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妹…8 (短編ハードボイルド)

※注
過激な暴力の表現あり。
人物、団体名は架空のものであり
全てフィクションです。


          【1】


亮介と須藤は、吉田達を振り切り東城ビルへと向かった。


『須藤さん、奴等に銃があると迂闊に手を出せないですね…』

亮介は車を運転しながら須藤をチラッと見た。

『まぁな…。でもよ、素人の銃なんてそうそう当たるもんじゃないぜ』

『へぇ~、そんなもんなんですか…』

亮介は前を見たままで言った。

『なんだ亮介。怖じ気付いたか?』

『まさか。俺は吉田を半殺しにしてやりたい気持ちは変わりませんよ』

『でもよ、撃たれたら死んじまうかもしれないんだぞ』

須藤は亮介の気持ちを確かめるように言った。

『人間なんて死ぬときは死んじゃいますからね。死ぬつもりがないのに死んだり、死のうと思っても死ねなかったり…。だから、俺がもし死ぬ時が来るとしたら、それが俺の終わり方なんだなって素直に受け入れますよ。たとえ病気だとしても、事故だとしても…』

亮介はそう言って運転席で座り直すように姿勢を正した。

『お前腹座ってるな。でもよ…吉田みてぇな悪党に殺られるんじゃねえぞ。万が一の事があったら由美ちゃん一人になっちまうんだからな』

『生きて帰れそうになかったら、俺は必ず吉田を道連れにしてやります…必ず…。もしもそうなったら…由美はきっと琴音ママの側に行くかもしれません。ママのこと慕ってましたから…』

須藤は亮介の話を黙って聞いていた。
そして亮介の腹の座った度胸に興味をそそられた須藤。

『なぁ亮介…』

『はい?』

『お前、今仕事何やってるんだ?』

『警備会社の派遣です。と言っても道路工事の車の誘導がほとんどですけどね』

『何年働いてるんだ?』

『警備会社は一年です』

『警備会社の前は?』

『どうしたんですか須藤さん。何処かの面接みたいじゃないですか』

亮介は須藤を見て笑った。

『いや、お前のその度胸は何処から来てるのかと思ってさ…』

『あぁ、そう言うことですか。警備会社に入る前は自衛隊に四年間居ました。陸自です。度胸はその時に付いたのかも知れません』

『なるほど…それで納得できたよ。国のためなら命の限り戦うんだろ?』

『えぇ、まぁそうですね』

『なら、さっき奴等が銃をぶっぱなした時それほど怖いと思わなかったのか?』

『いや~、やっぱり怖いですよ。自衛隊でも実弾射撃は殆ど無いですからね』

『俺にはそれほど怖がってるようには見えなかったけどな。そうかー、自衛隊にいたのか…』

『10代の頃から喧嘩ばかりしてましたよ。それが自衛隊でも役に立ちましたからね。格闘訓練で』

亮介は須藤を見て笑った。

『こりゃ俺でもお前には敵わないかもな。よく一人で神栄商事の奴等をぼこぼこにできたなぁって思ってたけど納得したよ』

その時、前方の脇道から車が出てきて、亮介が運転する車の対向斜線からみるみる近付いてきた。

すれ違い様にパトカーだと分かった。

亮介はバックミラーでパトカーの様子を見ていた。

パトカーのブレーキランプが光ってUターンをしているのが分かった。

亮介はアクセルを踏んで加速した。

『どうした亮介?』

『今すれ違った車パトカーです。Uターンしてたからバレたかもしれないです』

『今度は警察かよ…。逃げ切れそうか?』

『だいぶ距離が開いてますから何とか逃げて見せます』

須藤が後ろを振り向くと、後方の遠くに赤色灯が見えていた。

亮介はアクセルをベタ踏みしてパトカーを振り切り埠頭へと向かった。

埠頭に着き、亮介は車を物陰に隠した。

そして車に着いていたカーナビをむしり取り車を降りて海へ投げ捨てた。

『おいおい、何やってんだよ。カーナビぶっ壊して』

車を降りてきた須藤が亮介の側へ歩いてきた。

『あのナビには遠藤医院へ寄った記録が残ってると不味いと思ったので…』

『なるほど…遠藤先生にまで迷惑かけたかねぇな…』

『須藤さん、車はここに置いておきましょう。後で吉田に電話して車の中にいる奴と一緒に回収させましょう。警察に見付かるよりはいいかもしれません。奴等の数人も車回収に来るかもしれないから、ビルに何人いるか分からないけど少しでも奴等の頭数が少ない方がいいですからね』

『そうだな…。しかしお前は冷静だな。神栄商事の奴等に追われても警察に追われても動じないんだな。見事な肝っ玉だぜ』

『いや、けっこうビビってますよ。それより何処かに消火器ないですかね?』

そう言って亮介は辺りを見回した。

『消火器なんか何に使うんだ?』

『車の中の指紋を消すんです。あの車は俺しか乗っていないことになってるかもしれません。須藤さんの指紋は消したいので…』

『俺の事なんか気にしてんじゃねぇよ。もう俺とお前は同罪のようなもんだ。捕まるときは仲良く捕まろうぜ。勿論死ぬときも一緒だ。吉田を道連れにな…』

亮介は須藤の言葉に自衛官の時に同期の仲間と誓いを立てたことを思い出さずにはいられなかった。

万が一の有事の時には、お互い助け合おう。どうしてもダメだと思ったら死ぬときは皆一緒だ。

仲間でそんな誓いを立てた亮介。

須藤に言われて自衛官の時の苦しい訓練を思い出し、須藤と共に逝くのも悪くない、と思う亮介だった。

『消火器はよくトラックに積んであるの見たことあるぞ。何処かにトラック止まってないか?』

そう言った須藤の目に2トントラックの影が見えた。

須藤はそのトラックへ駆け寄り荷台の鳥居上部に取り付けられている消火器ボックスを見つけた。

荷台へ上がりボックスを開けると消火器が収まっていた。

須藤はそれを取り上げ荷台から降りて亮介に渡した。

『ありがとうございます、須藤さん』

亮介は後部座席の足元で手足を縛られ寝転がっている鈴の音で暴れた男に近くにあった薄汚れたブルーシートを被せ、この埠頭まで乗ってきた神栄商事の神崎の車の車内に消火器の消火剤が無くなるまで運転席と助手席を中心に車内に満遍なく消火剤を吹き付けた。

