仕事…(04/09)
  5. 一年間だけの約束…(05/19)
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