鍵は付けたままで車のドアを閉めた。

『これでオッケー。須藤さんの指紋も俺の指紋も警察には分からない筈です』

『お前、感心するくらいよく頭が回るな…』

『消火剤で指紋が解らなくなるのはテレビで知ったんですよ』

『ふーん、そうか。で、これからどうするつもりなんだ?』

作戦は頭の切れる亮介に任せる須藤だった。

『通りに出てタクシー拾いましょう。どこか24時間開いているレンタカー屋を探して車を調達しましょう』

『そうだな…』

そして二人は歩いて埠頭から出て、大通りでタクシーを拾った。

亮介はタクシーの運転手に東城ビルのある住所を告げたのだった。

そしてタクシーの中で亮介は外に目を凝らして開いているレンタカー屋を探していた。

20分ほど走った所で道路沿いに煌々と明かりの着いているレンタカー店を見つけた亮介。

タクシー運転手に停まってもらい料金を払ってタクシーを降りた。

須藤と二人でレンタカー屋に入り、亮介は重要参考人として指名手配されていることで名前でバレる可能性があったので須藤がレンタカーを借りる手続きをした。

身分証として須藤は免許証の提示を店員に求められたが、怪しまれることなく車を借りることができた。

須藤の好みで借りた車はランドクルーザーだった。

そこそこ早く吉田を捕まえて監禁するには十分ということでランドクルーザーに決めたのだった。

運転は亮介に任せて須藤は助手席に乗り込んだ。

ランドクルーザーはでかい上に重たそうな車だったが、加速は驚くほど早かった。

亮介はランドクルーザーに満足していた。

二人はコンビニに立ち寄り、弁当とおにぎり、パンと飲み物、そして週刊紙を2冊買って再び走り出した。

『その週刊紙何かに使うんですか?』

亮介が須藤に聞いた。

『後で分かる…』

途中深夜まで開いているディスカウントスーパーに寄りバット二本とガムテープ二つ、薄いゴム手袋、ビニール紐と太めの結束バンド、そして布がよく切れるハサミを購入した。

再び走り出し亮介はおにぎりを食べ、須藤は豪華なのり弁をたいらげた。

そして二人は東城ビルの見える場所に着いたのだった。

『須藤さん、あの白いビルが東城ビルです。あの男は8階に事務所があるって言ってましたね…』

『あぁ、8階って言ってたな』

『ちょっと待ってくださいね。吉田に電話してみます』

『分かった』

亮介は自分のスマホを取り出し、神崎の携帯から移した吉田の電話番号に電話番号が着信表示されないように184を付けていた。

亮介は吉田の携帯に非通知で電話をかけた。

10コールの呼び出しに吉田は出なかった。

亮介はもう一度電話をかけた。

やはり10コールでも吉田は出なかった。

亮介は三度目の電話をかけた。

『はい…』

男の声が聞こえた。

『神栄商事の吉田か?』

『誰だよ!』

『佐久間だよ。佐久間亮介だ。お前の手下の神崎の車、鈴の音で暴れた男の一人と神崎の持ってた三百万の金。⭕⭕埠頭の何処かに置いてあるからさ。寒いんだから早く行ってやらないと死んじゃうぜ?あいつ…』

『佐久間ー!テメェこの野郎。見つけた必ずらぶっ殺すからな!須藤って野郎も一緒だろ。お前ら二人生きたまんます巻きにして海に放り込んでやるからな』

『須藤?誰だよそいつ?』

『知らばっくれるんじゃねぇよ!あんまり舐めた真似してるとお前の帰る家、燃えて無くなるぞ!お前の妹、またかっ拐って風俗に売り飛ばしてやるよ。お前は薬を警察に売ったんだからな!お前の妹に稼いでもらうからな!覚えとけよ!』

『おいおい、威勢だけはいいんだな…。寄せ集めの愚連隊のような奴等にお前を守る事が出来るのかな?まぁ、俺がお前を取っ捕まえに行くまで、せいぜい怯えて待ってな…』

亮介はそれだけ言って一方的に電話を切った。

『亮介…お前ヤクザみてぇだな…』

『須藤さんに言われるとは思いませんでした』

亮介は須藤を見てニヤリと笑った。

『それは悪うござんしたね』

須藤も亮介に笑って見せた。

それから数分後。

東城ビルから四人の男が出てきて、隣にある駐車場に入っていった。

すぐに車が一台出てきた。

亮介と須藤は体を低くして出てきた車を見た。

車はクラウンだった。

四人が出てきて一人もビルに戻らないのを確かめて、亮介は静かに車を走らせた。

そして東城ビルの入り口から少し離れたところにランドクルーザーを止めた。

『亮介、この週刊紙腹のところでベルトに挟んどけ』

『なるほど。週刊紙の防具ですね?』

『そんなとこだ。以前殴り込みの時これに助けられたことがあってな』

『分かりました。腹に入れときます』

『そうしてくれ。お互い無傷で吉田を拐いたいからな』

そう言って二人はズボンと腹の間に週刊紙を半分のところで拡げて挟んでベルトをきつめに締めた。

そして須藤はゴム手袋を嵌めてバットを右手で握りしめ、亮介にガムテープを渡しバットと右手をガムテープでぐるぐる巻きに巻いてもらった。

亮介も同じようにゴム手袋をしてバットを握る手をガムテープでぐるぐる巻きにした。

『よし、これでバットが手から離れることはねぇな』

須藤と亮介は必ず吉田を拐うつもりでいた。




          【2】




二人は車を降りて東城ビルの入り口へと向かった。

入り口横の管理人がいる部屋の小窓を避けるように、二人はエレベーターに乗り8階のボタンを押した。

エレベーターのドアが閉まり、上がり始めた。

既に午前零時を回っていて、企業しか入っていないだろう建物は途中で乗ってくる者は居なかった。

8階に辿り着いた二人はドアが開くと同時に様子を見ながらエレベーターを出た。

8階には四つの部屋があるようで、二人はどの部屋が吉田のいる部屋なのか分からなかった。

一部屋ずつドアに耳を当てて探るも分からなかった。

亮介は神崎の携帯を取り出し、切っていた電源のスイッチを入れて、吉田に電話をかけた。

静かな通路に携帯の着信音らしき音が聞こえた。

携帯の着信音は一番奥の部屋から聞こえていた。

『亮介…あれ監視カメラじゃないか?』

須藤が見つけた一番奥の部屋の前の天井に小さなカメラが二人に向いていた。

その時、二つのドアから数十人の男達が木刀やナイフを持って出てきた。

そして奥のドアからも数人の男が出てきた。

前後を男達に挟まれた亮介と須藤。

亮介と須藤はお互い背中を合わせて男達に向かう形となった。

『亮介。奥の奴等は任せたぞ。30人近くいそうだけど、こんな狭い通路じゃ数なんて関係ない。向かってくる奴だけ叩き潰していこうぜ』

『分かりました…』

二人はそれだけ言ってバットを前に突き出して相手が動くのを待っていた。

須藤と睨み合っていた一人がナイフを振りかざして突進してきた。

須藤は前に突き出していたバットの先でナイフを持った男の額目掛けてバットを前に突き出した。

須藤のバットは男の額を突いて、男は仰け反るように倒れた。

それが合図になったかの様に次々と男達は亮介と須藤に襲いかかっていった。

男達は自分に気合いを入れるためなのか、怖さを振り払おうとしているのか、二人に向かっていくときに大きな声を発していた。

亮介に向かってきた男の顔にバットを突き出す亮介。

男が仰け反ったところで亮介は男の腹に蹴りを入れた。

須藤は男達の木刀をバットで跳ね退け、木刀を跳ね退けたバットをぐるりと振り回し、下から男の脛をバットで叩いた。

須藤のバットで脛を叩かれた男は尻餅をついて立てなくなった。

亮介に二人の男が襲いかかってきた。

亮介は力任せにバットを横にフルスイングした。

一人の男の脇腹にめり込む亮介のバット。

しかし、もう一人の男のナイフが亮介の腹に刺さった。

亮介は鋭い痛みを感じたが、インスタントな雑誌の防具のお陰でナイフの刃先だけが亮介の腹に食い込んだだけだった。亮介はすぐにナイフの男の股間を蹴り上げた。

ナイフの男はその場に踞った。

三人の男のナイフと木刀が須藤に襲いかかった。

一本のナイフが須藤の腹の雑誌に刺さった。

それを須藤は引き抜き男達に投げ付けた。

ナイフは別の男の足に突き刺さった。

男は刺さったナイフの痛みで倒れた。

その男につまずいた別の男が体制を崩したところを須藤はバットを下から上に振り上げた。

須藤のバットは男の顎を捉え、男は仰け反り人形のように後ろへ倒れた。

そして別の二人のナイフが須藤に襲いかかった。

一人のナイフは辛うじて避けたが、もう一人のナイフが須藤の頬に当たった。

須藤の顔からみるみる血が流れ出てきた。

須藤が左手で頬の血を拭おうとしたとき、須藤の腹にナイフが突き刺さった。

そのナイフはズボンと腹の間に入れていた雑誌を貫いていた。

須藤は片膝を着いた。

残った数人の男が須藤に襲いかかってきた。

それに気が付いた亮介は、落ちていた木刀を拾い上げ須藤に襲いかかる男達に投げ付けた。

亮介が背中を見せたとき、奥から出てきた男の一人がナイフで亮介に襲いかかった。今度は須藤が落ちていた木刀を亮介に襲いかかる男に投げ付けた。

一瞬怯んだ男に亮介はバットを顔の辺りに突き出した。

亮介のバットは男の鼻を直撃。

男は顔を両手で押さえて踞った。

その踞った男の背中に亮介は力一杯バットを振り下ろした。

「ゴキッ」という音と共に男は動かなくなった。

奥の部屋から出てきた男は三人だけになった。

その三人は奥の部屋に戻っていった。

須藤は血だらけになりながらも、襲いかかってくる男の足をめがけてバットを振った。

須藤の力はだいぶ弱っていたが、それでも脛に当たるバットは男を倒すには十分な威力だった。

再び膝を着いた須藤。

その須藤に向かってナイフが飛んできた。

そのナイフは須藤の左肩に刺さった。

『須藤さん!』

亮介は襲いかかってくる木刀をバットで払い退けて須藤を見た。

須藤は左肩に刺さったナイフを左手で引き抜いた。

それでも須藤は立ち上がり右手に持ったバットを振り回していた。

亮介は須藤に襲いかかってくる男達に容赦なくバットを叩き込んでいた。

ある者は顎の骨が砕け、ある者は腕があらぬ方向に曲がっていた。

バットを振り回す亮介の後ろからナイフを持った男が襲いかかってきた。

それを目にした須藤は渾身の力で立ち上がり亮介に襲いかかるナイフを体で受け止めた。

ナイフは須藤の腹に突き刺さった。

須藤は週刊紙を貫いたナイフを自分で引き抜き、そのナイフを血だらけの須藤に恐怖で怯える男の腹に突き刺した。

『どうだ…い、痛てぇだろ…昇竜の須藤を嘗めんじゃねぇぞ!』

鬼の形相で立ち上がった須藤は奥のドアへ向かった。

亮介と対峙している男は残り三人となった。

亮介は腹にナイフが刺さったが週刊紙のお陰で傷は浅かった。

亮介は落ちていたナイフを数本拾い上げ右手に巻いたガムテープをナイフの刃を反して切り裂いた。

バットを握り締めていた手は強張り中々広がらなかったが、自由になった右手に亮介はバットの代わりにナイフを握り締めた。

左手に木刀を持ち残りの三人の男に一歩一歩近付いた。

三人の男は血だらけになりながらも向かってくる亮介に怯えて階段を転げ落ちるように逃げていった。

『…根性無え野郎だな…』

息を切らしながら呟いて、亮介は後ろを振り返ると須藤が奥の部屋のドアを開けようとしていた。

須藤は身体中血だらけだったが、辛うじて立っていて吉田が居るであろう奥のドアを開けようとしていた。

『須藤さん』

『へへ、どうだ…週刊紙役立ったろ?』

『そんなことより座っててください!』

『俺も歳だな…こんなに刺されちまうなんてよ…』

『動いちゃダメですよ!吉田は俺がやりますから』

『ば、ばか野郎…お前だけにいい格好させるわけにはいかねぇんだよ。吉田に…ま、ママの店をよ…弁償させなきゃ俺の気が済まねぇんだよ』

須藤はそう言って一番奥のドアの前に立った。

その時、「ガンッガンッ」と音がしてドアに二つの小さな穴が開いた。

吉田が中から銃を撃ったのだった。

二つの銃弾のうち、須藤の体を掠めた一つの銃弾。

須藤の怒りは頂点を越えて、鬼のような形相で力任せにドアノブをバットで叩きまくった。

その時も「ガンッガンッガンッガンッ」と四つの銃弾がドアを貫いた。

須藤はドアから逸れたところでドアノブを叩いていたので銃弾は掠りもしなかった。

バットが折れたところでドアノブが壊れた。

ゆっくり開くドア。

須藤はバットを握っていた手のガムテープを剥がして右手を自由にさせた。

須藤は落ちていた木刀を二本拾い上げ、バットを握っていた強張った手で木刀を握った。

左手にも木刀を握り締めた。

須藤はいつの間にか上着を脱いでいて背中をナイフで切られたのかシャツが大きく裂けていて背中の竜が須藤の呼吸と共に動いていた。

亮介には竜の彫り物が生きているように見えた。

須藤は痛みが麻痺してきていたのかふらつくことなく、部屋に入るタイミングを見計らっていた。

『亮介、俺が入ったらタイミングずらして部屋に飛び込め。いいな?』

『でも…須藤さんの体じゃ無理ですよ』

『うるせぇ、俺の言うこと聞け』

『…』

『亮介返事は…』

『分かりました』

『うん、それでいい』

須藤は木刀でドアを動かした。

「パスッパスッ」というサイレンサーを付けた銃声音と共に開いたドアを抜けて向かいの壁に穴が二つ開いた。

須藤はもう一度ドアを木刀で動かした。

「パスッパスッパスッ」と音がして向かいの壁に穴が三つ開いた。

もう一度ドアを動かした。

何も聞こえなかった。

須藤は部屋に転がり込んだ。

三人の男の中に吉田の顔があった。

須藤は吉田に向かって木刀を投げた。

同時に机の上に置いてあるものを手当たり次第に次々と吉田に投げ付けた。

吉田は須藤の反撃に銃の弾切れを補充できなかった。

その時亮介が部屋に入ってきた。

吉田の顔を確認すると亮介は躊躇せず吉田に向かっていった。

須藤は三人の男を自分の方に引き付けた。

亮介は吉田のデスクに木刀を叩きつけた。

吉田は亮介の迫力に銃を落とした。

亮介は吉田の顔の前に木刀を突き付けた。

『テメェ、よくも妹をオモチャにしてくれたな』

『お前の妹か。そう言えば薬でイカれて抱いてやったら喘いでたぜ。もう立ち直れねえだろうがよ。また薬売ってやろうか?あぁ?』

精一杯の悪たれをつく吉田。

亮介は何も言わずに亮介を睨み付ける吉田の右目を躊躇無く木刀で突いた。

吉田は亮介も聞いたことの無いような人間の悲鳴を上げた。

その時、須藤と争っていた男二人が亮介に木刀とナイフで襲いかかった。

三人のうちの一人は床に倒れていた。

襲いかかる木刀をギリギリで交わした亮介。

しかしナイフは亮介の右腕を切りつけた。

亮介は須藤の姿を探した。

須藤は床に俯せで倒れていた。

『須藤さん!』

叫ぶ亮介の声に須藤の体が少しだけ動いた。

『奴なら当てにしない方がいいぜ。たくさん血が出ちゃってるみたいだからな』

一人の男が須藤を見たとき、亮介はその男の顔に木刀を横殴りに叩きつけた。

亮介の木刀は男の顎に当たった。

男は口を閉じることができず、口を開いたまま床を転げ回った。

亮介は転げ回る男の腕や足を木刀で数回も叩きつけた。

男の足の骨は砕かれ転げ回る度に足が変な方向へ曲がっていた。

それを見たもう一人の男は亮介に恐怖を覚え部屋から逃げ出した。

亮介は吉田に向き直り木刀を突き付けた。

片目を潰された吉田はそれでも銃に弾を込めていて亮介に銃を向けた。


「素人の撃つ銃なんて当たりやしねぇよ」


須藤の言葉を思い出した亮介。

左手に持っていた木刀を吉田に投げつけると同時に、亮介は横に飛んだ。

「パスッパスッパスッパスッ」と四発の静かな銃声が聞こえた。

四発のうち一発は亮介の足を掠めていた。

『ほんとだ…こんな近いのにまともに当たらねえや』

亮介はそんなことを思いながら、体制を立て直し吉田に体当たりした。

『吉田…。もうお前一人だぞ。やっぱり寄せ集めの愚連隊なんて大したことねぇな。吉田…覚悟しろよ』

亮介は倒れた吉田の胸を足で踏みつけ木刀の刃先を吉田の喉に当てた。

『殺すんなら殺せ!』

『殺しはしないからよ、鈴の音の店の修理代出せよ。500万』

『あんな店どうなろうが俺には関係ねぇ!』

『まだそんな強がり言えるのか…』

亮介は倒れている吉田の掌を踏みつけた。

『修理代払え、500万』

『あんなチンケな店に500万も掛かるわけねぇだろ!』

亮介は踏みつけていた吉田の掌を靴底で捻り潰すつように足に体重をかけた。

吉田の悲鳴が部屋に響いた。

『修理代払えよ…500万』

亮介は木刀で吉田の暴れる両足の脛を力加減なく叩いた。

吉田の足は大人しくなった。

『痛いだろ?500万修理代出すか?』

呻き声を上げるだけの吉田。

『修理代…出すつもり無いのか?』

亮介は吉田の肩に足を乗せた。

吉田の片方の手が亮介の足を掴んだ。

亮介は木刀で吉田の手を叩きつけた。

それきり吉田の抵抗は無くなった。

『俺が体重かけたらお前の肩が外れるか折れるかどっちかだぞ?修理代出すか?500万…』

『き、金庫に…は…800万入ってる…500万、も、持っていけ』

『そんなにあるんだ。なら500万は修理代で貰うからな。残りの300万は妹の慰謝料として貰っていく…いいな』

『か、勝手にしろ…』

『金庫何処だよ。お前が開けないと俺が泥棒になっちまうだろ…。お前の仲間の神崎が言ってたぜ?ドアは自分で閉めろって。じゃないと監禁になるからってよ。それと同じなんだよ!分かるよな?』

亮介は吉田の肩に乗せた足に体重をかけた。

『分かった…分かってるから…い、今開けてやるから』

『開けてやるから?その言い方気に入らないな…』

亮介はもう一度足に体重をかけた。

『わ、わか、わかった…悪かった。開けさせて…金庫…開けさせてもらい…ま、ます』

『わかったようだな。じゃあ開けてくれるか?』

吉田は這いずりながら、金庫の所へ行きしぶしぶ金庫を開けて中の金を取り出した。

金庫の中にはヤミ金の顧客名簿も入っていた。

亮介はその名簿も引っ張り出した。

『こいつは俺が処分しちまおう…』

亮介は呟いた。

その時、須藤が起き上がった。

『須藤さん!大丈夫ですか?』

亮介が須藤に声をかけた。

『あぁ…なんとかな…。お前が吉田を虐めてる間に休ませてもらった…。歳には勝てねぇや…疲れたー、痛てぇー』

須藤はヨロヨロと立ち上がった。

『苛めてるなんて人聞き悪いじゃないですか。吉田が鈴の音の修理代と由美の慰謝料くれるって言うから…。反省してるようですよ、こいつ』

亮介は吉田の手を踏みつけた。

『反省してる!反省してるから手を踏まないでくれ…』

『やっぱり苛めてんじゃねぇか亮介。俺にもやらせろよ。まだ聞くこともあるし、俺には反省してるように見えないからな』

『あっ、そうですね…肝心なこと聞かないと』

吉田は怯えるような顔をした。

『亮介、これからこいつの話すこと録音できるよな?スマホで』

『もちろんできます』

『じゃあ頼む。録画だと苛めてるのバレちゃうからな。じゃあ、今度は俺が尋問するからよ』

『でも、そろそろここを離れた方がいいかもしれません。こいつらの仲間が帰ってきても不味いし、逃げた奴等が警察に通報するかもしれないですから』

『それもそうだな…俺もいつまで立っていられるかわかんねぇし…あの山の中行くか』

『いいですね。歩けますか?須藤さん』

『なんとかな…』

『じゃあ行きましょう。長居は無用です』

『おう。あっ、ちょっと待て。監視カメラぶっ壊していこうぜ』

『あっ、そうですね。残ってたらこいつの死体見つかったときに俺達疑われちゃいますからね』

亮介は、そう言って吉田を見た

『やっぱり殺すんだな。殺されるんなら何も喋らねぇぞ』

吉田は懲りずに亮介と須藤に反発した。

『あんたまだ自分の立場分かってないんだな。
あんたが俺らの言うことに答えてくれれば死なずにすむかもな。
まぁ、それは俺の考えだからさ。
こちらの人はあんたをどうするかはわからないし、俺はこの方の言うことに反対するつもりは無いからさ。
要はこの方次第であんたがどうなるか決まるんだよ。この方の機嫌損ねない方がいいと思うよ。俺は…』

亮介はそう言って監視カメラを壊し、記録用テープを引き出しグシャグシャに丸めてポケットに突っ込んだ。

亮介の言葉に須藤は吉田を睨み付けた。

須藤はよろよろ歩きながらエレベーターへ向かった。

亮介はポケットに入れておいた結束バンドで吉田の手を後ろで縛り前を歩かせた。

三人はエレベーターに乗り一階で降りて、ランドクルーザーに乗って東條ビルを離れた。

亮介は須藤と鈴の音で暴れた男の一人を連れていった山の中へと向かった。

途中パトカー数台とすれ違ったが車も違うため問題なく走ることができた。

そして山の中へとランドクルーザーは入っていった。

その間、亮介と須藤は残っていたおにぎりとパンを頬張り腹に流し込んだ。

亮介は腹を刺されていたが週刊紙のお陰で傷は浅く、打撲と切り傷の方が酷かった。

須藤も腹を刺されていたが、週刊紙の即席防具で傷は少し深かったが血は固まり始めていて出血は止まっていた。

その頃、埠頭に車と仲間、そしてあるはずの無い300万の金を回収に行った3人が神崎の車と男を連れて東條ビルの近くまで戻ってきていた。


『全くよ~。金なんか無えじゃんかよ。吉田さんに何て言う?有りませんでしたー、で済むと思うか?』

『いやいや、それじゃ信じてくれないだろう。お前らが盗ったんだろ!ってことになるよ…絶体…』

『だよなー。帰りたくねぇな…。俺、あの吉田って男、もう関わりたくねぇよ…』

『同感』

『俺も』

『俺もだ…。このままバックレるか?』

『俺らが金もって逃げたって、すぐ仲間が探しに来るだろうよ』

『正直に言うしかねぇよな…。あー着いちゃった…』

神崎の車に残されていた男を含め、五人はエレベーターで8階へ上がった所で異常に気が付いた。

呻き声を上げるものや、ぐったりと動かない者が通路に折り重なるように倒れていた。

二人は呻きながら倒れている者を介抱。
後の三人は事務所へ入って事務所が襲われたことを確信した。

吉田の姿は無く金庫が開けられて中は空っぽだった。

『動ける奴だけ連れていこう。皆自分の荷物持ってここ出ようぜ。これじゃ誰も追いかけてこないだろう。吉田さんも拉致されたのかも知れないしな…。あの人他の組から煙たがれてたみたいだし』

『そうだな…もうここには戻らない方がいいかもな』

『だな…。皆、間違っても警察に通報なんかするんじゃないぞ。俺らが疑われて追究されるからな。さっさと出ようぜ』


こうして数人が荷物を持って東條ビルを出ていった。

そんな様子をビルの管理人が何となく見ていた。

若い連中ばかりなので夜中にも頻繁に出入りしていたので管理人は特に気にも留めなかった。

しかし、翌日には管理人により東條ビル8階の惨状を警察に通報されるのだった。


          【3】 


山の中に入った須藤と亮介。

『さーて、亮介。ハサミはまだいいのか?何時でも言えよ。すぐ渡してやっから』

『いや、ここは須藤さんにお譲りします』

『そうか…。じゃあハサミ持っててくれ。こいつが言うこと聞かないと、俺ハサミで刺しちゃうかもしれないからな』

『それは不味いですい須藤さん。こいつから大事なこと聞かないと』

『そうだな。じゃあ聞いてみるか…』

二人は、わざと吉田に聞こえるように話て亮介は吉田に向き直った。

『そうですね。お願いします』

そう言って亮介は須藤から吉田へ向き直った。

『なぁ吉田さん、あまり強がらないで素直に答えた方がいいよ』

『わかった。わかった…聞かれたことは出来るだけ答えるから殺さないでくれ』

『くれ、じゃないよ。ください。お願いします。って言わなきゃ』

『わ、わかりました。なんでも答えますから殺さないで下さい。お願いします』

吉田は既に須藤と亮介の前では腑抜けになっていた。

『須藤さん、録音の準備オッケーです』

亮介はスマホのボイスレコーダーをオンにした。

『おう。じゃあ吉田、これから俺が聞くことに正直に答えろよ』

『わかりました』

『黒田っていう刑事はお前知ってるよな?』

『え、えーとよくわかりません』

『もう惚けてやがる。俺は同じこと二度しか聞かねぇからな?三度目はどうなっても知らねぇぞ?⭕⭕警察の黒田って刑事のこと知ってるよな?』

『し、知ってます』

『黒田に金渡したよな?』

『渡しました』

『何の金なんだ?』

『拳銃を横流ししてもらうためです』

『さっき使った拳銃か?幾らで幾つ買ったんだよ』

『5丁ですサイレンサーと弾付で一丁100万でした』

『残りは何処にあるんだ?』

『…』

『残りは何処にあるんだ?これで二回目だからな』

須藤は吉田に一歩近付いた。

『に、二丁は車の中です』

『あと二丁は?』

『部下のギャング仲間に二丁250万で売りました』

『何処のギャングだよ』

『⭕⭕駅を縄張りにする⭕⭕⭕ギャングと隣駅の⭕⭕ギャングだ。暴力団と抗争起こすらしい』

『全く今の若いもんはヤクザも怖くないのか…。あの辺んのヤクザなら新田興業か?』

『それは分からない。本当だ、そこまでは知らない』

『そうか…』

須藤は顎に手をやり何かを考える素振りを見せた。

『須藤さん、どうしたんですか?』

『うん…。そのギャングの二つのグループが襲おうとしてるのが新田興業だとしたら知らせとこうかと思ってな…』

『その新田興業って須藤さんの知り合いが居るんですか?』

『あぁ…俺がまだ竜神会に居たときに色々世話になってたからな。竜神会に居たときの俺の舎弟も今は新田興業にいるんだ。竜神会と同じで昔ながらの任侠道を今でも貫いている組なんだ。竜神会はただの暴力団になっちまったけどな…』

須藤は少し寂しげな顔をしていた。

『そういう組なら…須藤さんのような人がいる組なら知らせてあげた方がいいですよ。薬とかの売買が無い組なんですよね?奴等銃も手に入れてるんだし…』

『新田興業は薬はご法度の組なんだ。ただよ…舎弟やそこの組長が未だに俺に組に来い、来てくれって言われるからな…新田興業の組長には義理もあるからよ…すげぇ断り辛いんだ…』

『スカウトなんですね。そういう組なら良いじゃないですか』

『とりあえず、念のため舎弟に連絡しておくか…』

『そうですね。被害が出たら大事になりますからね』

『明日にでも電話しとくよ。それでだ…黒田と吉田の繋がりもハッキリしたし新聞屋にも連絡入れておくか』

須藤は昔の恋人である加藤裕子の兄、有名な新聞社の管理職である加藤真二の携帯にショートメールを送った。

「神栄商事の吉田と黒田の繋がりの証拠あり。近々⭕⭕駅を根城にするギャングとヤクザの抗争あり。吉田がギャングに銃を売った。その銃は黒田から吉田に流れた銃  須藤」

『これでよし…。今夜はここで一眠りするか?傷がめちゃめちゃ痛てぇけど…』

須藤は、そう言って亮介を見た。

『そうですね。ちょっと体休めましょう。吉田の野郎どうします?』

『一番後ろのトランク部分に置いとこうぜ。目につくとこに居られると腹が立ってくるからよ』

『そうですね。俺も同じです』

そう言って二人は吉田を後部座席の後ろにあるトランク部分に吉田を乗せて結束バンドを三本重ねて手足を拘束した。

亮介と須藤は運転席と助手席の背凭れを倒して痛みよりも眠気が優先して二人は眠りに落ちたのだった。



翌朝…

東條ビルへ向かうパトカーのサイレンがけたたましく鳴り響いていた。

東條ビルの管理人から8階の惨状が警察へと通報された。

しかし、須藤と亮介に倒された怪我人は誰一人残っていなかった。

現場には血痕や弾痕、木刀やナイフが散乱していた。

所々に折れたであろう歯が落ちていた。

警察の一課と四課合同で遺留品捜査や指紋採取、目撃情報の聴き込みが始まった。

神栄商事という事務所が入っていたことで、暴力団を捜査する四課も捜査に加わっていて、その中には黒田がいた。

吉田が居なくなったことで銃の横流しが露になることを恐れた黒田は吉田の携帯に電話をかけた。

呼び出しコールはするのだが吉田が電話に出ることはなかった。

初動捜査と現場検証、現場に残された指紋採取で⭕⭕駅を根城にするギャングともう一つのグループ、元グループの者達の指紋が数多く一致した。

そしてビル横の駐車場に止めてある、フロントガラスの割れた外車の中から拳銃二丁が発見された。


東條ビルでの事件の後、神崎の車と仲間を回収に行った四人が、事務所の惨状を見て自分達が捕まるのを恐れて一度は現場を離れたのだが、現場に残された者達から自分達の悪事の発覚を恐れた五人は、元ギャンググループの一員だった四人はギャングの後輩たちを呼び集め負傷した者達を運び出したことが裏目に出た結果だった。

捜査の手は午前中にギャング達へと広がった。

そのギャングの中の血気盛んな数人は捜査の手を逃れ、違法ドラッグや大麻、覚醒剤等の売買を悉く邪魔されていた新田興業への報復として、神栄商事の吉田から買い取った銃を持ち、元々報復をするつもりでいたが、せめて警察に捕まる前にと、グループに捜査の手が伸びたその日の正午前に、新田興業幹部宅へ二台の車から銃弾を数発撃ち込んだのだった。


その日の午後…

8階の現場に残っていた弾痕から、車の中で見つかった銃も同じものと判明した。

そして新田興業幹部宅へ打ち込まれた銃弾の弾痕も、同一の銃と特定された。

『武藤警部、車の中で見つかった銃は、二丁とも黒田警部補の捜査で、ついこの前押収されたロシア製のものと一致しました』

『そうですか。ご苦労様です』

鑑識からの報告で、捜査四課の武藤警部は黒田警部補に少なからず疑惑を抱いた。

ロシア船籍が日本に持ち込んだ拳銃が摘発されたとき、ロシア人が言った銃の数と黒田警部補の押収数が異なっていた。

黒田警部補の押収数とロシア人の自供では五丁の誤差があった。

黒田の拳銃押収数の方が五丁少なく記録されていたのだった。

しかしロシア人の二転三転と変わる供述の曖昧さから、実際にある拳銃の数が押収された数となった。

車の中に二丁、ギャングの二台の車から発泡されたことで二丁、神栄商事の事件現場での発泡が一丁なら武藤警部が抱く黒田警部補への疑惑は濃厚になる。

しかし、警察内部の不祥事だとすれば上からの圧力で揉み消される。

この「臭いものには蓋をする」という行為がどうにも解せない武藤。

しかし、その揉み消しに強く抗議できない自分もまた、臭いものに蓋をしている一人だというジレンマに陥る。

そんな武藤の耳に思いがけない朗報が舞い込んだ。

ある新聞社が今回の神栄商事襲撃事件に警察が関与していることを仄めかしていることが分かった。

武藤にとっては願ってもないチャンスだった。

当然のように警察は全否定した。

この一件は須藤によるマスコミへの情報であった。

神栄商事襲撃事件の翌朝。

須藤が新聞社の加藤真二に送ったメールに加藤真二から須藤に電話があった。

『須藤さん、メールの内容は事実と受け取れる裏付けはあるんですかね』

加藤は、須藤がいい加減な情報を流すとは思えなかったが、その裏付けが欲しかった。

『もちろんです。吉田本人の証言もあります。信じてもらって大丈夫です。暴力団に加担する警察をマスコミの力で炙り出して下さい』

『吉田本人?』

『えぇ。詳しく言えないけど、吉田本人の携帯に黒田からさっき二回の着信があったので…』

『成る程…。もし可能であれば吉田を泳がせてみたいですね。黒田から吉田に電話があったのなら二人の接触もあるかもしれませんからね』

加藤真二は、須藤が何故神栄商事の吉田の証言を取れたのか聞きたかったが、敢えて聞くことはしなかった。

『うーん…、ちょっと検討してみます』

須藤は言葉を濁した。

『分かりました。こっちでも警察に鎌かけてみますね』

『そうしてください。吉田と黒田の接触も検討してみます』

『お願いします』

加藤の返事の後須藤は電話を切った。

その後、加藤や須藤、亮介の耳にも神栄商事襲撃事件のニュースが飛び込んできた。

ニュースでは、現場検証から神栄商事とギャングとの抗争と報道されていた。

須藤と亮介には、どうしてそういう報道になったのかよく解らなかったが、自分達から警察の目が逸れたことには正直ホッとしていた。

そして新聞社の加藤は、須藤も関係しているのでは?と思わざるを得なかった。

しかし、須藤の情報にも真実味が増すのだった。

加藤は須藤のメールを確認してから、社に常駐している報道記者に何時でも動ける準備を指示した。

警察の動きにも怠らないように伝えていた。

そのためか報道陣として加藤の新聞社が神栄商事襲撃の現場に駆け付けることが出来た。

それから間もなく新田興業幹部宅への銃撃事件が起きた。

そこで加藤は警察への取材班に、先日のロシア船籍から押収された拳銃との関係の有無を問うように指示をした。

武藤警部は加藤の新聞社の取材班に内密で接触するのだった。


つづく。。。




すみません…
とてもお話が長くなってしまいました😃💦

今回で終わらせたかったのですが…

無理でした…(´▽`;)ゞ

次回こそ、衝撃のラストとさせます。

そしてエピローグまで…。


今回の選曲♪
【身も心も】D・T・B・W・B


いつも応援ありがとうございます♪
お帰りの際に気が向いたらぽっちり一押し
宜しくお願いします♪:*(〃∇〃人)*:
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テーマ : ハードボイルド
ジャンル : 小説・文学

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Re:godmina様へ♪

minaさま、いつもブログ訪問ありがとうございます♪
またこちらにもコメントをいただきありがとうございます♪

>めちゃ楽しみにしている小説が今回はラストではなく
次回に続くのは、読者としてはとても楽しみですよ。

ありがとうございます(^^;
そう言って頂けるとホッとします。

最後のストーリーの下書き、プロットをまとめてたら朝になっちゃいました(笑)
明日、月曜日にはブログアップできそうです。
文章は全てスマホとタブレットなので、充電しながらの書込み(^^;
パソコンならもう少し楽に書けると思うのですが…。

須藤さん、強面だけど義理人情に弱い気の良いおっちゃん♪

亮介の方が割とクールな感じで書いてます♪

>須藤さんみたいな昔気質の漢気ある人間は
人情厚く、不器用だから、結局損をしてしまうんですけど私のような仕事には味方に付けると実にありがたい存在ですよ。

マイボディガードですね♪
喧嘩は強いしお店のママが好き♥

うん♪スナックには理想的(*^-^)

あと少し、頑張ります♪

コメントありがとうございました♪

おっと

今回は締めではなかったのね(笑)

美香さん、こんばんは。
めちゃ楽しみにしている小説が今回はラストではなく
次回に続くのは、読者としてはとても楽しみですよ。
(書く方はめちゃ大変なのはよぉ~く解っていますが)
実際警察の中にもとんでもない奴がいるのは
スナックをやっているとお客様で警察関係や検察関係の
方々がやって来る事が多々あるから
よぉ~く知ってます。
こいつら、ちゃんと仕事してんのか?って言う感じの人達が
たぁ~くさん(笑)
だから黒田みたいな刑事は、読んでいてめちゃ腹立ちますね。
須藤さんみたいな昔気質の漢気ある人間は
人情厚く、不器用だから、結局損をしてしまうんですけど
私のような仕事には味方に付けると実にありがたい存在ですよ。
亮介と須藤の兄弟みたいな掛け合いが、読んでいて
小気味良いです。
ラストまで頑張って下さいね。

Re:ももPAPA様へ♪


ももPAPAさま、いつもブログ訪問ありがとうございます♪

>まさに大藪 春彦のハードボイルド小説のような展開になってきましたね。

特に意識していませんでしたが、そのように感じていただけることは光栄であります♪

ハードボイルドお好きだったのですね♪
期待を裏切らないよう、最終回を頑張って書くつもりです♪

どうぞお時間の空いたときにお付き合いのほど、よろしくお願いします♪

コメントありがとうございました♪

Re:まっ黒くろすけ様へ♪


まっ黒くろすけさま、いつもブログ訪問ありがとうございます♪

>あまりの生々しさに映画館で映像を見ていると言うより、現場の片隅で固唾を呑んでいるくろすけがいました。
朝から、ハードボイルドな世界で生きた心地もしませんでした

『くろすけ姐さん、怖がらせてすんません。でも、ああでもしないと俺と亮介が死ぬ事になっちまう。それに、くろすけ姐さんが俺らの世界に入り込んだら怪我しちまう事になりかねない…。また姐さんがこちらの世界に来たら、俺は命を懸けて守らせてもらいます。
吉田は潰しましたが、まだ危険な臭いがする黒田が残ってるんで…こっちに来たら俺と亮介の目の届くところにいてくださいよ…』

という、くろすけ姐さんへの須藤の言葉を預かってきました。
ワタクシ竜神會二代目 ニューハーフの美香です。

二代目はセーラー服、二代目はクリスチャン、というヤクザ映画もあったので、二代目はニューハーフという映画を創ろうかと思いましたが…既にありました😃💦

残念です…(`;ω;´)


ということで、くろすけさんもお話の中に入り込んでいただけたようで、ワタクシ物書きとしてこの上ない幸せであります♪

さいごに…『マジか…なんで?』と思うシーンも出てきますので、エピローグまで、お付き合いのほどよろしくお願いします( `・ω・´)ノ ヨロシクー

コメントありがとうございました♪

Re:がちょー様へ♪


がちょーさま、いつもブログ訪問ありがとうございます♪

闇金ブルドッグはよく知りませんが、ウシジマくんの調味料で味付けはしてますよ~♪

物語の中に、がちょーさんが入って頂けたことは、お話を書いている私にとって嬉しいことであります♪

お時間の空いたときにでも読んでいただけたら嬉しいです♪

コメントありがとうございました♪

No title

美香さん こんにちわ♪


まさに大藪 春彦のハードボイルド小説のような展開になってきましたね。

自分も好きで学生の頃、蘇る金狼や 野獣死すべし などの松田優作主演映画をよく観たものです。

次回 最終回も楽しみにしています。

おはようございます。

あまりの生々しさに映画館で映像を見ていると言うより、現場の片隅で固唾を呑んでいるくろすけがいました。
朝から、ハードボイルドな世界で生きた心地もしませんでした。(((^_^;)
正義が真っ当に通る世の中、終わりかたを期待します。
亮介と須藤の会話には、いつも美香さんの影があり、ニンマリしています。地獄絵図のような修羅場でも笑いのペーソス忘れず入れてサスガですね。(^^)v

最終回楽しみにしてます。

(^^)/

記事も拝見しました☆

美香さまおはようございます♪

今回もVシネマ!
闇金ブルドッグとかウシジマくんを彷彿と(笑)
記事も見入って、主人公になってしまいました!


美香さまワールド楽しませてもらいましたよー


Re:オグリン♪ 様へ♪


オグリン♪さま、いつもブログ訪問ありがとうございます♪

ダウンタウンブギウギバンドの身も心も…
カラオケで歌うオグリン♪さんも渋いですね(*^^*)
しかも十八番♪
聴いてみたいです(*^-^)

静かな歌いはじめから徐々に盛り上がっていくところがいいですねー♪

この歌は、ワタクシ、エレキギターよりアコースティックギターを掻き鳴らすように歌いたくなる曲です♪

歌唱力抜群の高橋真梨子さんも、若いときよりキーが少し下がったように思います。
コンサートももうやらないようなことを言っておられました。
やっぱりキツいのでしょうね…。

カラオケは暫く行かないと声出ないですよね🎤🎶

ワタクシ、以前はカラオケで喉仏を引っ込めて歌う練習してました(笑)

声質(だけ)は可愛い系と言われてましたが…
たぶん今は出来ないでしょう(笑)

私もカラオケは五年くらい行ってないです。
ストレス発散には良いのですけどね♪

コメントありがとうございました♪

あ~、カラオケの十八番だ。

身も心も・・・渋い。

バブルの時期カラオケとゴルフの日々でした。

今、一緒に歌ってみましたがKeyが高い・・・。
あ~、私のKeyが下がったんですね。
ショック♪カラオケも随分行ってないなぁ。

来年は弾き語りを予定していて、こりゃ頑張って声のリハビリせんといかんなぁ。
プロフィール

美香

Author:美香
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このブログは、私のリアルな日常や思うこと、感じたこと、など書いてます。
エッチな記事も含まれてますので苦手な方は飛ばして読んでくださいね♪

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